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【読書感想文】感情の炎に身を焦がす—湯川さんの奮闘記『ファイアスターター湯川さん (Kindle Single)』
本作は、木造アパートの管理人である主人公が、ある女性入居者・湯川さんの特殊能力に振り回される喜劇を描いた短編です。
物語は、主人公が管理人を務める木造アパートにある日、湯川さんが引っ越してくるところから始まります。そんな湯川さんですが、彼女の周囲ではなぜか不可解な火災が頻発するのです。じきに主人公は湯川さんが持つ特異な能力――すなわち、彼女の感情が高ぶると、周囲が発火する恐れがあることを知るわけです。
本作のポイントは、湯川さんの【発火能力】です。この能力は、彼女の感情の波によって制御されるため、湯川さんの心理状態が物語の緊迫感を高める要素となっています。特に、湯川さんが発火能力を抑えるために奮闘するクライマックスでは、彼女が見せる人間味あふれる弱さと強さがしっかり表現されていて、本作の一番の見どころと言えます。
本書を読んで、私は、湯川さんの能力がもたらす危険性と、それを受け入れる主人公の葛藤、そして二人の間に生まれる微妙な信頼感の描写が良くできていると思いました。
特殊能力を持ったヒロインの作品は他にもありますが、本作では、能力を単なるファンタジーとしてではなく、それがヒロインの人生にどのような影響を与えてきたのか?までしっかり描かれている点が評価ポイントです。