おばあちゃんのXmasプレゼント
◇ショートショートストーリー
ひかりのおばあちゃんは働き者です。若い頃から女手一つで一人息子を育ててきて、苦労の連続でした。
でもおばあちゃんはいつも愚痴一ついわず、笑顔を絶やしません。ひかりにとっては、尊敬する女性です。
そのおばあちゃんの好きな言葉があります。
「いつも心に太陽を、今日も明日も明後日も」その言葉を呪文のように言っています。ひかりが何かで落ち込んでいると必ずこの言葉で元気づけてくれました。
おばあちゃんは、悲しいときも辛いときもその言葉で乗り切ってきたと言っていました。おばあちゃんに習って、ひかりもその言葉を元気の呪文にしています。
「いつも心に太陽を、今日も明日も明後日も」
その言葉を繰り返していると何故か元気になってくるから不思議です。
おばあちゃんはひかりによく初恋の話を聞かせてくれていました。
近所に次郎君と言うとっても優しくてハンサムな少年がいて、おばあちゃんはその子が大好きだったそうです。引っ込み思案のおばあちゃんでしたが、その子の前では何故か素直な自分を出せたそうです。
勤勉で学力優秀、成績はクラスで一番だったけれど、スポーツ音痴で運動会のかけっこではいつもびりだった次郎君。
おばあちゃんはその子が大好きで、ある日、告白しようと思って、近くの神社に呼び出した日から、次郎君一家の行方がわからなくなったそうです。
「おばあちゃん、その次郎君、どこにいったん」
「おばあちやんも分からんのよ、家業の鉄骨業で不渡りを出してね、夜逃げしたんよ」
「それからずっと会ってないん」
「どこでどうしよんかなー、本当に優しいええ子じゃったんよ、私の家が貧乏じゃったけん、みんなにいじめられとったけど、あの子だけは、私に親切でねー、いっつも私に元気が出る言葉をかけてくれたんよ」
「ほんと、今は何をしよるんかなー」
「もう70年も前の話じゃけん、元気じゃったらええんじゃけど」
「それが初恋なんか・・・」
「ほーじゃねー、清らかな思い出よ」
「おばあちゃん、ずーっと気になっとるんじゃねー」
「死ぬまでに一回でも会えたら嬉しいわい」
ひかりはそんなおばあちやんの夢が叶うといいなといつも思っていました。
おばあちゃんによく似ているひかりはとても優しい子で、地域のボランティア活動にもよく参加しています。
「おばあちゃん、新しくできたケアハウスのクリスマスパーティーがあるんよ、入居しとる人に、手作りのクリスマスプレゼントを贈る企画があるんじゃけど、おばあちゃんも一緒に行かん」
「ええよ、年が近い人がおったら安心するかもしれんけんね」
クリスマスの当日、二人はボランティアの人たちと一緒にケアハウスに向かいました。
ハウスの中では入居者が集まって、三時のおやつのケーキを食べています。
ケアハウスに来てからひかりは、おばあちゃんの様子がおかしいと思いました。何だかソワソワしているのです。
「おばあちゃん、どしたん、何かあるん」
「ひかり、あの人、次郎君に似とんよ、頭は真っ白になっとるけど、何か面影があるんよ、あの顔・・・」
「おばあちゃん、あの人は認知が入っとるんよ、この間来たとき、なんか言いたげに私の顔をまじまじみよったわい」
その言葉を聞き終わらないうちに、おばあちゃんは、大きな声でそのおじいさんに向かって言いました。
「いつも心に太陽を」と言うと、そのおじいちゃんが、振り返りました。
おばあちゃんはもう一度呪文の言葉を投げかけます。
「いつも心に太陽を」
するとおじいちゃんが大きな声で答えます。
「今日も、明日も、明後日も」
「次郎君、私よ、あかりよ」
そう言っておばあちゃんはおじいさんの側に駆け寄りました。
そして二人が声を合わせます。
「いつも心に太陽を、今日も、明日も、明後日も」
その時ひかりは初めて知りました。
おばあちゃんがいつも唱えていた言葉は
次郎君がおばあちゃんを励ますために、かけていた元気が出る呪文だったことを。
クリスマスの日に、おばあちゃんは次郎君との再会が出来ると言う最高のプレゼントをもらったのです。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《私の呪文はケセラセラよ》
「次郎君に会えて本当に良かったね、私はその呪文好きよ、いつも心に太陽を、今日も明日も明後日も」
「お母さんの呪文は、あれよね」
「ケセラセラ、成るようになる明日は明日の風が吹く、いっつもこの呪文を唱えよるよ、ケセラセラで行きましょう」
母の呪文「ケセラセラ」は、私の元気の呪文にもなっています。「明日は明日の風が吹く、いつも心に太陽を、今日も明日も明後日も」
子の笑顔亡夫の笑顔やクリスマス
母は私たちがまだ子どもの頃の我が家のクリスマスパーティーを思い出しました。父はとても子煩悩で自ら率先してホームクリスマスを盛り上げてくれました。
ゲームやくじ引きを考えたり、プレゼント交換を楽しんだり、家族みんなを笑顔にしてくれました。本当に懐かしいクリスマスの思い出です。
最後までお読みいただいてありがとうございました。たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。
また明日お会いしましょう。💗