山澤ひじき

暗闇ばかりをみつめ、生きてきました。ある日、過去を捉え直してみたところ、僕にとって〝暗闇こそが生きるチカラ”であることがわかりました。過去を捉えなおし、今と未来のチカラに繋げていくこと。それを文章を通して発信していきます。このブログがあなたの現在・過去・未来に貢献できますように。

山澤ひじき

暗闇ばかりをみつめ、生きてきました。ある日、過去を捉え直してみたところ、僕にとって〝暗闇こそが生きるチカラ”であることがわかりました。過去を捉えなおし、今と未来のチカラに繋げていくこと。それを文章を通して発信していきます。このブログがあなたの現在・過去・未来に貢献できますように。

マガジン

  • MASAKO

    上京し、情けなくも滑稽な僕を面白がった 友人・MASAKOとの日々を綴りました。

  • きみ江シリーズ

    祖母きみ江との日々を綴ります

  • 緊張のレシピを教えてください。

    かおよし君の「緊張」の捉え方を変え、改めていくマガジンです。

最近の記事

【短編】塩でとける包丁

それはよく晴れた雨の日のことでした。 わたし、ずっと太陽の光を浴びてみたくっていたのです。だからこのいつ止むともしれないお天気雨に、思いきって隅の花壇から玄関先に飛び出してみたのでした。 ああ、太陽の光とは、こんなあたたかさをもっているものなのだなぁ。 しとしとと降る冷たい雨は確かにわたしの肌を濡らし冷やしましたが、同時に降り注ぐ太陽の光はわたしの冷えた肌にじんわりとぬくもりを与えました。 とても不思議な、生まれて初めてのこのカンカク。 カンカクに酔いしれていたその

    • 茶筒と、母への苛立ちと、

      あ、茶筒が欲しいのか。 食器棚を拭きながら、そう思った。 。 小さい頃、家にあった茶筒は桜の木の皮が施されたもので、蓋を開ける時に「すぽん」という心地よい音がした。 表は木の皮で施されていたけれど、中はステンレスで、筒を揺らすと茶の葉がステンレスに当たって、冷たく乾いた音を出した。 茶筒の蓋をスポンと開けて、ステンレスの内蓋を開けると、ステンレス同士が擦れ合うような感覚的に痛い音がして、ちょっと嫌だった。 それでもお茶は好きだったので、幼い頃の僕はよく茶筒を手にと

      • 日曜日と父のおしまい

        晴れた日曜日のにおいがする。 季節はいつだったのか。そこまで具体的ではないけれど。 台所からお湯の沸き立つ音と、鍋から湧き立つ湯気のにおい。それから、インスタントラーメンの硬い麺がお湯に落ちる音。菜箸で鍋のふちを叩く音。スリッパの床を擦る音。 居間では座椅子に座った父が新聞で顔を隠している。テレビでは人が将棋と戦っている。「10秒…20秒…」と、女の人が磨かれたステンレスみたいな声を出している。磨いたステンレスに顔を近づけて声を出したら、僕もこんな声になる気がする。

        • 握りしめて離さない父の手は、

          「お父さま、スマホを握りしめて離さないんですよ。何度か試したんですけど。強く握りしめていたみたいで。」 看護師が肩を落としてそう言った。 まさか、こんなに早く “そんな日“が来るとは思わなかった。 まだ思い出の一つも書けていないのに。 … 父は入院してすぐ、スマホで手当たり次第に電話をかけて、自分の余命がいくばくもない事を周りに伝えていたそうだ。 何故か僕には電話をくれなかったけど。 「もうすぐ死ぬから、葬式の準備をよろしく頼むよ」と、上の兄にもお願いしていたよ

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        記事

          父がもうすぐ死ぬらしい

          僕は4人兄弟の末っ子だ。 しっかり者だと思っていたら鬱になって一度蒸発した兄と、自閉症の息子をアイドルに仕立てるファンキーな姉と、バツイチ4人の子持ちとパートナーシップを結んだもう1人の兄がいて、そして僕はゲイである。 それだけでも面白いのに、その“種“を植え付けた父はもっとイカれている。 マッチを組み立てて作られたようなガリガリの身体に、自分のことしか考えない卑怯者な性格。若い時にはタバコをバカバカとふかし、酒を飲んで陰口を叩き続けて数十年。 昨今はそのマッチな身体

