あれは何だったんだろう
◇◇◇ショートショートストーリー
誠は見てはいけないものを見てしまったような気がしました。「あれば一体なんだったんだろう」あれから2週間たっても記憶の中からそのシーンが消えません。
目を背けたようとしたけれど不思議な光景に目を奪われてしまったのです。
英会話のレッスンがある日、いつもなら自転車移動なのに空模様が怪しかったので、珍しくバスで出かけた帰りでした。
「バスが来るまであと10分か・・・」と思いながら誠は近くの家の様子をぼんやりと見ていたのです。
門の前にワゴン車が止まっています。車の前で8人程の男女が誰かを囲むように寄り添っていました。
誠には仲良く話しているような雰囲気に見えました。誠の想像力が発揮されます。
「きっと転勤する若い夫婦を家族が見送っているんだろう、別れを惜しんでいるんだな、都会に引っ越していくのかな、きっと、名残惜しいだろうな・・・」そんなことを考えていました。
しかし、次の状況を見て、誠にはそうでないことが分かりました。
ワゴン車に一度乗り込んだ30代くらいの女性が、すぐさま車の外に飛び出して、家の中に走り込んだのです。
誠はまたまた想像を巡らせていました。「あれは、子育てにうんざりしてこっそり実家に帰ってきた奥さんを、旦那さんが迎えにきて、説得して連れ戻そうとしているのかとも知れない」
しかし、それも違っているなと思いました。
逃げ込むように家にかけこんだ女性は再び数人の人たちに挟み込まれるようにして車の近くに戻され、暫く問答が続いています。中から男性が一人抜けて、少し離れた場所から怪訝な表情で電話をかけ始めました。
女性は数人に挟み込まれたまま車に押し込められようとしています。彼女は足を踏ん張って車に入るのを拒んでいるようです。しかし集団の力に負けて、とうとう車に押し込められてしまいました。彼女の履き物が脱げましてが、それは車の中に放り込まれました。
再び誠の想像力が働きます。
「彼女は心を病んでいるんだろうか、入院しなければならなくなっているんだけれど、本人が同意しないので、病院の担当者や親族が協力して連れていこうといているんだろうか・・・」
とそこに誠が乗るべきバスが到着しました。誠はワゴン車の女性の顛末が気になって仕方がありません。バスが出発しても、まだ止まっているワゴン車を見つめていました。
誠はひたすら彼女の身に起こった出来事に思いを巡らせていました。
そしてその日の日記にこう記したのです。僕はいつかこのシーンを小説に書くだろうと。
誠はあの女性のその後を知る由もありません。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《まあいろいろ書いてみてくださいや》
コーヒータイムに好きなお菓子を食べているばあばと。
「なんか怖いシーンを描いとるねー、テレビとかでは見るけどちょっと面白いわい、色々想像f出来るけんねー」
「私も色々なシーンを見る機会があって、想像が広がったら書こうと思とんよ」
「ミステリーは今まで書いてないね、まあいろいろ書いてみてください、あんたが出した坊っちゃん文学賞もう20作品にまで絞り込まれたって新聞に書いとったよ、あんたのはどうじゃったんじゃろか・・・」
「お母さん、発表は2月じゃけん夢は見とかんとね・・」
noteでショートショートを書くようになって地元の文学賞に応募した私、とにかくこれからも書き続けようと思います。
【ばあばの俳句】
揺れ止まぬ混沌の世枯れ尾花
令和3年は様々な事が見定まらない、不安が募る混沌の時代です。母はそんな状況を枯れ尾花が風に揺れる姿に重ねました。
時代の風に委ねながら、また新しい季節を生き生きと楽しく生きたいそんな思いも込めてこの句を詠みました。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
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私のアルバムの中の写真から
また明日お会いしましょう。💗