コラム6 回復期リハが包括される未来と今からできる対策(2)
このコラムは
⇒10年後(2030年)のために『今から』実践すべきリハビリテーション(1)10年後のリハ業界とは?
と合わせてお読みいただけると嬉しいです。
「回復期リハが包括される未来と今からできる対策(1)」で提案した、2030年の包括化される回復期リハ病棟にむけての対策について、ポイントごとに少し解説します。
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リハビリテーションの目的の明確化
2020年時点の回復期リハ病棟では9単位の内訳はについてはスタッフの配置人数に応じたものになっていると思う。言語聴覚士は少ないからすべての時間をSTが担当することはないよね。
だけど包括化されると、PT・OT・STの組み合わせ方を慎重に考える必要がある。
現時点での9単位の提供は包括化後は難しくなるからだ。おそらくトータル5~6単位くらいの提供になると考えている。
現行と比べて少なくなるであろう患者さんのリハビリテーションの時間を効率的に使ってリハビリテーションを実施するには、目的を明確にする必要がある。
何のためにリハビリテーションを実施するのかということの目標に応じてPT・OT・STの配分を決定することが必要になる。
そうして、担当するセラピストが立案する理学療法や作業療法の目標やプログラムなどにおいても、アバウトな目標設定ではなく具体的な目標に基づいたリハビリテーションの実践が必要になってくる。
個別と集団と自主トレの組み合わせを考えたリハビリテーション
包括化される、提供できる個別リハの単位数は減ると予想している。
だから、マンツーマンで提供するリハビリテーションでは目標やアプローチの中身を明確にし「マンツーマンでしか対応できない」サービスを提供する必要がある。
そうして、マンツーマンで提供する必要のない部分については集団でのアプローチとして提供することが求められる。
ここで想定している集団は10人位以上の多数でする体操や筋トレなどと、3~5人程度の少数で実践する調理実習やADL関連のリハなど作業療法士が退院後の生活を想定して行うようなアプローチだ。
マンツーマンでしかできないサービスと集団でもアプローチできることを分けることが必要。
だからこそ、リハビリテーションの目的を明確にするひつようがあるし、理学療法や作業療法においてもより具体的な目標を設定していく必要があるわけだ。
目標の明確化に対して『今』の回復期リハですべきこと
現時点の回復期リハ病棟では、当然ながら一人のセラピストが同時に複数の患者さんにサービスを提供することは違法です。
診療報酬算定しないなら可能だろうけどね。
だけど、目標を明確にすることは必要です。
今アプローチしているのは何を目標にしているのかということをはっきりさせることが必要。
そのうえで、アプローチの中身を
個別リハの時間にしかできないこと
病棟での自主トレ
介護・看護部門と協力して行うADLへのアプローチ
にきちんと分けて理学療法や作業療法などを展開することが【今】でもできるアプローチの方法だ。
病棟での自主トレなどは、退院間際に実施するものではなく入院当初から可能なものは実践することが必要です。
退院後の生活を考えると、病院で普段からやっていないことを退院後に実践することはありません。病棟での生活スタイルは退院後の患者さんの自宅での生活スタイルになります。
だから、個別リハの時間にきちんと自主トレの必要性を伝えたり、自主トレのプログラムを検討したりしながら、実践可能なメニューについては病棟で患者さん自身に行っていただき、個別リハでは個別でしかできないことに焦点を当てることが必要です。
包括化されて、小集団のアプローチが可能になれば作業療法士を中心に調理動作や更衣動作練習などのテーマに応じた対応ができればより良いものになるだろうと考えています。
地域リハビリテーションのノウハウの吸収
リハビリテーションのアプローチを分けて考えるという部分。
個別リハの時間にしかできないこと
病棟での自主トレ
介護・看護部門と協力して行うADLへのアプローチ
この考え方は特殊なものでも何でもありません。
老人保健施設の入所リハビリテーション、老健や診療所などで実施されている通所リハビリテーションなどでは行われていることです。
老健や通所リハ事業所などにおいては、セラピストのマンパワー的に回復期リハほどの個別リハ時間を確保できない。
だから、集団体操などは介護職員が実施するなどして個別リハの時間の確保しています。
トイレや食事動作へのアプローチについても介助方法の統一を図るなどして、リハ職と介護・看護職が連携して行うことが当たり前です。
