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Yamamoto Market個人日記「海の、向こうへ」2025.1.29-2.4

2025.1.29(水)
年末年始で本屋の本の在庫が少なくなっていたのがどうも気がかりだったけれど、今週から少しずつ新しい本がまた届き出し、今日は入荷したばかりの本を午後の営業にいくつか並べ、嬉しくなった。

昨年からイベント続きで、インスタグラムでは本屋らしい投稿をあまりできていなかったので、入荷したばかりの本を数冊、早速投稿してみた。イベントの投稿には「いいね」がつきやすく、本の紹介の投稿には「いいね」がつきにくいことを知っている。でも、今回の投稿には意外と多くの反応をいただいて、「やっぱりこういうことも本屋として、やっていかなければな」と認識できた。良かった。

夜は近くの民宿の夕食へお呼ばれ。大家さんや最近お知り合いになった方々など6名で民宿へお邪魔する。どんなご飯が出てくるのかなと楽しみにしていたら、想像の遥か上をいく、とても手間暇かけて作っていただいたことがすぐにわかるワンプレートディナーだった。6名分の料理を作るだけでも一苦労だと思うけれど、1食あたりの量、おかずの種類がものすごい。カレーもスパイスや具材がたくさん入っていて、軽い気持ちでご飯を食べにきてしまったことに恐縮。でも、そうして準備してくれた時間や気持ちに触れさせてもらい、やっぱり嬉しくなる。

持参したビールを飲みながら、色々な話。生まれも育ちも、仕事もみんなバラバラで、話はあちこちへ。この夜に、このメンバーで、なぜかここへ集まってご飯を食べているということが不思議でもあり、楽しかったけれど、黒潮町にいると割とそんなことがあるかもしれない。相手のこともよく知らないけれど、知り合ったばかりだけれど、なぜか集まって、いろんな話をしていること。そんなことがこの町に住んでいると、なぜか頻繁に起きている。

お腹も心もパンパンになり、片付けもせずに帰らせてもらった。大家さんと夜道を歩きながら帰るのも、普段にはないこと。「夜道を歩く」ということは黒潮町に来てからほとんどなくなった。車移動が圧倒的に多いこと、夜出かけるといえば居酒屋に行くくらいで、その時も大抵車で移動するからだ。日常であまりない出来事は、やっぱり何歳になってもワクワクする。

新しく仕入れた本を撮影
民宿でいただいた豪華ディナー

2025.1.30(木)
ふるさと総合センターの傍に咲いている山茶花が満開だった。周りには葉っぱが落ちた木や茶色い芝の寂しい冬の景色。その中に、山茶花だけが鮮やかに彩られていた。近くへ寄ると、よりその色の明るいことに気づく。

サンと浜で遊んだ後、minicaでフォーを食べ、本屋へ出勤。「今日はお客さん来るかな」と、相変わらず平日の営業日の始まりには心配の気持ちとともにスタートする。と思っていたら、そんな日に限ってお客さんが続いて来てくれたりする。

今日はオープンしてすぐ、何度か来てくれたことのあるおんちゃんがご来店。「知り合いに喫茶もやり始めたと聞いて」と入ってきた。「え・・・喫茶・・・?」となぜそのような話が浮上しているのか気になった。聞いてみるが、おんちゃんもよくわかっていないようだった。

喫茶は始めていない。相変わらず本の販売のみで営業中なので、「近くにできたもう一つのログハウスのお店と勘違いしてますかねぇ」と言ってみるが、私の本屋のことだという。「コーヒーが飲める」と期待して来てもらったみたいだったが、結局他にもいろんなお話をして笑顔で帰っていただいた。

バイト先の店長が友人ご夫婦をアテンドして一緒に来店してくださった。貴重な休日に、バイトで雇っている子のお店へ大切な友人を連れ、大切な友人との貴重な時間に、来てくださるその心が嬉しかった。(「休みの日くらい仕事のまわりのことからは離れたい」、そう思ってもおかしくないと思うのです。)

その後もバイト先の関係の方が来てくださり、お話をちゃんとするのはほとんど初めましてだったけれど、なんだかとても面白そうな方で、少しの時間だったけれど心がワクワクする時間だった。

