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【hint.531】この二つを天秤にかけて
「善し悪しを考えずに、ただそのことに機械的に取り組んでみる」
こういう選択肢の重要性を、身をもって感じた出来事があった。
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現在、週に一度の頻度で訪問をして支援をさせてもらっているある高齢者。
毎週、必ず口にする言葉は、「体調がよく無いね」「食事もあんまり食べれないね」「やろうと思ってるんだけど、自分ひとりじゃやっぱり面倒くさくて外を歩くのはなかなかできないね」「だんだん衰えていってるね、やっぱり」など、まぁ見事なほどのネガティブ発言のオンパレードで、正直、毎週関わる前にこちらのメンタルを整えておかないと、そのパワーにのみ込まれてしまうから、とてもエネルギーを要する方のひとりなのですね。
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いわゆる「抑うつ状態」が続いている方で、「否定的自動思考」からの切り替えがうまくいかないよう。
なので、この部分への対策が重要だと考え、「マインドフルネス」的な時間を過ごしてもらおうと、いつも座っているソファの上で、姿勢を変えずに取り組める簡単な反復運動や、ちょっと移動して立位でできる筋トレを兼ねた運動などと併せて、ノートに、新聞の一節を書き写しすることを提案してみました。
いろいろと話し合った結果、書き写す部分は、その日の新聞を読んで「ここいいな」と思ったところにすることに決まりました。
この方、とても真面目で、もともとはきっと一生懸命な性格なんですね。
なので、「好きではないもの」に触れることはあまりしたくないのだと、そのような強い意思を依然としてお持ちでしたので、まずはご自身が「ここいいな」と思った部分を書き写していく、ということになったのでした。
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この書き写し、関わる僕の目的としては、書き写しに没頭してもらうことで、この方が「否定的自動思考」にのみ込まれてしまう時間を少しずつ減らしていけるといいな、というものでした。
しかしながら、何週間か経過しても、週に2〜3つの書き写ししかされていない。
たしかに、これまでよりは少しはいいのかもしれないけれど、依然として冒頭に挙げたようなネガティブ発言の頻度や内容にほぼ変化がない。そりゃそうだよね、一つの書き写しが5分ほどで終わってしまうのだから、「没頭できる時間の確保」としては全然機能していないわけです。
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今のご自身の心身の状態についての、僕の見立てと、この書き写しに込めた目的をあらためて共有しつつ、今の「『ここいいな』書き写しスタイル」は効果的でないので変更をしましょう、と提案をしたのでした。
具体的には、当初、一緒に話し合ってたどり着いた、楽しんで取り組めそうな感じのした「ここいいな」書き写しスタイルでは、心理的にストレスのかかるステップが多い(ルーペを使って記事を読む→「ここいいな」と思う部分を選ぶ→書き写す)ため、「毎日必ず書かれている欄の最初のひとまとまりを書き写す」というスタイルへの変更をしたのでした。
心理的にストレスのかかるステップが多いけど、「ここいいな」と思うものが書ける、というメリットをとるのか?
それとも、「善し悪しを考えずに、ただそのことに機械的に取り組んでみる」ことで、あまり好きではない文章に触れることにもなるけれど、取り組む際に心理的なストレスが比較的小さい、というメリットをとるのか?
「本当に大切にしたいものを大切にする」ために、この二つを天秤にかけて、前者から後者へと、スタイルを変更してみたのでした。
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するとどうなったか・・・。
これは、また後日。笑
本日は、お時間が来たのでここまでということで。
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さぁて、今日も頑張りましょ〜〜!
今日のあなたにも、本当に大切なものを大切にできる瞬間がたくさんありますように。