Yamamoto Market個人日記「海の、向こうへ」2025.1.18-1.22
2025.1.18(土)
今日は本屋の営業日。開店前、大家さんと話しながら準備をしていると、以前お世話になったご夫婦が訪ねてきてくれた。「気になっていて」と言ってくださって、奥さんが本好きのようでゆっくりと見ていってくれた。
ご夫婦と話していると、さらに一人の男性。「やってますか?」と聞かれ、ついついお話に夢中で看板をまだ出せていなかったことに気づく。ロフトの掃除もまだだった。
男性は、本屋の前から見える海の向こうに住んでいるという。先日、大家さん夫婦と夕方、「あそこの灯台は明るくなったような気がする」と話しながら、3人で一定の間隔で明るく光るその場所を眺めていたばかりだった。海の向こうに見ていたあの場所から来てくれたと思うと、なんだか不思議な気持ちだった。距離にして車で1時間弱ほどだろうか。海を挟んで見ていると、もっともっと遠い場所に思う。高知市内からの帰りに寄ってくださったそうなので、そんなに手間ではなかったかもしれないけれど、そんな場所からきてくれたことがありがたかった。
午前中はさらに、昨年11月のブックマーケットへ出店してくださっていた方も来てくれて、ちょうどサンを連れてきたタイミングで、サンのことも可愛がってくださった。
午前中は立て続けにお客さんがきて、「今日は人手が多いな」と感じていたけれど、午後はガラッと変わってとてものんびり。その代わり、大家さんのところにもお客さんが来たりしていて、人の出入りは多い一日だった。冬だけど、そんな日もあるようだ。
2025.1.19(日)
今日も本屋の営業日、そして、本屋がある敷地「しおかぜヤード」に日常屋さんが出店で来てくれる日だった。
朝9時には着くようにと思って家を出ると、もうすでに日常屋さんがテントを張り終わり、商品の陳列準備を進めているところだった。
大家さんはいつもこんな時、「そんなところまで」というような気遣いをしてくれる。お客さんに水を出してくれたり、とても美しい家具をお客さんが座る用にと庭に置いてくれたり。きっと私が気づけていない他のところでも、たくさんしてくれていると思う。この一年、そんな姿を間近で見てきて、私も気遣いができる人になりたいなと、最近はより強く思うようになった。
日常屋さんのおかげで、今日は初めましての方も来てくれたり、いつも会う人も来てくれたりで、普段の営業日には静かなヤードも、今日は終始賑やか。本屋の中にいても、外で人が話す声がしたり、子どものはしゃぐ声がしたり。普段は子どももほとんどいない、静かな地域で、明るい声が耳に入ってくるというのは、とても幸せなことだ。
日常屋さんのスパイスカレーに合わせ、自宅にご飯を取りに帰ろうかとも思ったけれど、カレーに合わせて焼いたというスコーンが気になり、スコーンと合わせていただいた。このスコーンが想像以上に美味しかった。カレーにも合うし、普段の朝食のパンの代わりに食べたいくらい、美味しかった。カレーを食べていたらAさんが子どもと来て、一緒のテーブルで食事をともにした。当たり前だけれど、ご飯は一人より誰かと食べた方が美味しい。嬉しい。
出店が終わり、片付けの頃には雨が本格的に降ってきて、日常屋さんは濡れながらの片付けになってしまった。一日屋外での出店で、「寒いですよね」と声をかけるたびに「大丈夫、大丈夫」「今日はそんなに寒くないからありがたい」と言ってくれた。出店に慣れているとは言え、寒かったので風邪を引いていないといいなと願う。日常屋さんも気遣いの人たちだ。
2025.1.20(月)
午前中は「ニリンソウ交換日記」の新しい取組に向けてPC作業。ライターの藍さんと日記を交換しながら、藍さんの弟・新さんにはイラストを添えてもらって半年。日記を始めた頃とはまた違う、交換日記の良さだったり、感じ方だったりを発見し始めた最近。新しい取組では、また楽しさが膨らんでいるので、着地が楽しみ。
午後からはバイトへ。今日からは3人だったのが2人体制になり、ちょっとドキドキしながら出勤。案の定、そんな時に限って忙しくなったけれど、なんとか乗り越えた。乗り越えることで自信がつく。「どうなるかわからないけど任せてみよう」と任せてくれたはず。任せてくれた側の方がきっと不安というか心配だったに違いないけれど、そうして挑戦させてくれることはありがたいよなぁと感じる。そのおかげで成長できる。今日はちょっとだけ成長できた気がする。
2025.1.21(火)
今日は日高村へ取材に。日高村へ行くのは久しぶりだったので、少し早めに自宅を出発。途中、高速道路の通行止めがあったので、早めに出ていて良かったと思った。須崎で高速をおり、そこから佐川町を通って日高村へ向かう。山の中を運転していると、佐川町の新しい道の駅が突如現れて、「あ、ここにあったのか」と思い出す。まだこの道の駅ができたばかりの頃、たまたま近くまで来ていて寄ったことを思い出した。あの頃は牧野博士の朝ドラの影響やできたばかりということもあり、駐車場は車でいっぱいで、確か臨時駐車場のようなところへ車を停めた気がする。今日、道の駅の横を通ると車はガラガラだった。帰りに時間があれば寄ってみようとひとまず通り過ぎた。
