鈴木亮平 初主演の恋愛モノで魅せた奇跡
鈴木亮平さん主演の医療ドラマ「TOKYO MER 走る緊急救命室」が始まる。鈴木さんは今回もバチっと決めてくるのだろうな。役作りに不安要素がひとつもない。(つい先々週まで引きこもり漫画家さんだったとは思えない完璧な変身ぶりよ)
今「この人なら大丈夫」と思わせてくれる数少ない役者だと思う。
4月に漫画家、7月に医師、8月に暴力団組長、10月には新選組の近藤勇と今年は鈴木亮平イヤーと言わんばかりの活躍ぶり。
その中でもドラマ「レンアイ漫画家」は、鈴木さんにとってエポックメイキングな作品だったと思う。恋愛モノでは初めての主演作。
私にとっては、初めてちゃんと鈴木さんの芝居を観て、すっかり魅了されてしまった作品。沼落ちして作品レビューも書いた。
ここに書ききれなかった最大の推しポイントはキャスティング。なんと言っても鈴木亮平さんが最高によかった。
もう今年は他の恋愛モノでの鈴木さんにはお目にかかれそうにないので、書き留めておこうと思う。
お芝居を観るまで
これまで鈴木さんの出演作をほとんど観てなかったけど、ずっと気になる俳優だった。同じ大学出身なので親しみを持っていたというのもある。「役柄にあわせてビジュアルを寄せてくる」「振り切れぶりが圧倒的な演技派」とよくメディアで語られているのはなんとなく知っていた。
個人的には昨年NHK「世界はほしいモノにあふれてる」後任MCを引き受けてくださったことがとても大きかった。あの混乱下での決断は相当覚悟がいったと思う。真摯さと漢気に触れて、俳優として見る以前にそのお人柄に惹かれた。
1月に恋愛ドラマに初主演すると知った時、そのイメージビジュアルを見てそれまでのナイスガイの雰囲気をガラリと変えてきて「この人なりきりぶりでまた視聴者をあっと言わせてくれるんだろうな」と期待に胸が膨らんだ。
“やさぐれ可愛い“の完璧な造形ぶり
ドラマが始まって序盤、吉岡里帆さん演ずるあいこさんの疑似恋愛話が中心で鈴木さんがあまり全面に出てこない間も、離脱せずについていけたのは、(鈴木さんがこの作品オファーを受けたのだから)きっと大丈夫だろう、という信頼からだった。実際ハズれていなかった。
いつの間にかストーリーに引き込まれ、気づけば作品にどハマり状態、刈部さんは最上の愛おしいキャラクターとなった。
演じる鈴木さんは、なんというか、、カッコいいとか上手いね、とかそんな軽いレベルじゃない。
刈部さんの「やさぐれ可愛い」具合の造形が完璧で、尊いのだ。
家ではあいこさんやレンくんに対して王様のよう振る舞う一方、外に出た途端世間の常識的なことがわからな過ぎて、借りてきた猫のようになってしまうギャップ。あの大きい身体で、可愛さを漂わせる。
第1話でのコミュ障で偏屈さたっぷりなところから、回を重ねるごとにピュアで優しい内面が見えてきて、あいこさんへの愛が芽生えてから成就するまでのプロセス。やさぐれ濃度がだんだん薄まって、愛とともに艶っぽさが色濃くなっていくのが佇まいや振る舞いで伝わってくる。
お芝居を観る前は、役に合わせて体型を完璧に作り上げるとかダイナミックな役作りの印象が強かったが、実際はもっと緻密で繊細だし、影のあるキャラクターに色気を纏わせられる方なんだと、驚かされることばかりだった。
1話毎に確実に変化・成長がわかる。順番通りに撮ってるわけじゃないだろうに、、何というか測ったかのように数ミリレベルで変えてるような演じ方。うまく言えないけど、憑依というのとも違う。事前にものすごく考えて計算された上で、本番ではそれを手放し、刈部さんとしてその場で湧き上がるものを丁寧に捉えて表出しているような。
鈴木さんにしかできないキスシーン
ご覧になった方なら第8話の衝撃の超速キス、9話のキス応酬にキュン死されてたに違いない。
8話は飲み物手に持ってなくてよかった、衝撃で絶対グラスの中身ぶちまけてただろうから…そのくらい激震のキスだった。
いや、キスキス言ってますが、普段テレビドラマではキスシーン観ても何とも思わないか、うまく撮ってるなぁと冷静に制作目線で見てる程度。割と冷めてる方だけど、この作品のキスシーンには凌駕されてしまった。演出がすば抜けている。
何度観ても感心してしまうのは第9話の最後、刈部さんがキスのお返しをするところ。ここの刈部さんのキスはですね、一見恋愛下手、いやほぼ恋愛経験ゼロの人のキスじゃない。
だって口づけの仕方が恋愛上級者っぽいんですもん。相手の唇を少し吸い上げる感じ。なにこれ、こんなん観たことないよ!!
