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映画感想文 「狼の挽歌」をみて ハードボイルドは流行るのだろうか
「狼の挽歌」を見ました。感想を書いていきたいと思います。1970年 監督セルジオ・ソリーマ 主演チャールズ・ブロンソン。アメリカを舞台にしたイタリア映画です。マカロニウエスタンといわれるイタリア製の西部劇映画があります。それの犯罪映画版とも言えます。
チャールズ・ブロンソン演じる主人公のジェフは狙撃を得意とする殺し屋です。ジェフの恋人ヴァネッサはジェフを何度も裏切ります。しかしジェフは裏切られるたびに許します。ヴァネッサは野心家であり最後は大企業の大株主になります。最後はジェフはヴァネッサを狙撃して殺害します。そして自らも景観に撃たれて死亡します。
書いただけをみれば性悪女に振り回されて死亡するという馬鹿な男の話に見えるかもしれません。ジェフはたしかに反社会的な行動を取る人間です。しかし自らを自分の判断ですべて行動することを誇りに思うような人物です。自分で判断することを重きに置くということは、自由を自らの価値観の中心においていることになります。
ジェフは人から支配されるのも、支配するのも嫌います。そういう権力関係から自由でいたいと思っているのだと思います。と言うよりも権力関係から無関係だからこそ自由なのかもしれません。誰かから命令されるのではなく自分で判断して行動することこそ、素晴らしいのです。
自分で判断する事を中心に据えるという考え方は近代的です。近代から現代に至るまでの流れの中にいます。しかしジェフはそれ以外の行動は決して近代的なものとは言えません。例えばアメリカ合衆国憲法の一部を引用してみます。
われわれは、以下の真理を自明なものとみなす。すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられていることを。
日本国憲法ならばこうです。
すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
ジェフは生命を尊重しません。金のために狙撃し、敵は容赦なく撃ちます。仲間にも裏切られ、仲間だった男を銃で撃ってしまいます。ジェフには家族もいません。さらに言えば、私から見て、ジェフは幸福には見えません。でも何処か理解可能なのは、この価値空間が男社会に似ているからです。もしかしたら能力主義、競争社会、資本主義に似ているからです。
でも権力関係から自由でいたいと思うジェフと、富と権力を得ようとするヴァネッサと相容れるものではありません。しかし二人が結びつくのが面白いところです。ヴァネッサが女であるが故なのか、それとも違う価値空間を生きているからなのか、わかりません。
フィルム・ノワールという映画のジャンルはそういう男を描いたのです。例えば育児をするイクメンというものがあります。それは違う価値観です。そういえば、イクメンする探偵映画というのもありますね。今日ハードボイルというのが
流行るかわかりません。でも犯罪映画で同じような感じなものは、今日でもあります。