平日でも、こうしてお客さんが続くことがある。お店をしていても、バイトをしていても思うことだが、お客さんを相手にする商売は本当に読めない。

周りは茶色い景色
その中に山茶花だけ鮮やかに咲く
可愛い山茶花と一緒にサンを撮る

2025.1.31(金)
朝、いつものようにサンと散歩へ出かける。前からバイクに乗ったおんちゃんが笑顔でこちらへ向かってくる。

田舎の人たちは、軽トラは軽トラでも「誰の軽トラか」をすぐに識別できるけれど、私にはまだその技術が備わっていない。バイクに乗ったおんちゃんも顔が認識できるほどに近づいてきてようやく誰かがわかった。

「また大きくなったことないか?」と、サンを見て笑いながら声をかけてくれ去っていく。

それからさらに自宅へ近づいていたところで、いつも自転車で近所にある畑の世話をしに行くおじいちゃんとすれ違う。おじいちゃんが自転車のスピードを落とし、サンの頭へと手を差し出す。サンがおじいちゃんに近づいて、「行ってきたかよ」とおじいちゃんが言う。おじいちゃんは耳が遠いので、聞こえないかもしれないなと思いながらも私も笑顔で「うん、行ってきたね〜」と言い、おじいちゃんはまた自転車のペダルへと右足を戻す。

また元通り歩き出したサンに「みんなに可愛がってもらって、いいねぇ」と話しかけると、サンは口を開いた状態で「ハァハァ」言いながらこちらを向いて笑っていた。「いいでしょう」の笑顔というよりも、「お前もな」という笑顔のような気がした。

私も、多くの人たちに随分可愛がってもらっていることをふと思い出した。サンも、私も、たくさんの人たちからよくしてもらい、お返ししきれないくらいの優しさをいつももらっている。見守ってもらっている。「サンと、私、幸せ者だね」と言い直してみて、2人笑顔で家へと帰る。

午後はバイトの日。2人体制になってから4回目のバイト。60代ほどの女性のお客さんに「そのセーター、綺麗な色ねぇ」と言ってもらう。えんじ色のような細いリブのセーターを着ていた。「ありがとうございます」と言い、お客さんを見送った後、相手のいいところを見つけてそれを素直に伝えられるって、いいよなと思った。小さなことだけれど、私も、一日一回でも誰かのいいところを見つけて伝えたいなと思った。そして、そう思った直後、「なんだか暮らしの手帖に書いてそうなことだな」と思った。

「一日一つ、誰かの素敵なところを見つけてみましょう。それを口に出して伝えてみると、あなたも相手も、小さな幸せを感じれるものです」


今日は「これ」といった出来事があったわけではないけれど、小さなことの積み重ねで、なんだか一日幸せな空気が充満していた。

2025.2.1(土)
嵐のような日だった。朝9時頃にはまだ曇り空の中、サンと散歩にも行けたし、本屋オープンの10時前には大家さんと「あ、ポツポツ来たね」というほどの雨降りだったけれど、それから段々と雨足が強くなって、夕方、営業を終える頃には強い風と雨であちらこちらから「ガタガタッ、ガタガタッ」という風が吹き付ける音が聞こえていた。

お客さんが来店したら、「こんな日にわざわざ・・・ありがとうございます」と言いたかったけれど、今日はこんな天気もあってか、お客さんは0だった。用意していた言葉を自分へと向き直させ、「こんな日にわざわざ来なくてもいいよね」と思い直す。雨が降っている時、本屋の屋内はとてもしっとりとして、少し暗くなった店内ではオレンジ色の灯りがログハウスの木々たちを美しく演出する。私は天気の悪い時、このログハウスの中にいる時間がとても好きだったりする。しっとりと少し重たい空気が小さなログハウスの屋内を包み込み、「自分だけの時間・自分だけの空間」という空気に変わる。
でも、今日のような雨では、お客さんは車を停めてからびしょびしょになりながらお店に入ってこなければならなくなるし、せっかく良い本と出会い持ち帰ろうとしても、また雨に打たれ、本もヨレヨレになってしまうかもしれない。

