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乗り鉄系FPからの手紙(re:資産運用について)

拝啓、私は乗り鉄系FPです。

そしてこの手紙も鉄道に揺られながら書いています。

鉄道オタクにはその迷惑行為で世間を時々騒がせる「撮り鉄」を始めとして、「車両鉄」「模型鉄」等いろいろな「型」がありますが、「乗り鉄」は文字通り「鉄道に乗ることだけで快感を覚える」草食系のテツです。

そんな乗り鉄は、実は金融資産形成が上手な素質を持っていると考えます。

「茶道」や「華道」と同様に「鉄道」をたしなむ女性が増えればとの想いで「女子と鉄道」というエッセイ本を著した作家の酒井順子さんは、その本の「はじめに」次のようなことを綴りました。

「鉄道は移動という冒険を与えてくれるが、それはまったく先の見えないものではなく走るのは絶対に線路の上なので、冒険をしているという不安感と、行きつくところは必ず駅であるという安心感の両方を同時に得ることができるのが魅力的なのだ」と。

この感性は投資信託やETFなどを活用した「長期・分散・積立」ベースの地味目な投資スタイルでの金融資産形成に似ています。

すなわち、元本割れの可能性という不安感に襲われつつも「長期・分散・積立」というルールを守りさえすれば、例えば20年後の行きつくところには必ず資産増があるに違いないとの安心感も得ることができるからです。

同じ投資と言っても、個別株式などは自分で決めた経路と目的地に向かう自動車やオートバイでの旅であり、FXやCFD等に至ってはもはや旅というよりはスカイダイビングのような刺激を楽しむ趣味でしょうか。

乗り鉄が時刻表を見て次の旅行計画を立てていく過程は、投資家が金融資産運用の書籍や目論見書を読み込み投資商品を選んでいく姿にも似ています。

鉄道時刻表も投資信託の目論見書も、興味を持って接すると想像以上の情報がそこに書いてあることに驚かされ、予期せぬ次の方向性見えてくることすらあります。

一方で乗り鉄も積立投資も、作成した計画に基づき一旦スタートすると、その先にあるのは退屈そうに見える長い時間だけです。

実際問題として乗り鉄は車内で終着駅に着くまでの間に何をしているのでしょうか。

一部アグレッシブなタイプには、乗車してから何時間でも先頭車両の運転席横に仁王立ちして正面景色を眺め続ける人もいます。

しかし乗り鉄の多くは車窓からの眺めも楽しみつつも、読書をしたり居眠りをしたり、音楽を聴いたりとテツとばれないよう周囲に溶け込み、思い思いの時間を過ごしています。

そう、実は多くの乗り鉄にとって鉄道に乗ることは目的ではなく、その移動空間の中で自分だけの時間を確保するための手段なのかもしれません。

インデックスファンドなどに長期積立ベースで投資をすることも、その行為自体は目的ではなく、ファイナンシャルウエルビーイング達成の手段であるのと同じことのようです。

乗り鉄の腕の見せ所のひとつは幹線と支線を程よく混ぜた行程の作成にもあります。

「盲腸線(他の路線に接続していない行き止まりの路線)」の終点が、実は別路線の近隣駅までの徒歩圏内にあることを発見して乗り継ぎができた時の喜びはひとしおです。

この組み合わせの妙は、投資家のコアサテライト戦略、例えばインデックス型ファンドへの長期分散投資を核に、他のハイリスク・ハイリターン商品をサテライトとして絡めていくポートフォリオ構築を彷彿させます。

話が長くなってしまいました。

もうすぐ終着駅に着くようですのでこの辺りで筆を置きたいと思います。

敬具

追伸:

せっかくですので最後に「地方ローカル線での乗り鉄のコツ」についても、現役テツとして多少述べておきましょう。

日本の鉄道は大都市圏を除いて既に全国的に朝と夕刻の地元高校生たちのスクールバスとしての役割しか担っていないのが悲しき実態です。

ですから鉄道ダイヤでも平日の朝夕を中心に組まれており、その時間帯を逃すと次の列車まで数時間も待たなくてはいけないようなことも起こりますし、そもそも土日の運行本数は少なめです。

よって乗り鉄も効率的に移動するにはこの時間帯も意識した「早寝早起き」の行程作成が必要となります。

また、例えば豪雪地帯の路線で冬の週末に降雪に見舞われると、休校日なので除雪もせずに簡単に運休になることがあります。

「なるほど、では平日朝に」ということでも地元高校生たちのルーティンに迷惑をかけない配慮も求められます。

車内写真撮影などは論外ですが、その他にも「このシートは毎朝オレの指定席なのに誰だいコイツ」との視線を感じたら、そっと別の席に移動するようにします。

昨今の地方ローカル線廃止の流れの鉄板は「自然災害で線路や橋脚等の損傷→とりあえず代行バス→復旧費用の議論決裂→代行バス継続→もういいでしょ廃線で」というパターンです。

地球温暖化影響により大豪雨が日本中で多発し多くのローカル線が破壊される昨今、乗り鉄に残された時間は多くはないようです。

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