          父がもうすぐ死ぬらしい

          にっぽんに生まれて。

          今夜、僕はヘインズのTシャツを刻んでいる。 夜ご飯はソーメンを食べた。 庭に生えすぎた大葉と、トマトと、近所からもらった新玉ねぎを酢漬けにしたものと、納豆をソーメンにかけて食べた。 とても美味しかった。 ソーメンを平らげて、それからビールをグラスに注いで飲んだ。部屋がとても静かだったので音楽をかけて、それからヘインズのTシャツを刻み始めた。 ヘインズのTシャツはAmazonで買っているジャパンフィットというやつで、安い時を見計らってまとめて買っている。 ヘインズのT

          にっぽんに生まれて。

          とあるおかみさんのくしと、だんなさんの大きな手

          今朝、傘をさして歩いていたら、一軒家の居間の窓辺にでっぷりとした柴犬がおり、こちらに尻を向けて座っていた。柴犬の両脇には夫婦がおり、おかみさんもだんなさんも柴犬を愛おしんでいる。 おかみさんはくしを持って柴犬のその密な毛をとかし、とかしたそばからだんなさんが大きな手でその毛を撫ぜる。おかみさんはとてもゆっくりと毛をとかし、だんなさんはそのスピードに合わせてとても丁寧にその毛を撫ぜた。 柴犬はふてぶてしい顔をして、そのでっぷりとした体をおかみさんとだんなさんに預けている。

          とあるおかみさんのくしと、だんなさんの大きな手

          人のふり見て、我がふり晒せ〜母は過剰がお好き?〜

          「ああ、これは切り過ぎちゃったかもねぇ…」 と、母がぼやいた。 元日。 お重がテーブルに所狭しと並ぶ中で かまぼこがお重2段分を占領していた。 切り過ぎちゃった“かもねぇ“の域を 軽く超えているぞ、母。 … 僕の母は過剰だ。 テレビに向かって笑ったり叫んだりがっかりする様は ドラマ「フルハウス」や「アルフ」のガヤそのものだ。 冷蔵庫は常にパンパンで、奥が見えない。 30代前半で実家に出戻った際、母がいない隙を見計らって冷蔵庫を整理したことがある。 たくさんのミ

          人のふり見て、我がふり晒せ〜母は過剰がお好き?〜

          ネガティヴは成長の母〜マイナス感情と向き合う“厨二病“のすすめ〜

          すなお君の事を書き終えてから、ちょっと放心していた。あの頃のことをいろいろと整理できてとても有意義だったなぁと思っている。 「朝から20歳の娘と3つ全部読んで、人生について考えたよ。」 なんていう、メッセージもいただけてとてつもなく嬉しくなった。 書いて世に出す、放つ、というのは、ものすごい効果・効能があるものだよなあと、改めて感じた。それが〝自分の今”とのズレのない文章であればあるほど良い。 ドンピシャな言葉が連なって文章になった時、それが自分の現在地を示してくれる

          ネガティヴは成長の母〜マイナス感情と向き合う“厨二病“のすすめ〜

          すなお君の人生が、僕に与えてくれたもの。〜死を受け入れ、人生を敬った先に、僕の生きる道が拓かれた〜

          夏の間ずっとサボっていたが、今日久しぶりに床を水拭きした。ベランダの窓を開けてせっせせっせと磨いていると、〝今”しか見えなくなってくる。 朝起きて直ぐに洗って干した布団カバーと敷きパッドが、ベランダの物干し竿に仲良く並んでぶら下がっている。今日はとても天気がよくって、床を拭いていると少し汗ばむくらいだ。洗濯物の隙間から、心地良い風が吹いてきて、僕のひたいを撫ぜた。 もうすっかり秋だった。秋は年々短くなっている気がする。もうすぐ冬がやってきて、また床を水拭きするのが億劫にな