「こんな日にはお客さん、来なくてよかった」、そう思う。またもう少し足元の悪くない時に、お待ちしています。雨があがったら、きっと。

2025.2.2(日)
今月の「出張川喫茶」は第一日曜日。「第○日曜日」などと開催日は決まっておらず、毎月出店者さんたちのそれぞれの予定を合わせながら決める。今月は月初めの日曜日に大好きな川喫茶ということで、なんだか気持ち良いスタートが切れそうだと思った。

けれど、そんな日に限って寝坊する。8時過ぎには家を出て、昨日準備していた荷物を本屋へ取りに行き、8時半には本屋を出発するぞと思っていたのだけれど、起きたのは7時50分。寝坊はほとんどしたことがない。起きてスマホの時計を見た瞬間、「終わった」と口にする。布団から半身を起こし、一旦固まる。一瞬の間に色々と考え、「いや、大丈夫。全然間に合う」と思い直し、急いで身支度。結果、他の出店者さんたちとそこまで変わらない時間に会場へ到着することができ、落ち着いて準備ができた。いつも余裕を持って時間配分を決める性格なので、他の人からすれば「全然寝坊じゃない」のかもしれない。余裕を持った設定をする性格でよかった。

川喫茶は今月もやはり良い時間だった。

立派な木のテーブルに本を並べ終わるといつも「いいなぁ」とその光景に見惚れてしまう。あの場所で飲むウォッチさんのコーヒーは美味しい。寒い冬の今の時期は眼下に広がる四万十川と森の景色が淡色になり、寂しい風景になるけれど、それもいい。それが、いい。四季の移ろいを感じられる場所へ年間を通じて出店させてもらえるのは、この上ない贅沢だなと、今月も変わらず感じた。

お客さんたちは目当てのお店があったり、そうではないけれどふらっと立ち寄りいろんな人とおしゃべりをして行ったり、誰とも話さず、1人静かにコーヒーを飲み本を読んだり。みなそれぞれの過ごし方がある。

この場所を「いい」と思っているということはみな共通しているけれど、この場所の好きなところはきっと人それぞれ違う。それぞれの中で、「いい」と思うところがこんなにたくさんの人の中で広がっていることに、川喫茶のこの場所の凄さを感じる。

木の机に並べた本を手に取ってもらう瞬間はとても嬉しい
川喫茶で飲むウォッチさんのコーヒーは美味しい
今日は秋田県産りんごのカスタードマフィンも

2025.2.3(月)
今日はいつぶりかの終日オフの日。
したいこと、行きたい場所は山ほどあったはずだけれど、いざ「さぁ、何をしようか」となると、パッと思い浮かばず。結局、大したことはせずに一日が終わった。

昼にはサンを連れて公園へ行ったけれど、風が強すぎて「早く帰りたい」の私。「ヤッホ〜〜〜〜!たっのしい〜〜〜!!!」のサン。冬になってから時々思うこと。「犬は寒いと思う日があるのだろうか」。

東北や北海道に住む犬たちよ、あなた方は一体どんな様子でしょうか。

公園から帰り疲れたサンと仲良くお昼寝
甘えん坊が可愛い

2025.2.4(火)
7時起床。6時半頃から目は覚めていて、今日は雪が降ると昨日から言われていたので、外の景色が気になりながら布団の中でしばらくうずくまっていた。

今日は午前中、近所に住むAちゃんのヨガ。川喫茶でいつも一緒のRさんと一緒にレッスンを受ける予定にしていた。起きて布団から出て、縁側のカーテンを開けると想定以上の雪が積もっていた。

「Rさん、大丈夫かな?」

そう思ってメッセージを送っていたところで、同じようにAちゃんからもRさんを心配したLINEが入る。「雪は大丈夫ですか?無理せずで大丈夫ですよ」とRさんに連絡をするも、Rさんからは旦那さんが送ってくれるということ、そして「雪の日のヨガ、楽しみ!」という返事が来た。予想外。小学生のように雪を喜ぶRさんの心意気が好きだ。

Aちゃんの家へ歩いて向かう。まだ雪が残っている。徒歩で2分ほど西へ。Aちゃん家に到着して、家へ上がらせてもらったけれど、ヨガマットを忘れていてもう一度家へ帰る。5分で行って戻ってこれるこの距離、嬉しいなと思う。

