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☆うちのバッチャ全文公開☆ 溶かしマン、現る。

 3歳になった長男が湯飲みに水を入れて、その中にティッシュを一枚ずつ溶かしていた時のことです。
「何をやってるの?」
と聞いてみたところ、息子は自信を持ってこう答えたのでした。

「溶かしマンだ!」


と。

溶かしマン、お願いだから、ティッシュを何枚も水に溶かさないで……。
 その後息子はえんえんとハミガキコップに水を入れて、洗面所と居間を往復しており。バッチャに
「何をやってるんですか、アナタは!」と言われ、また「溶かしマンだ!」と答えておりました。


 アイディア豊富な3歳児は、育てるのに苦労しますね。子供を育てる時は、「うちだけがこうなんじゃない、子供とは、こういうものだ」
 と。自分に言い聞かせて育てています。


 3歳の子供が一体、何を考えているのかは私にはよくわかるのです。3歳の子供は、「すごいこと思いついた!」という確信に満ち溢れ、ケガするとかそういうことは一切予測もせず、黙々と行動に移しているだけなのです。

 子どもの頃、秋田の田舎に住んでいた私は、2階の軒下に巣を作っていた蜂の巣からハチミツを採ろうとして2階の窓から屋根に上がり、1度に2カ所ハチに刺されたことがあります。

 ぶんぶん蜂が飛んでる巣に向かって手を伸ばす私を見て、
「あぶないあぶない! やめれー!」
と母親が騒いでいるのを聞いて、
「一体、おかあさんは何を騒いでいるのだろう? 騒がなくても今、ハチミツとってあげるからね」

 と、のんきに屋根の上を歩いて巣に向かっていったそうです。次の瞬間、同時に2匹のハチに刺され、「痛い!」と叫びながら走って家の中へと戻った私。見ていた方は気が気じゃなかったそうです。

 その他にも、2階の窓から外にある、子供用ブランコに飛び移ろうとしてケガをしたり。階段をジェットコースターにして遊ぼうと、椅子に座って階段を転げ落ちて来たりと。子どもというものは実際に痛い目に遭わないと、危険という意味がわからない生き物ですよね……。


 現代の母親は何でもかんでも先回りをして、「アレしちゃダメ、コレしちゃダメ」と言って子供の可能性をつぶしてしまう……そんなお話も聞きますが、母親がのんき過ぎると子供がケガをする可能性は非常に高くなりますね。

 先日、小児科に行った際に息子が高さ1メートルくらいの丈夫な作り付けの本棚に登って遊んでいたので、「痛い目みたら叱ろう」と余裕をこいて見守っていたらなんと、本棚に登った後、ブラインド・カーテンの紐でいたずらをして、首に紐が絡まったまま飛び降り、死ぬところをしていました。

 まさか、小児科のような安全な場所で死にかけるとは思いもよらなかったので。首が絞まって相当、慌てたのですが。
 「死ななくてよかった!」と思うと同時に、「首に紐巻いて遊ぶなゴラーッッッッ!」と、息子の頭をごんぎりと殴って、叱っておいたのでした。   
 
 昔の子育ては今より不便で、大変だったろうと思い、バッチャに聞いてみたところ、「そったに大変でなかったなあ」
 という返事が返ってきました。
「昔だば、えんちこっていう藁でできたベビーラックがあって、その中に赤ん坊を入れておけばよかったはんで」
「エエッ、そんな便利なものがあったんですか?」

「便利だよ~。藁でできたベビーラックさ赤ちゃんのお尻、出したまま入れておくべ? そこに藁とシビっていう藁のやわらけえとこ入れて、その上に布敷いて赤ん坊こと入れておけば、オシッコしても何しても、布からポッと投げればいいんだはんで。濡れた藁は取り替えて捨てるんだばって、たい肥になって、無駄がねかった。」

「エエッ、それじゃ紙おむつがなくても楽だったってことですか?」
「そんだな。大体、3歳まで入れておいたんでねかな?」
「そそ、そんなに! 3歳って言ったら、もう歩いている頃じゃないですか!」
「そんだから、藁のベビーラックさ入れて布団こと上からかけて、出てこねえようにしておくはんで、歩くのも遅かったなあ。たいした便利で、おっぱい飲ませる時だけそこから出して、後はえんちこさ入れておけば家事でもなんでもできるべ?」
「な……泣かないんですか?」
「まあ、泣くばってな!」

 泣いたぐらいじゃ気にしない……全ての育児の解決方法がこれでわかったような気がしました……。

昔は水も井戸から汲んで家事に使っていましたし、洗濯機もなかったので、家事にかける時間は今よりずっと長かったはずです。


 ひ孫がのんきにご飯を遊びながら食べていると、バッチャは「さっさと食べなさい!」と叱ります。こう言って叱るのはもう、自分の息子から数えて3代目です。まさか孫の、子どもの代まで叱ることになろうとは。

バッチャは一言、「恐ろしな!」と笑うのでした。

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