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【読書感想文】短いけれど深い、心に響く大男の物語『わがままな大男』
子どもたちの笑い声が響く美しい庭園がありました。そこへ帰ってきた大男は、子どもたちを追い出してしまいます。すると、庭には永遠の冬が訪れ、春の訪れを拒むようになってしまいました。
そんな中、ある春の朝、大男は庭に春が戻ってきたことに気づきます。木々の上で小鳥たちがさえずり、花々が咲き誇っています。そこで目にしたのは、木に登ろうとする小さな女の子でした。大男はその子を助け、優しく抱き上げます。その瞬間、大男の心に春が訪れたのです。
大男は自分のわがままさに気づき、塀を取り壊して子どもたちと一緒に遊ぶようになります。しかし、最初に出会った女の子だけは姿を現しません。年老いた大男が、その子と再会を果たす場面は特に印象的です。
この物語を読んで、私は、人間の心の奥深さと、愛の力の偉大さを感じました。わがままで頑なだった大男の心が、一人の子どもとの出会いによって溶かされていく様子は、心を打つものがあります。
本作は、短い童話でありながら、愛、赦し、そして人間性の回復といった重厚なテーマを内包している本作は、子どもから大人まで幅広い層に訴えかける力を持っています。人々の心に寄り添い、優しさと思いやりの大切さを静かに語りかける本書は、現代社会を生きる全ての人に読んでほしい一冊です。