89歳の魅力的なお話
私が若い頃から憧れていた作家のお話を聞くことが出来ました。知的でエレガントな男性です。流石に言葉の選び方が素敵でした。何気なく話している言葉が美しいのです。それは意識しているのではなく、当たり前に自分の中に沁みついている言葉のセンスなのでしょう。
見習わなければと思いました。
舞台に登場した時に「イメージが変わらないな」と感じました。ボリューム感のある白髪に柔らかなウェーヴがかかっています。
司会者が紹介します。「本来ならば先生とお呼びしなければいけないのですが、先生じゃなくさんと呼んで欲しいとおっしゃるので、そう呼ばせていただきます五木寛之さんです、よろしくお願いします」とそう紹介されて、ご本人が登場されました。
変わらない風貌に会場からため息がもれました。
講演が始まってすぐに、五木さん自身が「89歳になりました」とおっしゃいました。びっくりです。「五木寛之さんもそんなお年なんだ、その年齢で一時間半もの講演を立ったままでこなすなんて。これは91歳の母にしっかり伝えよう」と思いました。
自分が尊敬する人やファンである人物は、自分自身が一番影響を受けた頃からイメージが変わらない不思議な感覚があります。私にとって作家五木寛之さんはそんな人の一人です。
もちろん年を重ねていらっしゃいますが、印象が大きく変わらない素敵な年の重ね方だなと思って講演に聞き入っていました。
愛媛県松山市での講演だったので、俳句文化が盛んな街であると言う事を心にとめて俳句のお話をたくさんなさっていました。愛媛は「俳句文化が盛んだから文化的な街だと思う」とおっしゃっていただけたのが地元民としてはとても嬉しかったです。
五木寛之さんは福岡県生まれで、「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞を「青春の門」で吉川英治文学賞を受賞しています。代表作には「風に吹かれて」「朱鷺の墓」などがあります。
私はエッセイ「風に吹かれて」が好きでした。時代の風の中にこそ青春があり夢がある、そんなメッセージが若い頃の私の心を捉えたのです。
講演でお話を伺っていてとても人に気遣いがある方だなと思いました。観衆を楽しませることを常に考え、笑いをとても意識してお話を進められていました。
お話の中の印象的な事柄を記しておきます。
「今の世の中は悲しい事や切ないこと、理不尽な事などがあるけれど、その時々に自分自身の過去の楽しく幸せなシーンを思い出し、その思い出を生きる力にしてみてください」と言うことを伝えて下さいました。
「思い出ならば誰にでもある、際立った思い出でなくても楽しく幸せな、なんてことない思い出ならば過去にあるはず、その思い出をデフォルメして、思い出を明日に生きる糧にすると言うこと」をお話しいただいて、過去の自分に励まされることも大切なんだ思いました。
自分の過去の出来事に、生きる力を貰う、特に高齢者にとってはとてもいいメッセージを頂いたと思いました。
そして、私が拍手を送りたくなったのは、最後の15分で思いっきり聴衆を笑わせ講演を時間通りにびしっと締めた時です。
書くプロは喋りのプロでもありました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《生のお話は伝わり方が違うけんね》
コーヒータイムのばあばと。
「私も五木寛之さんのお話聞きたかったわい、前からハンサムで知的な人じゃなと思とったんよ」
「お話の内容、私の説明で分かった」
「私も今を楽しく生きるために、くよくよせんようにしよるけど、昔の楽しい事を振り返るんはええねー、私は俳句の楽しい旅を思い出すんよ、ええお話を聞いたねー」
「コメントが響いたよ」
「生のお話を聞くんは最高よ、文章を読むんとは伝わり方が違うんよんよね」
母は五木寛之さんの風貌から醸し出される雰囲気が素敵だと思っていたようです。卒寿を前にしていながら本当にダンディで素敵な方でした。
【ばあばの俳句】
城下町17文字で冬ぬくし
母は五木寛之さんが講演で俳句の街の文化の高さをお話しいただいたことに感銘を受けて、俳句と松山を詠みました。わずか17文字の中に様々な感情を切り取って詠むことができる俳句は本当に素晴らしい文学だと思います。
母も感動したことがあると17文字に表しています。言葉の中に映像や心が見えるのが素敵だなと思います。
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