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花とおしゃべりしていた男の子
◇◇ショートショート
自分の思っていることを上手く言葉で伝えることが出来ない良夫は、診断を受けて、発達障がいだと言われました。
両親はその事で少し安心しました。
小さい頃から友達と遊ぶ事がほとんどなく、一人遊びが好きで、同じ年頃の子どもとコミュニケーションがとれない息子が、病気だと分かって、何故だか安心したのです。
良夫は、毎朝、自宅の中庭の温室で、花に水をあげながら、花たちとおしゃべりをするのが日課です。
「蘭さん、おはよう、今日のご機嫌はどうですか」
そう話しかけると、蘭の花は、笑顔で答えます。
「私は元気よ、良夫君はどう、辛いことはない」
「うん、学校では友達がいないけど、僕には温室の皆が友達だからね」
「困ったことがあったら、私たちが相談にのるわよ、何でも言ってね」と、蘭がやさしく話してくれます。
良夫君は雨の日も、風の日も花たちの水やりを欠かしたことがありません。ところがここ数日、良夫君の姿が見られなかったのです。代わりにおじいさんが水を撒いていました。
温室の仲間たちは心配でたまりませんでした。
多肉植物の仲間たちは「良夫君、どうしちゃったんだい、ここ数日姿が見えないけど、何かあったのかな」
観葉植物のポトスたちは「良夫君、病気じゃないのかなー、この間咳をしてたけど、ちょっと苦しそうだったよ」
良夫君が一生懸命育てていた早咲きのチューリップも心配そうです。
「私たち、やっと花が咲きそうだったから、良夫君とっても楽しみにしていたのよ、明日になったら花を見せられるはずなのに」
植物たちが口々に心配する声を上げています。
そしてみんなで相談して決めました。みんなで良夫君にパワーを送ることにしたのです。
「三時になったらこの温室の仲間全員で良夫君にパワーを送ろう、皆一斉に『良夫君僕たちがついてるよ』って言うんだよ、いい時間は三時だよ」
植物たちはそう約束して、その日の三時を待っていました。
その頃、良夫君は病院のベッドで寝ていました。
風邪をこじらせていた良夫君はもともとあった喘息の持病で、呼吸が難しくなっていたのです。酸素吸入をしていた良夫君は夢の中でずっと温室の植物たちの事を考えていました。
「僕がお水を上げられなかったら、あの人たちは大変なはずなのに、皆大丈夫かな・・・、早く元気にならないと」と思っていると、
良夫君の耳元で植物たちの声が聞こえてきました。
「良夫君、良夫君、大丈夫、僕たちが待ってるよ、君がいないと寂しくって仕方がない、早く元気になって温室に来てね」
様々な植物から応援を貰って、良夫君は一気に元気になったのです。
本当に不思議なお話です。
お母さんとお父さんが病室で話しています。
「あなた、良夫がうわごとで、『蘭さん、僕は大丈夫って』言ってるのよ」
「お前も聞いたか、『みんな、僕は絶対元気になるよ』って、言ってたな」
「あの子があんなにはっきり話すのは始めて聞いたよ、誰と話していたんだろう」
「あなた、夢の中で誰かと話していたのよね」
「ああ、もう、心配ないようだ」
翌日、良夫君は退院することが出来ました。
そして、次の日の朝は良夫君が温室で水をやりながら大きな声で植物たちに話していました。
「みんなで病室まで会いに来てくれてありがとう」
植物たちはにこやかに微笑んでいました。
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【毎日がバトル:山田家の女たち】
《愛情を注ぐことは大事じゃね》
「男の子の病気が治って良かったね、人は一人では生きていけんけんね、花の友達が居って良かったんよ」
「男の子の愛情が花に通じとった言う事よね」
「花に愛情を持ったけん、花から愛されたんよね、愛情を注ぐことは大事じゃねー」
何となく母が優しい気持ちを感じて、心が温かくなるいいショートショートじゃと言ってくれました。誰かに伝わる事が嬉しいです。
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ゆっくりと歩む楽しみ花の道
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お散歩をするのが楽しみな季節になりました。春の季語として花と詠めばサクラの事を言いますが、サクラをはじめ様々な花に出会えるこの時期は、母にとってとても嬉しい季節です。そんな気持ちを詠みました。
イラストは、杖を相棒に花を目指して懸命に歩く母の姿です。
最後までお読みいただいてありがとうございました。たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。
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また明日お会いしましょう。💗