「恋愛下手がこんな上手いわけがない」「ここ刈部さんじゃなく鈴木亮平」なんて声もSNSで見かけたけど、、私の考察はこう。
刈部さんは自身で恋愛してないけど、それこそ恋愛漫画を描くためストイックに勉強している。ラブロマンス映画の古典はおそらく全部観ているし、キスシーンの描き方の参考にしているはず。
唇の重ね方、角度、間。
何度も描いてきたからこそ、脳内にインプットされてていざとなったら再現可能。だからあのキスができる。
あの唇の重ね方は、往年のハリウッド俳優のキスそのもの。
・・と、もちろん私の勝手な解釈なんだけれど、鈴木さんは当然そこまで考えてあのキスなんじゃなかろうかと。そう思わずにはいられないし、だとしたら刈部清一郎おそるべし、、いや鈴木亮平おそるべし。とリピート再生してはひたすら感心している。
これもまた綿密に仕組まれたギャップ萌え。キュンが止まらない。
吉岡里帆さんと作り上げた奇跡のラブコメ。完璧な様式美。
今回相手役が吉岡里帆さん。組み合わせに意外性があって新鮮だった。
この作品ファンなら満場一致だと思うけど、おふたりだからこそ、ここまで愛すべき珠玉のラブコメになった。
とにかく観ていて心地良い。
おふたりの掛け合い、コメディ部分も恋愛シーンも、違和感やズレがどこにも見当たらない。
ラブコメは「これじゃない」感が少しでもあると途端に現実に戻されてしまうが、何度観てもそれがない。
むしろ観るたびに、テンポのよさだったり、掛け合いのハマり具合に気持ちよくなってまた観たくなってしまう。
何度も観ていると、お二人の芝居に対する向き合い方、真面目さが滲み出ているようにさえ感じる。実際かなり細かくふたりで相談して作り上げていると知った。
作品全体から感じる丁寧さの一旦はここにある。
ラブコメの様式美を忠実に表現されていた。
以下、鈴木さんのインタビュー記事より一部引用(太字は筆者加工)。
(吉岡さんは)真面目に作品と向き合ってお芝居される方なんだろうなと思っていたら、その通りの方でした。ものすごく器用というわけではないけど、とても真摯に取り組んで、作品をよくしていこうと思ってやっていくタイプだなと。知っていくうちに、僕と似ているなというのが最初の印象でした。悩みをお互いに言ったり、お芝居について話し合いながらカッコつけずにぶつかって一歩一歩作っていけたので、本当に相手役が吉岡さんでよかったなと思います。
お互いにラブコメの経験があまりなくて、「台本にはこう書いてあるけど、こうやるとすごくキザに見えるね」とか、細かい振り付けみたいな部分も結構話し合いました。清一郎とあいこのように、ドギマギしながら親密になる関係性を作って、そのシーンをやっていけた気がします。
年齢こそ離れてはいるけれど(実年齢10歳差)、おふたりとも関西出身&学生演劇出身で、役者として世間に名が知られるまで下積みが長かったこと(鈴木さん8年、吉岡さん5年)、それぞれ俳優養成所で演技を学んでいるといった共通項もある。何よりおふたりとも、真面目というかまっすぐな方なのだろうなと。
視聴者が何度観ても耐えうる完成度の高いラブコメを作り上げてくださったこと、感謝してもしきれないほど。
吉岡さんのインタビュー記事で「もう連ドラは当分いいと思っていたけど、このお話をいただいた時これは絶対やらなねばと思った」というのを読んで、全編終わってみて思うのは、吉岡さんが引き受けてくださって本当によかった!!!!
