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おとぎばなしの手紙〈十通目〉世界と旅人

世界と旅人

 夏にあなたが島の夢をみたのは、ねているあなたの枕もとに、潮のからいかおりと、果物のれたかおりが、南風にのって運ばれてきたからです。

 かおりはあなたの鼻から頭のなかに入っていって、島の海でおよいだおもいでや、浜辺で星をながめたおもいでを、まるで七色の泡がはじけるみたいに、あなたの夢にひろげました。目がさめると、そのにおいのついたおもいでが、朝の光にさらされて、風に吹かれた煙のように、たちどころに消えてしまうのは、とてもざんねんなことです。

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775字
おとぎばなしの世界でみつけた、たのしいおはなしや、めずらしいおはなしを手紙にかいて、つむじかぜゆうびんで送ります。つむじかぜゆうびんはいいかげんなので、いつ届くかわかりません。渡り鳥の切手の代金をいただきます。

おとぎばなしの世界でみつけた、たのしいおはなしや、めずらしいおはなしを手紙にかいて、つむじかぜゆうびんで送ります。つむじかぜゆうびんはいい…

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