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おとぎばなしの手紙〈十通目〉世界と旅人
世界と旅人
夏にあなたが島の夢をみたのは、ねているあなたの枕もとに、潮の辛いかおりと、果物の熟れたかおりが、南風にのって運ばれてきたからです。
かおりはあなたの鼻から頭のなかに入っていって、島の海でおよいだおもいでや、浜辺で星をながめたおもいでを、まるで七色の泡がはじけるみたいに、あなたの夢にひろげました。目がさめると、そのにおいのついたおもいでが、朝の光にさらされて、風に吹かれた煙のように、たちどころに消えてしまうのは、とてもざんねんなことです。
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