幸せを運ぶてんとう虫
◇◇ショートショート
マリリンが働いているのは、特別な場所です。そこには幸せの使者がたくさんいます。彼女が働いているのは神様の宮殿です。
間もなく幸せが訪れる人に「もうすぐいい事がありますよ」と予感させるメッセージを伝えるのがマリリンのお仕事です。
宮殿では「幸せメッセンジャー」って呼ばれています。マリリンはその仕事を始めたばかりです。
神様から幸せのお届けリストを渡されます。
「マリリン、仕事には慣れてきたかな、今度は高原に行ってもらうよ」神様はいつも笑顔です。
そのリストには幸せのメッセージを届ける場所や名前、内容が書かれています。場所は愛媛県の久万高原町でした。マリリンは初めて訪ねるところです。
「お届け先は、麻里子ちゃん10歳」
リストには星印がしてありました。
「彼女は、お話が出来ないのか、耳が聞こえないんだね」
麻里子ちゃんにもうすぐやってくる幸せを届けるのがマリリンの役割です。
「行っていらっしゃい」と神様はマリリンを宮殿から送り出しました。
マリリンは、小さなてんとう虫になって、お仕事を始めます。
「ここは緑いっぱいの素敵なところ、田園がいっぱいだ、高原だから春の訪れが少し遅いんだね」マリリンは麻里子ちゃんの家を探します。
「あー、ここだ、白い家に広いお庭、あっ、女の子が水やりしてる、麻里子ちゃんだ」
お母さんが家から出てきて、麻里子ちゃんの顔を見ながら話します。
「手術の日が決まったよ、来月だって、良かったねー」
麻里子ちゃんは少し心配そうな顔をして、お母さんに手話で話しています。
「手術が上手くいくかどうか分からないでしょう、私、心配なんだ」
お母さんは麻里子ちゃんの顔を見ながら、
「大丈夫よ、先生が言ってたでしょ、今度は絶対に聞こえるようになるって」
麻里子ちゃんはほんの少し安心した顔になりました。
その時です、麻里子ちゃんが菜の花に止まっているてんとう虫を見つけました。
「お母さん、てんとう虫が菜の花に止まってる、てんとう虫って、幸せの使者だよね」
「ほんとだね、やっぱり、麻里子ちゃん大丈夫だよ」
てんとう虫のマリリンは麻里子ちゃんに見つけてもらうことが出来ました。
その日から手術が終わるまで、マリリンは麻里子ちゃんをずっと見守っていました。
麻里子ちゃんは毎日、菜の花を見にやって来て、「今日も、てんとう虫に会えたよかった」と言ってにこにこしながらマリリンを見ていました。
もちろん、麻里子ちゃんの手術は無事成功しました。
マリリンは宮殿の仲間たちを呼び寄せます。50匹のてんとう虫が手を繋いで病室の窓越しにハッピーという文字を描きました。そして麻里子ちゃんに聞こえるように「おめでとう」と声を揃えました。
その声は麻里子ちゃんの耳にしっかり届いたのです。
麻里子ちゃんはてんとう虫の仲間たちに「ありがとう」と声を掛け、手を振りました。
幸せのメッセンジャーは、きっといつかあなたのところにもやって来ます。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《虫は嫌いじゃけど、てんとう虫は好きよ》
「耳が聞こえるようになったんじゃろ、良かったがね、てんとう虫は幸せの使者かね、昔からてんとう虫は可愛いなーと思いよったんよ、私は見つけたらいっつも眺めよったんよ」
「私は白いブラウス着とったら、よく止まってきよったよ」
「私は虫はだいたい嫌いじゃけど、てんとう虫は好きなんよ」
母はそう言いながら突然歌い出しました。
「赤、青、黄色の衣装を着けたてんとう虫が・・・」
「私、この歌好きなんよ、てんとう虫のサンバ」私は思わず笑顔になりました。
爛漫の花に魅せられ歩み初む
母が満開の桜並木を目にして、幸せな気分で緩やかに歩き始める自分の姿を詠んだ句です。桃源郷のような美しい光景に身を置くと満たされた気分になりますね。桜のシーズンは心に染み入る美しい光景に出会うことが度々あります。
四季のある日本に生まれて良かったと感じる瞬間です。
最後までお読みいただいてありがとうございました。たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。
また明日お会いしましょう。💗