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王冠を食べた女の子
◇◇ショートショート
「みっちゃん、アイスクリームが溶けちゃうよ、早くおいで」
お姉ちゃんが大きな声で呼びますが、みっちゃんは、それどころではありません。
お菓子の山の中から好きなお菓子を選んで、ポケットの中にどんどん入れています。
「あー、もっとポケットがいっぱいあるお洋服を着ておけば良かったなー」と思いながら、目を輝かせて、お菓子選びに夢中です。
この日、みっちゃんはウエハースが敷き詰められた道をどんどん歩いて、お菓子の国にやって来ました。
お菓子のお城はチョコレートとマシュマロとクッキーで出来ています。
お城の周辺にはペロペロキャンディーが並んでいました。カラフルな渦巻きがとってもチャーミングです。
あまーい香りのお城に入ると王子様がいて、お菓子の部屋に案内してくれました。
「お菓子の国へようこそ、今日はこの部屋のお菓子をポケット一杯に持って帰ってくださいね、好きなお菓子を好きなだけどうぞ」
そう言われて、みっちゃんはポケットにお菓子を詰め込み始めたのです。
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再び、お姉ちゃんがみっちゃんを呼びます。
「みっちゃん、アイスクリーム、なくなっちゃうよー」
みっちゃんにはその声は届いていませんでした。
みっちゃんは大好きなミルキー味のキャラメルの裏にキャンディーのマークがあったので、お菓子の国の招待状が貰えることになりました。
箱の裏にキャンディーのマークを見つけた時のみっちゃんは、大はしゃぎでした。
「やったー、当たったー、お菓子の国に行けるよー」
その時から、みっちゃんは甘ーい香り包まれて、夢を見ていたのです。
お土産を貰って、大喜びのみっちゃんにお菓子の国の王子様が言いました。
「おめでとう、よかったら、僕の王冠も食べてもいいてすよ、僕の王冠はホワイトチョコでできています」
みっちゃんはその言葉を聞いてこう答えました。
「えー、いいんですか、本当に食べていいんですか」
王子さまはゆっくりとうなずきました。
するとみっちゃんは、王子さまの王冠にがぶりと噛みつきました。
その時、お姉ちゃんの声が聞こえました。
「あー、アイスクリームが溶けちゃった」
とっても大きな声でした。
みっちゃんはガバッと起き上がりました。
「あー、溶けちゃったのー」そう言って、みっちゃんはトロトロに溶けたアイスクリームを残念そうに見ていました。
みっちゃんは「こんなことなら、もっと夢の中で、お菓子に囲まれていれば良かったな」そう思いながらポケットに手を入れました。
するとポケットからキャンディーが一個出てきました。
夢の中でみっちゃんが食べたお菓子の中で一番美味しかったのは、王子さまの王冠でした。
みっちゃんは思いました。
「もし私が、王冠を食べなかったらお菓子をもっといっぱい持って帰れたのかも知れない、欲張らなければ良かったな・・・」と・・・・。
きっとそうだと思います。
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【毎日がバトル:山田家の女たち】
《みっちゃん王冠食べんかったら・・・》
「ポケットが多いんは便利なねー、お菓子もいっぱい入るし、ポケットがいっぱいある洋服着とったら良かったんかー」
「そんなことは無いと思う」
「夢で王冠が食べられたんは良かったんかなー、みっちゃんが王冠食べんかったらもっとええことがあったんじゃろね、欲張ったらいかん、程々にせんとね、感想はそんなとこです」
母は私のショートショートストーリーを聞きながらいろいろ考えてくれたようです。人間の欲を見せるのも程々にしないといけませんね。
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手土産のひよこを愛でて春兆す
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母が好きな銘菓は父の好物だった福岡の銘菓「ひよこ」です。その姿かたちがとてもかわいく味もスキだそうです。デパートなどで見かけると買って帰って仏壇に供えています。
母は友人から頂いたひよこを眺めながら、その愛くるしい姿に春が近い事を感じている。そんなコラボ作品です。
最後までお読みいただいてありがとうございました。たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。
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また明日お会いしましょう。💗