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同窓会で会いたかった女
◇◇ショートショート
ケンは1週間前からソワソワしていました。小学校時代の同窓会があるからです。ケンにはどうしても会いたい人がいました。彼は、小学校時代インターナショナルスクールに通っていたのです。
学校には様々な国の子どもたちが通学していました。ケンはお父さんがアメリカ人でお母さんが日本人です。見た目が日本の子どもたちと違っていたのでお母さんがいじめなどを心配してインターナショナルスクールに通わせていました。
ケン自信も学校の自由な雰囲気がとても気に入っていました。
それぞれの個性を伸ばす教育が特に美術に興味を持っていたケンには合っていたのです。
インターナショナルスクールに、正義感が強くてたくましい女の子がいました。ステファニーです。
彼女はよく喧嘩をしていました。理不尽な事を見過ごすことが出来なかったので、すぐに行動に出ていたのです。
彼女はお母さんがインド人、お父さんがフランス人でした。ステファニーはとてもしっかりしていて、常に自分を持っている女の子で、人に流されるのが嫌で、「私はこう思うの」が口癖でした。
よくいじめられていた男の子をステファニーはまるで戦士のように助けていました。「私が守ってあげる、彼にはさわっちゃダメ」そう言っていじめっ子に立ち向かっていました。ケンも彼女に助けられたことがありました。
目鼻たちのはっきりとした、背の高い女の子でした。
ケンは彼女に会いたかったのです。きっと彼女は同窓会に来るだろうとドキドキしながら会場に行きました。しかし彼女の姿はありませんでした。
仲間たちと久々の再会を果たして、それぞれが昔の自分に戻っていました。
ケンは彼女には会えなかったけれど、今日は来てよかったと思い始めていました。
「やっぱり懐かしい、自分の昔を知ってる仲間と会って話すのは、いいなー、自分の心が純粋なあの頃に戻れるから」そんなこと考えながら、扉の向こうを何気なく見ていると、そこに表れたのです。
長いストレートヘアーのスレンダーな女性が、シフォンの軽やかなワンピース姿でピンヒールを履いています。
そこだけ光が差したような眩しさを感じたケンは、彼女が誰だかすぐには分かりませんでした。
「あのはっきりした目元には覚えがある、そうだ、ステファニーだ」心待ちにしていたステファニーが彼の前に表れたのです。ケンは一瞬言葉を失いました。
「彼女はとっても男っぽい女の子だったはず、ピンヒールにシフォンのワンピースなんて着るタイプじゃなかったけど」そう思いながらケンはぽかんと彼女を見つめていたのです。
すると、ステファニーがケンに声を掛けました。
「あなた、ケンでしょう、面影がある、あなた男らしくなったね、私、ステファニー覚えてる、あなたはいつも静かに私を見ていたわね、私はいつもあなたは見方だと思っていたの、あなたの力が、私を動かしていたのよ」
ケンは思いました。
「見た目は大きく変わっているけれど、彼女は昔と少しも変っていない」と。
ケンは彼女の傍に駆け寄って「僕は昔から君の見方だったよ、今日は本当は君に会いに来たんだ」そう言うとステファニーは「そう、じゃあこの後一緒に飲みに行きましょう、思い出話がたくさんあるから」
同窓会が終わった後、ステファニーと十数人の仲間たちと2次会に行くことになりました。ケンはステファニーの存在感に圧倒されて、ただ彼女の言葉に頷いてばかりいました。
翌日、スマホのLINEにメッセージが入りました。
「ケン、今日はスケジュール空いてる、良かったら昨日のお店に飲みに行こう、まだまだ昔話が残ってるから」
ケンは、やっぱりステファニーは変わっていないと思いました。
きっとこれから「私はこう思うの」と語り掛ける彼女の傍にいることになりそうだとケンは予感していました。
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【毎日がバトル:山田家の女たち】
《同窓会はもう私には関係ないんよね》
「会いたい人に会えてよかったね、会えんかったら心配よー、人はそのままの生活をしよるとは限らんけんねー、人柄が変わらんかって何よりよー」
「同窓会は懐かしいわいね」
「私らの年になったら、同窓会はもう関係ないね、年賀状ぐらいよ、会えるときにおおとかんとね」
年を取ると同級生と会うこともままならないと言う事だと思うます。私も懐かしい人たちには暫く会っていません。
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かくれんぼ菜の花畑小さき影
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母は同窓会のショートショートストーリーを聞いて、可愛い句を詠んでくれました。幼い日の菜の花畑でのかくれんぼです。これからは各地で菜の花の開花情報が入ってくると思います。
母のイラストから菜の花の黄色い花が風に揺らめく姿が見えるようです。こんな風景が早く見たいですね。
最後までお読みいただいてありがとうございました。たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。
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また明日お会いしましょう。💗