予定よりもだいぶ早くに到着したので、日高村の道の駅で車を停め、トイレ休憩がてら店内を見て回る。「トマト推し」が顕著に出ていたり、お茶が何十種類も並んであったりと、黒潮町の道の駅とは全然違う商品のラインナップに、県内でも違うところに来たという実感が湧いて少し観光気分になる。
時間になったので、取材先へ。取材は1時間ほど。なかなかうまく話を聞き出せなかったように思う。ひとまず無事終了。
帰路、佐川町の道の駅へ立ち寄り、お茶と地乳ドーナッツを買う。2年前、台湾でお茶にハマってからというもの、各地のお茶を試してみたくなるようになり、あれば購入するようになった。佐川の道の駅は、コーナーごとに「佐川町」「仁淀川町」「高知市」など、どこの市町村の産品かがわかるよう掲示がしてある。「せっかくなら来た場所のものを買っていきたい」という人には(私には)とてもわかりやすい陳列だなぁと思った。
黒潮町へ移り住み、役場で7年間働いていたからなのか、「土地のものを買う」ということを積極的にしていきたいと思うようになった。それは、土地のものこそ美味しいということを実感してきたからでもあるし、地域にお金を落としたいと思うようになったからでもある。ちょっとのことで、「地域のためになっている」なんて思うわけではないけれど、「お邪魔しました、ありがとう」と思いながら地域のものを買って帰る。今日もそんな気持ちで、佐川や日高のものを買って帰りたかったので、佐川町産の烏龍茶と親子茶というものを購入して帰ることにした。
帰り道、山の中を少し走り、須崎の街中へと抜けていく。標高が高い箇所に差し掛かり、眼下に街並みを見下ろすことができた。黒潮町にいては見られない景色。「山もいい」と、こういう時にいつも思う。少し細い道もあったけど、前に丸太をたくさん積んだトラックが先行してくれていたおかげで、その後ろをついていきながら山を下りることができた。トラックにちょっと感謝。
帰宅後、お土産のお茶を持ってサンと一緒に大家さんの元へ。いつものようにお話をして、オレンジやピンク、紫、青色に染まる夕日を一緒に「綺麗だね」と眺め「おやすみなさい」と後にした。
2025.1.22(水)
今朝、コーヒーを淹れているとサンが「ワオーン!」と吠える。玄関のくもりガラスに人影。隣のおじいちゃんが可愛らしいミニサイズの白菜を持ってきてくれた。
その後、サンと散歩へ出かける。サンが散歩中に見せる笑顔がたまらなく可愛いと思った。尻尾も上がり、フリフリ左右に揺らしながらぐんぐん歩いていく姿は、今日も愛おしいなと思う。今朝は「今日も朝がきたね」とサンに話しかけたことだった。昨日、台湾南部で地震があったというニュースを見たこともあって、昨夜の就寝前はなんだか心がざわついた。今朝も無事に起きれたこと、サンと朝を迎えられたことが尊いと思う。
お昼は以前のバイト先へランチに。長い間返せていなかったエプロンを持っていくのと、源泉徴収票を受け取りに行く用事があったので、ランチも合わせて。お昼時の人が多くなる前にと、11時過ぎのオープンしたばかりの時間に伺った。エノキとほうれん草とベーコンのパスタランチ。昨年の夏に安芸市の東風ノ家で開かれた藤本智士さんのトークイベントで購入した『取り戻す旅』を実はまだ読めていなかったので、ランチのお供に持って行った。
藤本さんが32歳の頃、デミオに乗って大阪からあちらこちらへと旅に出かけるようになったという序文。今、32歳の私はまさに、デミオに乗っている。旅にこそ最近はあまり行けていないが、旅が好きだし、昨夏にはサンをデミオに乗せて神奈川へ帰省をした。「同じあのデミオで、あちこちに旅に・・・」、そう思うと、すでに最初の数ページで勇気づけられる。旅に出たいと思えてくる。
『Re:S』という初めて藤本さんが自身で手がけた雑誌をきっかけに、あちこちへと旅をするようになったことが、青森県への旅を中心に描かれているが、青森への旅には現地ライターが同行してくれたという。「さあ、どこ行きたいですか?」と迎えに来た現地ライターが藤本さんへ投げかけた、その言葉にグッとくる。どこでも連れていきますよという意気込みと、おもてなしの始まりを感じる最高の言葉、そして、「この人なら大丈夫そうだ」という安心感を受け取ることができる一言だ。私も役場で7年、現在は細々とではあるけれどライターとしても活動しているので、黒潮町を案内するのには割と自信がある。ある程度のことは知ってきたし、地元民だけではわからない移住者から見た黒潮町の魅力というものを知っている。藤本さんの旅の話にも共感をしながら読み始めたけれど、同行するライターの姿にも「いいな」という憧れのような眼差しを持つ。結局、外食に行くと「熱いものは熱いうちに(美味しいものは美味しいうちに)食べたい」という気持ちが強く、本は40ページほどしか読み進められなかったけれど、久々にプライベートでの読書時間に没入できそうな気がしている。
1時間弱でランチを済ませ、帰宅後はサンを連れて浜へと出かける。相変わらず冬の海には人がいない。サンはすぐさま海の方へと駆け出していき、私もあとを追いながら、海岸線と並行に西へと歩き出す。「こっち、こっち」「おいで」「サン、行くよ?よーい・・・ドン!」とかけっこの真似をしたりしながら、今日も平和なサンとの時間を満喫。もしここに津波がやってきたら、もう、サンとはこの綺麗な海で遊べないのかもしれない。ふと昨日の台湾のニュースが頭をよぎり、今のこの瞬間もまた一段と愛おしいものに思う。