おばあちゃんから貰った
ショートショートストーリー
僕が住んでいる公営住宅の隣にある小さな畑で、腰が九の字に曲がったおばあちゃんがプチトマトや、きゅうりなどを育てています。
一人暮らしで寂しそうなおばあちゃんに僕は「こんにちは、物凄くみずみずしいトマトじゃねー、おばあちゃんみたいじゃがね」と声を掛けて軽いジョークを飛ばしていました。
僕はアパートの小さな部屋で、妹とお母さんと三人で仲良く暮らしています。父は建築の仕事をしていましたが現場の事故で、6年前に亡くなりました。働き者で面倒見のいい、誰にも優しい、とても実直な人でした。
父が亡くなってから母は介護の資格を取って、僕たちを育ててくれています。
僕と妹はお母さんを少しでも助けられればと二人で夕飯を作っています。僕たちは最近、節約料理が上手くなりました。
買い出しは近くのスーパーマーケットです。夕方になると2割引になるので学校から帰って宿題をした後、買いに行きます。
スーパーマーケットでも、よくおばあちゃんに出会いました。おばあちゃんは、何時もびっくりするくらいたくさん買っていて、普段以上に腰を九の字に曲げて両手一杯に荷物を持っているので、時々家まて運んであげました。
「お礼だよ、持ってお帰り」と言っておばあちゃんは畑で採れた野菜をたくさんくれました。
ある時、畑の収穫作業を手伝ってあげたら「家にお上がり」と言って、インスタントコーヒーをご馳走してくれました。
その時、僕はおばあちゃんにいろいろ質問されました。家族のことや、将来の夢の話をした後で、お父さんが事故で亡くなったこと、お母さんを助けるために大学を受験するのを諦めたことなど、自分のおばあちゃんに話すように話しました。
「あんたは、本当にいい子じゃねー、私にもあんたみたいな孫がおったら、幸せなんじゃけど、私の一人息子は家族4人で旅行に行って、旅先の事故で死んでしもたんよ」
「おばあちゃん、寂しいねー、たまらんねー、僕はお父さんだけでも立ち上がれんかったけん、おばあちゃんは本当に可愛そうじゃ、おばあちゃん、僕でよかったら、出来ることは何でも手伝うよ」
おばあちゃんはその言葉が嬉しかったようで、僕に色んな手伝いを頼むようになりました。
おばあちゃんはこの間、畑で転んでしまって今は車椅子に乗っています。僕は介護の人と一緒に車椅子を押してあげたり、買い物に行ってあげたり、出来る限りのお手伝いをしてあげています。
昨日、家に弁護士さんが来て、母に書類を見せて説明を始めました。
「神原さんから呼ばれまして、神原さんの遺産相続人をお宅の息子さんにしたいと言うご要望なんですが・・・」
「えー、あのおばあちゃん、おばあちゃんが僕に何を相続して欲しいんですか・・」と、僕が聞くと
「神原さんは、資産家でしてね、あの辺りの土地をたくさんお持ちなんですよ、相続していただきたいのは3億円です」
僕もお母さんも驚いて、すぐには言葉が出来ませんでした。
「神原さんは倹約家でねー、贅沢な生活は一切なさっていませんが、他にも資産がいろいろおありなんです、そのほとんどは地域の養護施設に寄付なさるんですよ、ですから、私なら、この申し出は断りませんよ」と弁護士さんが付け加えました。
僕は父がいつも言っていた言葉を守っていただけなのです。
「人生は何が起きるか分からないけれど、人には親切に優しく接すること、そして実直に生きること、人に裏切られても自分は絶対に人を裏切ってはいけない」
父はいつも僕にこう言っていたのです。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《見せかけじゃなく、心からの思いが大事なんよ》
昼食に、豚肉の野菜炒めを食べた後のばあばと。
「人には親切にせんといかんのよ、優しい心を持っとったら人には伝わるんよねー」
「その通りじゃねー」
「それは見せかけじゃなくて、心からの思いが大事なんよ」
「そうじゃねー」
「今どき珍しいけど、あんたも人には親切にせんといかんよー」
誰かに何かをしてもらう為ではなく心からの誠意を尽くす心を持っていたいと思いますねー。
【ばあばの俳句】
掃き終えてまた掃く狭庭夏落葉
毎朝の母の作業は庭の掃除です。夏の落ち葉は掃いても掃いても落ちてくるそんな状況を詠みました。母はそうした日常の営みから自然との会話を楽しんでいます。
懸命な作業の中で、木や鳥そして虫たちと会話をしているのです。
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また明日お会いしましょう。💗
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