香りが運んでくれた恋
◇◇ショートショートストーリー
良雄はテレビ局のディレクター、仕事で忙しい毎日で休みの日も、ネタ探しに追われています。30歳を過ぎた彼は、両親から早く身を固めなさいと、言われますが、そんな心のゆとりも、積極性もないタイプです。
彼はおばあちゃん子で、忙しい合間を縫っておばあちゃんの家を訪ねては話し相手になっています。
おばあちゃんは、一人暮らしですが、家にはかわいい相棒がいます。
三毛猫のタマです。タマは野良猫でしたが、おばあちゃんが餌をあげているうちにいつの間にか居つくようになって、今は飼い猫に昇格しました。おばあちゃんはタマがかわいくて仕方ありません。「うちのタマみたいにハンサムな三毛猫はおらんわい、色の配置が最高なんよ」と言って自慢しています。
タマはいつも良雄には知らんぷりで、おばあちゃんの膝の上にちょこんと座っておばあちゃんに甘えています。
ある日、おばあちゃんがこんなことを言っていました。
「タマが、昼間に、出掛けたら、ずっと帰ってこんのよ、何処に行っとんかなー」
「ふーん、おばあちゃん、タマも、恋の年頃じゃないん、仕方ないわい、若者じゃけんねー」
「ヨシくん、そう言うあんたも、もうとっくに恋の年頃じゃないの、タマに、先越されたらいかんよー」
「えー、俺とタマを一緒にせんといてや」
そんな話をしていたら、タマが座敷の襖に開いた小さな穴から、すっと入ってきて、茶の間にやってきました。
タマが動く度に、何だかいい香りがします。
「おばあちゃん、タマ何か、いい匂い撒き散らしとるねー」
「ほーなんよ、毎日ええ匂いがするんよー」
「アロマかなー、タマええ匂いじゃなー、お前そのええ匂い何処でもろてきたんぞ・・・」
良雄は、その香りが嫌いではありませんでした。
次の休みの日、良雄は自転車でおばあちゃんの家を訪ねました。
住宅街の庭に植えられている花を楽しみながらゆっくりペダルを漕いでいると、何処からともなく記憶に残る、いい香りがしてきました。
「あっ、この匂い、覚えがあるなー、どこで嗅いだんだっけ、えーと、どこだっけ・・・」
そんなことを考えていたら、ニャーという鳴き声が聞こえました。
「あー、タマ、お前こんなとこに遊びに来とるんかー」
タマは、良雄には目もくれず、風をきるように、白い門扉の家の庭に入って行きました。
その家からは、あの甘ーい香りがしています。
庭の奥から声が聴こえてきました。
「あー、ニヤンコちゃん、今日も来たんだー、マドンナ、お友達が遊びにきたよー」
甘く可愛い女性の声でした。
それから良雄は今まで以上におばあちゃんを訪ねるようになりました。必ず自転車で。
そして、1ヶ月後の日曜日の昼下がり、良雄はいい香りが気になる家の近くで真っ白な毛足が長い、青い目の猫を抱いた、かわいい女性に出会いました。
丁度その時、タマが走って来ました。
良雄は大きな声で「タマ、タマ、タマ」と、タマに呼び掛けるふりをしました。
その女性はにっこり笑って「あー、タマって言うんですねー、いつもうちに遊びに来てるんですよー、このニャンコちゃん」
良雄は自転車を降りて、「あー、それは、すみません・・・、タマは、こんな素敵な猫ちゃんに会いに来てたのか・・・」と、タマを抱き上げました。
これが良雄の恋の始まりです。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《この恋が成就したらええねー》
リビングで最近はまっているグラノーラを食べた後のばあばとの会話です。
「ねこも人間と同じかねー、恋の季節は大切よ、ほじゃけど私は犬派なんよ」
「お母さん、ショートショートのテーマはどうかなー」
「恋の始まりは何処にあるか分からんけんね、面白いんよ、上手いこといくかどうかは本人次第じゃねー」
小説のテーマを見つけるのは書き始めたばかりの私には本当に難しいんですが、今度は母が好きなワンちゃんを主人公に書いてみようと思います。
【ばあばの俳句】
世相読み五月の朝にブログ書く
母は毎朝、新聞を広げて、気になる記事をピックアップしています。記事から時代と今の匂いをかぎ取っているようです。本当に貪欲だなーと思います。
新聞の記事の中に、イラストのテーマがあればすぐに描いているようです。
毎日の努力が母の元気とエネルギーを生みだしています。新聞から情報をキャッチして今日もブログを書いているそんな親子を詠みました。ブログは私たちの元気の元です。
▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。
たくさんの記事の中から、「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただきありがとうございます。
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私のアルバムの中の写真から
また明日お会いしましょう。💗
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