Rさんも無事到着し、Aちゃんのヨガが始まる。今までヨガは何度か、何人かの先生のレッスンを受けたことがある。「続ける」ということが苦手で、やはりどのレッスンも続かなかったのだけれど、今年はこの日記と同じように、ヨガもある程度定期的に続けたいなと思っている。

Aちゃんのヨガは彼女の声かけが好き。「nice challenge」とか、「足の裏に根っこが生えているような〜」とか、「すべての感情、考えを捨てて〜」とか、目を閉じながら、ところどころで降りかかってくる彼女からの言葉のかけらがとても優しい。彼女の言葉を真正面から受け取り、できるだけ頭をクリアにして、その言葉通りにイメージする。頭の中がからっぽになり、今のこの時間に集中していく。おかげで、ヨガが終わった後は気持ちも身体もスッキリ。身体からひとつ余計なものが剥がれ落ちた気がして、軽くなったように感じる。

お父さんと待ってくれていたAちゃんの娘・Cちゃんは、レッスンが終わったと同時に向こうの部屋で泣き出していて、トコトコと歩いてお母さんの元へやってきた。母は偉大だ。そして、子どもも偉大。会うたびに大きくなっていく(身体の成長ではなく)Cちゃんを見て、パワーを感じる。

帰りはRさんが汽車で帰るというので、途中まで一緒に歩いて帰る。わざわざ雪の日に有井川という、他にお店も立ち寄るようなところもない場所へ来てくれて、ありがたい。Rさんは周りをパッと明るくする力がある。今日はAちゃんやAちゃんのヨガ、Rさん、そしてCちゃん、みんなにパワーをもらった。

午後は約束があったので四万十市の喫茶ウォッチへ行く。出かける前、家の周りはすっかり雪が溶けてしまっていたけれど、四万十市の街中へ入ると視界に入る景色は吹雪いていて、とても寒そうだった。

車の中ではなぜか、Apple musicからMr.Childrenの曲が流れてくる。

小中高校生の頃、兄の影響でミスチルの曲は何度と聞いていた。久しぶりに聞いた彼らの曲を聞き、なんだか懐かしくなる。ミスチルの曲は、最近の曲には無いような「甘酸っぱさ」を感じる気がする。『渇いたkiss』を聞いた後、懐かしくなってウォッチへ到着するまで、ミスチルの曲を流し続けた。

ウォッチでは、ガトーショコラとホットコーヒーのセットをいただきながら、お約束のお相手を待つ。セットが出てきた瞬間、「はぁ〜」とため息をつきたくなるような美しい組み合わせに心が躍る。このクラシックな装いが大好きだ。おまけに、普段は奥の席に座るのだけれど、音響の前の席に座ったおかげで、普段以上にウォッチのサウンドがずしりと身体中に響き渡り、その魅力にじんわりと浸ってしまった。ウォッチさんとは毎月一度、出張川喫茶でご一緒していて、最近は他のイベントなんかでもご一緒させてもらうので、コーヒーやおやつを口にする頻度で言えば増えていたのだけれど、やっぱり私はこのお店にいる時間が、お店でいただくコーヒーが、一番好きだなと実感する。

夕方からは四万十町で先日の高校生向けのワークショップの2回目を予定していたので、それに備えて帰宅するも、この雪の影響で「今日は中止になるかもしれない」と連絡が来る。16時に判断をするということで、しばらく待ってみるも、16時になってもし開催するという連絡をいただけば、現場には開始時間までに辿り着かなさそう。どちらになってもいいかと思い、とりあえず家を出発し、四万十町方面へ車を走らす。15分ほど運転し、拳ノ川ICの乗り口を前にちょうど連絡があり、やはり今日は中止になった。

向かっている途中から吹雪始めて帰りのことが心配になっていたので、安堵。こんな日もある。大人しく車をUターンさせ、自宅へ戻る。

朝、自宅前は雪景色
「車たちは大丈夫なのかな」
と雪に慣れないひと(私)は心配
クラシックなこのスタイルでサーブされるコーヒとショコラが良き

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