≪活動と参加≫誘導尋問とADL脳から脱却
※2023年8月13日追記
このコラムをどなたでも全文お読みいただけるようにしました。
==ここから本文==
最近通所に関わるようになって気づいたことがある。そのいくつかは、ブログの方にも書いている。
活動と参加にアプローチするためには、利用者さんや家族さんとお話すること、やってみたいということを引き出すということについて書いていた。
ざっくりまとめると
活動と参加にアプローチしたいリハ専門職やケアマネさんの多くは
興味関心チェックリストを使ったり、「やってみたいことはありませんか?」というようなインタビューをしていることが多いでしょう?
僕もそうしてました。
だけど、そのようなインタビューに対して「活動と参加」に関する事柄で実践してみたいことを表現したり、伝えてくれる利用者さんってほとんどいない。
年間10人もいないと思う。
「やってみたいこと」「できるようになりたいこと」って聞いてみても具体的な返事がないから、次にインタビューすることって言うのは
ADL的な質問だろう。
着替えは一人でできますか?
食事は一人で食べれていますか?
お風呂は一人で入っていますか?
というような教科書的ADL項目に関して質問して、出来ていない事柄を確認し、それを当面の目標に設定するというものだ。
誘導尋問・ADL脳から脱却しよう
そんなインタビューで出てきた「できないことリスト」って言うのは、ほんとに患者さん自身がやってみたいことなのかっていうと決してそうではないでしょう。
それは出来ないことであって、取り組んでみたいことなのかどうかということは別の問題だと思います。
活動と参加へのアプローチが何においても優先すべきだとは思いません。
もっともっと基本的な運動や動作ということを向上する必要のある患者さんもいるからね。
だけど、ここ数カ月通所リハや通所介護事業所に勤務してみて感じたのは、
在宅にいる要支援や要介護1とか要介護2くらいのレベルでそこそこ自分のことは自分でできるような状態の利用者さんなら、もっと自分のやってみたいことに挑戦してみてもいいのではないか?
ってことだ。
利用者さんと話していても、ADLを目標にしたことのある利用者さんはいても、活動と参加へのアプローチを実践してもらった利用者さんは少ない。
すべては、その利用者さんを支援しプランやプログラムを立案すべき側の関係者が、活動と参加へのアプローチを実践せず、教科書的なADLへの関わりしか頭にないからだ。
そういった支援者の多くの頭の中はADL脳になっているわけだ。
利用者さんから「やってみたいこと」や「目標」を引き出せないから、自分の頭の中にあるADLに関する項目を誘導尋問的に質問して、じゃあ「とりあえずそれを目標にしましょう」っていうパターン。
典型的なADL脳による誘導尋問じゃあないかな。
そこから脱却してほしい。
目標設定のために、最近聞くこと
最近要支援や軽度の要介護の方に対して、通所や訪問の評価の場面でインタビューするようにしているのが
何人でお住まいですか?
家庭内での家事の分担はありますか?
病気やけがをする前に、分担していた家事はありますか?
今は手伝ってもらっているけど、とりあえず一人でやってみたいことはありますか?
家族から、手伝ってほしいって言われていることはありますか?
独居の人もいるので、
家事についてもっと短時間で早く実行してみたいものってありますか?
っていうことを聞いています。
「洗濯物が難しい」という返事が返ってきたら
洗濯機へのセットが難しいのか?
洗濯機から出すのが難しいのか?
洗剤の投入ができないのか?
干すことが難しい?
干した洗濯物を取り入れることが難しい?
取り入れた洗濯物をたたむことが難しい?
どこで躓いているのかということを確認して、そこを目標にしてはどうかということを提案します。
ADLのことだけではなくて、家事分担の話を聞き、そこから「つまずき」や「難しさを感じている」課題を細分化して話を聞くというパターンです。
なんらしかの、「家事分担」を任せられている軽度の利用者さんはいるんですよね。だからそこを確認しています。
経験の蓄積のこと
セラピストとしての経験や、患者さん自身が経験や体験していること、その患者さんに関わったりインタビューして得られたこと、などなど多くの経験をセラピストとして蓄積することの重要性について最近書きました。
軽度の利用者さんは「家事分担」されているということを最近学んだので、そのことについて必ず確認するというルーチンが僕の中に確立されたわけです。
じゃあ、重度の人はどうなんだってこと。
軽度利用者さんに比べると、「できないこと」が多い重度利用者さん。
さらに活動と参加へのアプローチは難しい。
だけどね、そういった利用者さんも分担していたであろう家事があったりするもんです。
重度の人にも家事分担の話を聞いたりします。
そうすると、家族さんが色々教えてくれたりします。
「昔はあんなことやこんなことをおじいちゃんはやってくれていた」
「最近やらなくなってしまったけど、じつはこんなんやってたんですよ」
って話題が出てくることが増えました。
食事に困ってませんか?
着替えできますか?
っていうようなADL脳に基づいた誘導尋問的目標設定の時には引き出すことのできなかった、対象者さんの生活像が引き出せることの回数が少し増えたんです。
軽度の利用者さんで得た経験を、重度の利用者さんへのアプローチでも活かせることがあります。
重度だから活動と参加にアプローチできないのではなく、アプローチした経験が少ないから、うまくいかないのです。
だから、軽度の利用者さんで積み重ねた活動と参加へのアプローチの経験を重度利用者さんに応用するのです。
ADL脳から誘導尋問した目標設定ではなく、利用者さんの経験や体験を応用した活動と参加へのアプローチをしてみてはいかがでしょうか?
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やまだリハビリテーション研究所
作業療法士
山田 剛
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