おそらく、回復期リハ病棟のセラピストさんたちよりも老健や通所リハ事業所のセラピストの方が連携を意識していると思います。
だから、回復期リハビリテーション病棟を運営している法人内に老人保健施設や通所リハ事業所があるなら、そこで勤務している理学療法士や作業療法士、言語聴覚士とリハビリテーション部門の運営のstyleや介護・看護職との連携のあり方、集団体操やグルーブリハビリのノウハウについて学ぶ必要があります。
法人内になくても、近隣には老人保健施設や通所リハ事業所はあるでしょう。そういった事業所と連携しノウハウを吸収する必要がある。
そこで、回復期リハが包括される未来と今からできる対策(1)で提案した
法人内の介護保険サービスとの人材交流
地域包括ケアシステムの範囲内の事業所との業務提携
といったことが必要になってくる。
法人内に介護保険サービスを提供する事業所があれば人材交流や人事交流すればいい。法人内になければ、他法人の事業所と定期的な勉強会などを開催して、お互いのリハビリテーションについてのノウハウを学べばいい。
退院後の生活を支援している事業所から、より具体的に患者さんの退院後の生活の実態を知ることは、『今』のリハビリテーションの活かすことができるはずだ。
そうして、地域の事業所が提供しているリハビリテーションのあり方は、「包括された後のリハビリテーション」の提供の仕方のヒントになるはず。
このような関わりが、次の課題である「退院後の生活を想定したリハビリテーション」につながるのです。
退院後の生活を想定したリハビリテーションの実践
2020年現在の回復期リハビリテーション病棟のリハビリテーションと退院後のリハビリテーションの連携は不十分である。
しかし、前述したように地域リハビリテーションのノウハウを学ぶ過程の中で、きっと退院後のリハビリテーションの『今』を知ることができる。
回復期リハビリテーション病棟での生活と、退院後の自宅での生活は異なる。
だから、退院後の生活を想定したリハビリテーションが必要になる。
⇒コラム14「自宅復帰」の一歩先を目指した目標設定とアプローチを!
誰にでも設定できるような目標ではなくて、その患者さんに必要な目標を検討することが必要になってきます。
退院後のリハビリテーションをセットで提供する
上記のコラムでも書きましたが、リハビリテーションが1カ所で完結することはありません。
退院後のリハビリテーションとセットで考えることが必要になってきました。
収益という点でも前回のコラムに書いたように、病床数の限界が収益の限界なのです。
包括化されると9単位の提供は困難になるので、回復期リハ病棟を持つ病院の多くは「通所リハ」「訪問リハ」事業所をそれぞれ開始するでしょう。
9単位の提供が困難になるということは、9単位の提供を前提で雇用しているリハスタッフの人材が余剰になるということです。
そうなると余剰人員を効果的に活用するには、通所リハや訪問リハ事業に力を入れざるを得ないのです。
2020年でも維持期リハの外来リハが不可になった影響で短時間の通所リハ事業所を開始する病院さんがあります。
収益を伸ばすという点で、回復期リハ病棟だけの収益を考えるのではなく、
リハビリテーション部門の収益として「回復期リハ病棟」「訪問リハ事業」「通所リハ事業」をうまく回転させることが必要になってきます。
退院後のリハビリテーションも見通したリハ部門の運営ですね。
軽度の患者さんは、退院後に通所リハビリテーションの利用を検討する。
自宅退院にあたって在宅生活への適応に問題があると想定される患者さんには一定期間訪問リハの利用を検討する。訪問リハを使いながら、在宅生活にうまく適応できるようにアプローチし、生活が安定してきたら、通所リハに切り替える。
病状が不安定で医学的な管理が必要な患者さんには「訪問看護」の利用を検討する。
想定されるパターンはたくさんありますね。
このような視点を持った退院時の指導が必要になってくると考えています。
部門ごとのリハビリテーションで考えるのではなくて、もっと大きな視点でのリハビリテーション部門のコントロールを行うことが必要になってきます。
そういった人材の育成が急務だと考えています。
自分の部門のことだけではなくて、回復期リハ病棟のリハ部門、訪問リハ部門、通所リハ部門といった法人内のリハビリテーション部門をコントロールしつつ、患者さんの状態に応じてリハビリテーションを使い分けていくことが、2030年には必要になってきますよ。
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