          すなお君の人生が、僕に与えてくれたもの。〜死を受け入れ、人生を敬った先に、僕の生きる道が拓かれた〜

          すなお君の人生が、僕に与えてくれたもの。〜どんなきっかけをも活かすという道〜

          クロッキー帳に描かれたアヒルの絵を、今でも忘れることができない。 そのクロッキー帳は、おそらく今この世には存在していないと思う。 クロッキー帳は中学2年の時のもので、美術の時間にすなお君は僕のクロッキー帳にアヒルの絵を描き、こう言った。 「ぼく、グラフィックデザイナーになりたいんだ。」 すなお君はみんなを取りまとめるのがとてもうまいので、学級委員を選出される時には必ず名前が挙がっていた。中学校に入っても、おさるのような仕草をしていたけれど、それはとても利口なおさるだっ

          すなお君の人生が、僕に与えてくれたもの。〜どんなきっかけをも活かすという道〜

          すなお君の人生が、僕に与えてくれたもの。〜死にあらがう〜

          ”終わりよければ全てよし” これはシェイクスピアの戯曲のタイトルだそうだ。あらすじを調べてみたけれど、なんだかすごくもやもやとした終わり方で、シェイクスピアの作品の中でも問題作と呼ばれているらしい。 僕はこのあらすじを読んで、逆にスッキリした。 今まで僕は、”終わりが美しくあれば、それ以外の過程はどうでもいい”というような解釈でこの言葉を捉えていたからだ。 … 友だちが亡くなったのは、14年前。 僕が中学2年生の頃にいじめに遭っていて、クラスの誰もが僕をシカトする

          すなお君の人生が、僕に与えてくれたもの。〜死にあらがう〜

          捉え方ひとつで、過去は書き換わる。

          よく向き合ってきたなと、今、改めて思います。 … 中学2年生の頃、いじめに遭っていた。 いじめの主犯格の人が4人程いて、その4人が僕の筆箱を黒板消しにしたり、宿題してきたノートに落書きをしたり、ほうきで十字架を作ってはりつけにしたりもした。 教室ではりつけにされた時、廊下をふと見たら担任の先生が見えて、それで担任の先生は僕に気がついて目が合ったのだけれど、直ぐに目を逸らして歩いて去っていってしまった。 クラスのほとんどの人からは無視されて、主犯格の人に支持されてやっ

          捉え方ひとつで、過去は書き換わる。

          【未来ノート紹介】あなたはだれと手をつなぎたい?

          一度にたくさんの友だちを失ったことが、2度ある。 1度目は、中学校2年生の頃。 僕はいじめに遭っていて、それでクラスのほとんど全員が、僕に話しかけて来なくなった。 2度目は、27才の頃。 僕がとあるビジネスを始めたところ、友だちのほとんどみんなに猛反対されて、それで取り囲まれて散々言われた挙句、匙を投げられた。 この2度の経験とも、僕は完全に相手が悪いと思っていて、それですごく長い間、腹を立てていた。 … 昨日、『未来ノート』という本を紹介した。 本は10月2

          【未来ノート紹介】あなたはだれと手をつなぎたい?

          【未来ノート紹介】自分の何をさらけ出す?

          「僕は、赤ちゃんにすら、手と声を震わせて緊張していましたよ。」 … 仕事をしていると、立場上よくこんな事を相談される。そんな時に僕は相談してきた人に、 マウンティングする。 「僕、とある出張講座で詩を紹介して欲しいと言われてすごく悩んで吟味して、中学生の前で高村光太郎の〝道程”を紹介したら、全男子が爆笑してしまい、先生にもそのあと軽蔑した目で見られて消えたくなったことがあります。悔しくて、ここにいるやつみんな、どうていの癖にって思いました。」 「僕、影絵のイベントで

          【未来ノート紹介】自分の何をさらけ出す?

          本当の気持ちは身近にあるが、それは暗くて見えない灯台の下に

          noteの記事はスマホから書いていて、そうしている人は結構多いと思う。 しばらく前に、パソコンが壊れてしまった。 おそらく寿命だと思う。もう7年ばかり使ってきたから、買い替えどきなのだろうな。 それで、本当にパソコンは必要だろうかと改めて自分に問うてみたら、別にいらないと言うことになって、だからそれからずっとスマホを使っているのだけれど。 最近、スマホを触る指がやたらとピリピリして、それでいて、確かに打ち込んでいる文字が、自分が打ち込んだはずの文字ではない文字を表示す

          本当の気持ちは身近にあるが、それは暗くて見えない灯台の下に