田口ランディさんの『水俣 天地への祈り』(河出書房新社)を読み終わった。
本当にすごい本だと思う。
たくさんの人に会ってきたランディさんが、この人の言葉を伝えたいと、長い年月をかけて取材され書かれた本。
どんな風に生きてたって
人は悩む。
七転八倒して悩む。
自分の中に問い続ける。
でも、ここにある言葉はすべてを超えてくる。
苦しみ抜いた人の言葉は、私を捕まえて、上昇気流に乗って連れて行くほどに、自分の中身をひっくり返すような真剣さを持っている。
「ほんとうに、水俣病になって良かったと、そう思えるのですか? なぜですか? あんなに水俣病のために苦しんだではないですか、どうしてそんなことが言えるのですか、どうしてそんな
に強くなれるんですか?」
強いまなざしに射ぬかれる。これは漁師の目だ。私の父と似ている。父も漁師だったからわかる、日に焼けて透明な眼球。
「たくさんのご縁をいただいたのも、いろんなことを知ることができたのも、経験できたのも、水俣病になったからです。
そりゃあいじめられて差別されて悔しい思いもしました、死のうと思
ったこともありました。でも父は私に言ったとですよ、人は変えられんから自分が変わっていこと。
いじめられたから差別のつらさがわかる。教えられたとです。だから私
がいまこうしておるのはみんな人様のおかげです。人が生き方を教えてくれるとですよ、人から学ぶとですよ。
今ではどんな人も自分の味方と思っとります。みんな大事な味方。敵がいなくなりました。だから私は、水俣病はのさりと思うとるんです」
ここまで真剣に、私たちは生きているだろうか?
身体がぬるくて、だるくて、重いときこそこの本を読んでほしい。
水俣病を経験した人たちの言葉はもはや生命だ。一瞬で空を駆け上がり、不知火海の海に潜るような鮮烈な言葉に満ちている。
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