体毛が濃い
脚の毛が濃い。具体的には太もも、すね、足のゆびだ。
小学生の時からコンプレックスで、サッカークラブや陸上部に所属していたのでユニホームから露出している部分を恥ずかしく感じていた。野球とか柔道とか、露出が少ない競技もある中、陸上は特に曝露が多い。サッカーはソックスである程度ごまかせるが、陸上ではタイツを併用しない限り、正式なランニングパンツ(ランパン)は太もも・すね全開のウェアである。
趣味でフルマラソンを10回、ハーフマラソンを5回以上完走しているが、うち前半10回以上は太もも・すねが曝露のハーフパンツでの完走だった。持久走において、「ランニングタイツを履くのは熱がこもって良くないに決まっている」などと、陸上部だったくせにランタイのメリット・性能を調べもせず偏見に基づき、食わず嫌いに曝露のまま走っていた。
しかし40手前にしてなんだかすね毛見せながら走るのがみっともなく恥ずかしいような気がして、5年前にいよいよランタイデビューをした。
見た目を気にしなくていいし、何より履き心地が良かった。履いていると、タイツの繊維の隙間からすね毛が表に一部突き抜けているけど、許容範囲である。
もっと早く履いていればよかったー。
体毛の濃さに対して子どもの時は対処のしようがなかった。体育の時間も嫌だった思い出の一つだ。体操服には機能性こそあれ、多様性を認める懐の広さは全くない。体型や性別問わず集団という一つの枠にはめ込むときに、すね毛の濃さは考慮されるはずがない。
体育の時間にすね毛の濃さでメリットはあるかと言えば、あるにはある。三角座りで待機中に、手のひらですね毛を思いきりこすって「ありんこ」を作って笑いを取れるのは、すね毛が濃い一部の人間だけだ。
今は大人なので除毛クリームを塗ったりブラジリアンワックスを試したり、何度かしたことがある。学生特有の校則とかがないので、自分の体をどう扱うか、そこにどれだけのお金をどのように使うか、ある程度自由裁量の利くところが大人の特権だと思っている。
コンプレックスではあるけど、脱毛サロンで半永久的に体毛を根絶やしにしてやろうというモチベーションまではない。また生えてくるのを承知の上で、ブラジリアンワックスや除毛クリームに落ち着くのが関の山である。
それでも一時的ではあれ、脚がトゥルトゥルになるのは何とも気持ちよく、また変な感じでもある。やはり体毛の役目は身体表面の保護・保温であったということに気付かされる。除毛前に比べて明らかに涼しく感じ、また、長ズボンの履き心地や布団に入った時の肌触りが全然違うのである。「今まで表皮を守ってくれていたんだね。ありがとう」そんな気持ちである。
除毛クリーム後に抜けた毛たちの亡骸を見ていると、散り散りに散っていったかつての「ありんこ」たちが思い出される。