読書感想文 「交渉人」を読んで
「交渉人」 五十嵐貴久を読みました。アマゾンのリンクを張っておきます。
この本は改訂版です。私が読んだ本は改定される前の本です。「交渉人」ではスマホでない、昔の携帯電話が大きな役割を果たしています。改訂版では携帯電話がスマホに変わって大きく変わっているようです。いつでも連絡の取れるパーソナルな通信機器としての登場は画期的でした。家にある固定電話から、ひとりひとりが通信機器を持ち歩くというのは、個人化をさらに推し進めることになりました。
「交渉人」はシリーズ化されて、何冊が本が出ています。ドラマ化もされています。結構メジャーな作品だと思います。
交渉人とは立て籠もり事件が起こったときに、犯人とやり取りし、事件の終息をはかる役割です。犯人との会話を通じて、人質の安全を図りながら犯人の逮捕も目指す難しい職柄です。犯人がどういう行動をとるか予測不能の部分はあり、そういった状況でどういう対応をとるのが最善かを図りながら、犯人との会話を通じてかかわりあっていくというのは相当困難であろうと想像します。
だからこそスリリングです。犯人との駆け引きや心理の読み合い、先をどうするか考える想像力が試されます。この本も犯人とのやり取りに面白さを感じます。警察小説でもあり、警察の組織やその他の部分も、組織で働いたことがある人なら、こういう事あるよねと思わせるところも面白いです。
この小説には大きなトリックがあるのですが、感の良い人なら途中で気づくと思います。そういうことを差し引いても事件の進展を読んでいく醍醐味が味わえると思います。交渉人という、最前線にいながら、拳銃をぶっ放すだけでどうにかしてしまうのではなく、交渉という頭脳戦が堪能できます。
ミステリーのカテゴリーには入らないような気もします。私自身は、昔は推理小説が好きで、アガサ・クリスティーの小説はほとんど読んでいると思います。この頃はドラマでも警察のドラマを見るのがしんどくて、警察系は敬遠しています。そうすると見るものがかなり減ります。犯罪系は多いです。でも「交渉人」はスルッと読めてしまいました。描写も少なくスピーディーに文章が進展していくので読みやすいです。
交渉人(ネゴシエーター)をあつかった小説はそれほど一般的ではないと思うので、気になったら読んでみるのも面白いです。