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すなお君の人生が、僕に与えてくれたもの。〜死を受け入れ、人生を敬った先に、僕の生きる道が拓かれた〜

夏の間ずっとサボっていたが、今日久しぶりに床を水拭きした。ベランダの窓を開けてせっせせっせと磨いていると、〝今”しか見えなくなってくる。

朝起きて直ぐに洗って干した布団カバーと敷きパッドが、ベランダの物干し竿に仲良く並んでぶら下がっている。今日はとても天気がよくって、床を拭いていると少し汗ばむくらいだ。洗濯物の隙間から、心地良い風が吹いてきて、僕のひたいを撫ぜた。

もうすっかり秋だった。秋は年々短くなっている気がする。もうすぐ冬がやってきて、また床を水拭きするのが億劫になるだろう。

〝こんな日が来るなんて、思ってもみなかった。”

近頃よくそんな事を呟いている。



カフェの仕事を辞めて直ぐに大学の短期講習に入り、それからとんとん拍子で願った通りの職に就くことができた。

とはいっても最初は薄給だったので、掛け持ちでアルバイトをしてなんとか生活していけるほどの、危ういスタートだったけれど。

けれど、まったく経験したことのない新しいことの連続はとても刺激的だった。その中で嫌なことや不満も沢山出てきたが、基本的には常に楽しかった。

更には新しい事を始めたことで今までずっと我慢してきた自分というのも出てきて、〝自分に向き合う”という学びにも手を出すようになった。

インナーチャイルドセラピーを学んだり、様々な自己啓発にも取り組んだ。

そうしていく中で、先日紹介した「未来ノート」の著者である佐藤由美子先生に出会い、先生が発明した「10秒スイッチ」というメソッドに惚れ込んで、それから先生の講座で学んだりもした。

〝すなお君の分まで生きるのだ。”

生きるのが嫌になる事もたくさんあったけれど、その度に、すなお君の事を思い出すのだった。そうやって、振り返ればあっという間に14年が経っていた。





僕は今、子どもと本を繋ぐ仕事をしていて、それにとてもやりがいを感じている。

僕はゲイで、子どもをもうけることはこの人生の中ではないと思う。けれど、こうやって仕事を通して、子どもの未来に貢献できている事がとても嬉しい。嬉しく思うたび、

「ああ、こんな日が来るなんて、思ってもみなかった」

とぼやき、目頭が熱くなる。
そうぼやくたび、すなお君を思い出す。

すなお君は中学2年生の頃、いじめに遭っていた僕にアヒルの絵を描いてくれて、夢を語ってくれた。みんなからシカトされている僕を、特別に思ってもいなかったと思う。ただただナチュラルに、僕を友だちだと思ってくれた。

すなお君は、僕の人生を取り戻してくれた。だから、すなお君が亡くなって、自分を見つめ直した僕は、すなお君の分まで生きようと決めてここまできた。


けれど。


すなお君、僕は気づいたよ。


すなお君はあの時、
人生をしっかりと全うしてこの世を去ったんだよね。

すなお君はきっと、いつもベストを尽くして生きていたのだ。人生を駆け抜けて、それであのような人生の終幕を迎えたというわけだ。

そのすなお君の人生を、僕は、若くして亡くなったというだけで、心のどこかで〝かわいそうだ”と決めつけて、それですなお君の分まで生きようだなんて思ってやってきたわけだ。

僕はこの間その事に仕事中はっと気がついて、腰が砕けてしまった。(誰もいない倉庫でよかった。)

でも、すなお君の分まで生きようと思ったからこそ、ここまで来れたのだと思うから、許してほしい。

これからは、すなお君の分まで生きようと思わなくても、僕は生きていけるくらいのチカラのある人間になれた。僕自身をどこまで活かせるか、それをこれからも試していこうと思っている。

きっと、僕は世の中に色々と貢献できる。



僕は、すなお君をきっかけにして自分自身を見つめて、自分を知ることを探究してきた。

ひとつ自分を知る毎に、「なるほど!そういうことか!」と思って嬉しくなったり、それで脱力して泣いたりもしてきた。

すなお君、僕は最近こう思ったんだよ。

僕は最期、どうやって死にたいかという事なんだけれど、僕はね、


「あっ!なるほど!そういう事だったのか!」
と言って、パタリと死にたい!


誰かに見守られていたら最高だし、穏やかに死にたいとも思うけれど、

一番は、自分に納得して死にたいんだ。

それでさ、すなお君。

僕はそうやってぽっくり死んだら、最期に気づいた事を、興奮しながら君に報告しに行きたいな。

そしてひと通り話したあと、
すなお君に、こう言いたい。


「君の死に方は、あれは完全にナイスプレーだったよ!すなお君は、僕のスーパースターだったよ!すごいよ、すなお君!」


そう明るく言えるように、僕はこれからも、自分を探究して、どこまで自分を活かせるかを試していく所存だ。

きっと、すなお君の弟はすなお君の人生を全体として捉えていて、だから電話であんなに明るい声で、僕に「兄は亡くなりました」って、伝えてきたんだろうな。すごいよ、君の弟も。



もちろん、すなお君が今でも生きていたらと思うこともある。

けれど、現実はどうやったって変わらない。

だから僕はその現実を受け入れて、すなお君の人生はあれで最高だったのだと、この人生の中でしっかりと捉えたいのだ。


だから観てろよ?
僕の、スーパースター!



読んでくれてありがとうございます!
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それでは、またー!

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