あいこさんって何気に難役。演じ方の配分一歩間違えると頭ちょっと弱くてうざったい女の子になってしまう危険度が高い。吉岡さん演ずるあいこさんは見事にその地雷を飛び越えて、意志の強さを感じさせる最高にキュートなヒロインだった。吉岡さんの感受性豊かなお芝居とコメディエンヌぶりにも魅了された。
鈴木さんと吉岡さんの体格差(身長差約28cm)も、本当に令和版「美女と野獣」に相応しい。おふたりが全力で作り上げてくださったからこそ出会えた奇跡のカップルだった。
次の恋愛作品にも期待大
オンエア終了後も、「ロスが止まらない」「円盤化を!!」「続編やスペシャル版の制作を!」と視聴者の方からの声が止まらず公式サイトへのメッセージやSNSのコメントも続いている。スペシャル版は実現されたら夢のようだ。
少なくとも円盤化は多くのファンが待望中(お願いします、フジテレビさん!!)。
「新しいことにチャレンジするのが好き」と、鈴木さんは以前インタビューでおっしゃってたけど、オンエア終了後ご自身のラジオでは、「刈部清一郎さんにまた会えたら」と続投に意欲を見せてらしたので、ファンとしては期待したいところ。(レンくんが少年のうちにぜひとも・・!!)
今回、生まれて初めてテレビ局公式サイトに番組メッセージを送った。送らずにはいられなくて。特にキャスティングに最大の賛辞と感謝を伝えたかった。
視聴者誰もがピンとくるようなキャスティングばかりじゃつまらなくて、なるほどそうきたか!と思わせてくれる意欲的なキャスティングこそ、製作陣の本領発揮だと思う。
ご本人曰く「縁遠かった」王道の恋愛モノに鈴木さんをキャスティングくださった制作関係者の方には何度でも感謝お伝えしたい。そのおかげで、この奇跡のよう作品に出会うことができたのだから。
きっとTOKYO MERのヒーロー喜多見先生もハマるだろう。
でも個人的にはまたいつか影のある役で恋愛作品やって欲しい。
大石静先生脚本の作品とか、かなりハマる気がするのだけど、、どうでしょう?
おまけ:鈴木さんの写真集を買ってみた
人生で初めて芸能人の写真集を買った。顔や肉体を愛でるということ自体に興味がないのでかなり躊躇したけど、収録されてる鈴木さんのロングインタビューと4人の監督(福田雄一氏、黒沢清氏、三木孝浩氏、園子温氏)からのコメントがどうしても読みたくて。
買って正解だった。ものすごく読み応えある内容。
東京外語大で学んでいた言語学のことを語るくだりを読んでて、久々に外語大生っぽさに触れて嬉しくなってしまった。外語大ってこういう感じだよねと。一言で言えば「マニアック」。
これは完全な個人的印象だけれど、外語大にわざわざ入る(学力的には早稲田や上智だってある)ってどこか“敢えて“選んでる人が多いような気がしていて。あの学校の持つ多様性だったりマニアックさが好ましいと。
インタビュー読んで、鈴木さんの輪郭がだいぶ捉えられた気がした。外語大にいそうな物腰柔らかい感じの男の子が想像できた。「分析好き」とおっしゃってて、だからあの役作りなのか、と合点もいった。
監督から証言もこれまた読み応えがある。
舞台で演出した行正勲監督のコメントを一部引用する。
普通、若い俳優を舞台に上げるとき、僕はその俳優にくっついている演技の垢のようなものを削ぎ落とし、そこから再構築させる作業を行うのですが、鈴木亮平には演技の垢のようなものがなかった。まっさらな状態でやってきたことは素晴らしかったし、彼の場合、原作の戯曲を持ってきて、英語の原文から読んでいる。日本語訳でちょっとひっかかることがあると、彼に聞けばいいわけです。
「HK/変態仮面」のような役柄でブレイクしたことは僕にとっては予想外でしたが、でもあの映画を見てもよくわかるのは、鈴木亮平は役柄に対して非常に誠実な男であるということですね。たとえば、同じ世代でブレイクした俳優に綾野剛がいますけど、彼なんかは作品選びに自分の嗜好が濃厚に反映されているような印象を受けますが、鈴木亮平の場合は、そういった嗜好性は感じない。ひとつ、ひとつ、丁寧に、来た仕事を吟味し、受けたからには誠実にやる。そういった潔さを感じる。まあ、懐が深いんでしょうね。
と絶賛されている。春馬くんの時もそうだったけど、行定監督の俳優さんへ眼差しは温かくて良いなぁ。
行定監督の恋愛映画で鈴木さんを観られる日が来ることに期待したい。
写真集を撮影されたカメラマン平岩亨氏の貴重な撮影エピソードもnoteで読めるのでぜひ。
平岩さんのおっしゃる通り、鈴木さんの役者人生はこれからが本番なのだと思う。40代、50代と歳を重ねて一層私たちを作品通じて魅了してくれるに違いない。鈴木さんは歳をとることがプラスに働くタイプなんだと思う。20代の時以上に今の方が色気と知性が漂って断然かっこいい。円熟味を増すお芝居にこれからも注目していきたい。
画像引用)フジテレビ公式「レンアイ漫画家」