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全国学力学習状況調査における令和5年度と令和6年度のICTに関する質問項目比較と授業像の変化

全国学力学習状況調査の分析を担当する人間として、質問紙における質問項目の変化は、今後の教育動向を知る上で重要な情報源です。

質問紙の質問項目の進化は、教育現場における授業実践の現状を映し出し、新たな教育手法がどのように実践され、子どもたちの学習にどのような変化をもたらしているのかを具体的に把握するための重要な指標となっています。

今回の令和5年度から令和6年度への質問紙の質問項目の変化は、ICTが教育の主役となりつつあることを示唆しています。

1.令和5年度の児童質問紙におけるICT関連質問項目

令和5年度の児童質問紙から、ICTに関連する質問項目は全部で4つあります。 以下にそれらの質問項目を列挙します。

  • 質問29 5年生までに受けた授業で、PC・タブレットなどのICT機器を、どの程度使用しましたか。

  • 質問30 学習の中でPC・タブレットなどのICT機器を使うのは勉強の役に立つと思いますか。

  • 質問31 学校の授業時間以外に、普段(月曜日から金曜日)、1日当たりどれくらいの時間、PC・タブレットなどのICT機器を、勉強のために使っていますか(遊びなどの目的に使う時間は除きます)。

  • 質問59 家庭学習の課題(宿題)として、どの程度PC・タブレットなどのICT機器を使用して、英語の音声を聞いたり英語を話す練習をしたりしていますか。

これらの質問は、児童のICT機器の使用頻度や、学習におけるICT機器の有用性についての認識を調査するものです。

2.令和6年度の児童質問紙におけるICT関連質問項目

令和6年度の児童質問紙から、ICTに関連する質問項目は以下の通りです。

  • 質問2 学校の授業時間以外に、普段(月曜日から金曜日)、1日当たりどれくらいの時間、PC・タブレットなどのICT機器を、勉強のために使っていますか(遊びなどの目的に使う時間は除きます)。

  • 質問27 5年生までに受けた授業で、PC・タブレットなどのICT機器を、どの程度使用しましたか。

  • 質問28 あなたは、学習の中でPC・タブレットなどのICT機器を活用することをどのように感じていますか。次のことがあなたにどれくらい当てはまるか、5年生までの学習のようすを振り返り、最も近い番号を1つ選んでください。

    • 質問28-1 ICT機器を活用することで、自分のペースで理解しながら学習を進めることができる

    • 質問28-2 ICT機器を活用することで、分からないことがあった時に、すぐ調べることができる

    • 質問28-3 ICT機器を活用することで、楽しみながら学習を進めることができる

    • 質問28-4 画像や動画、音声等を活用することで、学習内容がよく分かる

    • 質問28-5 ICT機器を活用することで、自分の考えや意見を分かりやすく伝えることができる

    • 質問28-6 ICT機器を活用することで、友達と考えを共有したり比べたりしやすくなる

    • 質問28-7 ICT機器を活用することで、友達と協力しながら学習を進めることができる

これらの質問は、児童のICT機器の使用頻度や、学習におけるICT機器の有用性についての認識、そして、ICT機器を活用した学習方法に関する認識を調査するものです。


3. 令和6年度の変化の特徴

  • 具体的な活用場面への注目: ICT機器が単に「使われている」だけでなく、どのような場面で、どのように活用されているのかを具体的に尋ねるようになっています。

  • 学習効果への注目: ICT機器の利用が、学習効果にどのような影響を与えているのか、より詳細に調査するようになっています。

  • 学習スタイルとの関連性: ICT機器の利用が、児童生徒の学習スタイルにどのような影響を与えているのか、新たな視点から調査するようになっています。

4.変化から推察される教育動向と具体的な授業の在り方

  1. ICT活用の認識の深化

    • 令和6年度の調査では、ICT機器の活用に関する児童の認識がより詳細に掘り下げられています。例えば、「自分のペースで学習を進める」「分からないことをすぐ調べる」といった具体的な使い方や効果が問われています。この変化は、ICT機器が単なるツールから、学習の質を向上させるための重要な要素として位置づけられていることを示しています。

  2. 学習方法の多様化

    • 令和6年度では、ICT機器を使った学習がどのように学習体験を変えているかに注目しています。具体的には、学習の楽しさや理解度向上、協力学習の促進などが挙げられています。これにより、教育現場ではICTを使った協働学習や個別対応の授業が増えることが予想されます。

  3. デジタルリテラシーの重要性の増加

    • 令和6年度の質問からは、ICT機器を活用することで得られる具体的な利点に焦点が当てられており、デジタルリテラシーの向上が重視されています。教育現場では、ただICTを使うだけでなく、その活用方法や効果を理解し、適切に使いこなすための指導が求められます。

具体的な授業の在り方

  • 個別対応型の授業: ICTを使って、児童一人ひとりの理解度に応じた個別対応が可能になります。例えば、学習アプリを使って自分のペースで学習を進めることができるため、教師は児童の進捗状況をリアルタイムで把握し、必要なサポートを提供できます。

  • 協働学習の促進: ICT機器を活用して、グループでの共同作業や情報共有が容易になります。例えば、クラウドベースのツールを使って、グループでのプロジェクトやディスカッションを行うことで、コミュニケーション能力や協力する力を育むことができます。

  • フィードバックの強化: ICTを活用して、児童に対する即時のフィードバックが可能になります。オンラインテストやクイズを通じて、児童の理解度を迅速に確認し、必要な改善点を指摘することができます。

これらの変化を踏まえた授業実践が、ICTを効果的に活用し、より良い学習環境を提供するために重要です。

まとめ

令和5年度から令和6年度にかけて、教育におけるICT活用の目的が、単なる情報検索や資料提示から、子どもたち一人ひとりの学びを深め、多様な能力を育成することへとシフトしていることが分かります。
今後は、ICTを学習の質を高めるための強力なツールとして捉え、以下のような授業作りが求められていると考えられます。

  • 子どもたちが主体的に学習に参加できる環境づくり: ICTを活用して、子どもたちが主体的に学習内容を探究し、自分の考えを表現できるような活動を取り入れる。

  • 多様な学習スタイルに対応できる柔軟な授業設計: ICTを活用して、子どもたち一人ひとりの学習スタイルやペースに合わせて、学習内容や方法を調整できるような授業設計を行う。

  • 教員と子ども、子ども同士の協働学習の促進: ICTを活用して、教員と子ども、子ども同士が互いに教え合い、学び合い、共に成長できるような学習環境を創出する。

これらの変化は、単にICT機器の導入を進めるだけでなく、教員のICT活用能力の向上や、学校全体のICT環境整備など、様々な取り組みが求められることを示しています。さらに、以下の点も考慮する必要があります。

  • デジタル・デバイドの解消: 全ての子どもたちがICT機器を平等に利用できる環境を整える。

  • 情報モラル教育の充実: ICT機器の利用に関するルールやマナーを丁寧に教育する。

  • 教員のICTに関する研修の充実: 教員がICTを効果的に活用できるよう、継続的な研修の機会を設ける。

このような取り組みを通じて、ICTは子どもたちの学習意欲を高め、学習効果を最大限に引き出すための強力なツールとなることが期待されます。

大きな変化は、小さな一歩から。明日の授業で、一つだけ新しい試みをしてみませんか!?子どもたちの反応を楽しみながら、少しずつ変わっていきましょう!!

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