新年を迎えて丸い数字で日本のお金周りを見る
2024年を迎えて丸い数字で日本のお金周りの現状を見てみます。
日本の年間国家予算は約115兆円程度ですが、別途補正予算が組まれるのが常態化していますので、昨今は合計125兆円程度です。
また、国税とは別に社会保険料の徴収が年間75兆円程度ありますので、全部併せて日本は毎年約200兆円のお金を使っています。
その「使い道」と「集め方」を、税と社会保障の一体化をベースに整理してみます。
先ずは「使い道」ですが、最大項目は社会保障関連の支出です。年金55兆円、医療50兆円、介護を含む福祉その他で35兆円と合計年間約140兆円であり、超高齢化社会の進展により毎年増加傾向にあります。
なお、この社会保障への支出元の内訳には地方自治体が負担する部分もありますが、別途、ほぼ同額が国からの地方交付税としてありますので、自治体負担部分も日本全体でならせば、実質的に国が負担している社会保障費とみることができるでしょう。
200兆円から140兆円を差し引くと残り60兆円ですが、その約半分の約30兆円は国債費として過去の借金返済と利払いに充てられます。
200兆円 - 140兆円の社会保障費 - 30兆円弱の国債費 ≒ 30兆円
要は全支出200兆円の15%程度にてその他のすべて、すなわち公共事業費、防衛費、文教及び科学振興費、国土強靭化費、災害対策費、国内投資促進費ならびに物価高対策などのバラマキ補助金等を賄っていることになります。
ちなみにコロナ禍の一人10万円の定額給付金ですが、1億2千万人にばらまいて総額約12兆円の支出増でした。
次にこの約200兆円の「集め方」ですが、こちらも社会保障と税を一体化してザックリと見てみましょう。
先ずは社会保険料ですが、上述の通り約75兆円が徴収されていて個人と事業主がだいたい半分くらいずつ負担しています。
税収の方は消費税、所得税、法人税の3本柱を併せて70兆円くらいです。相続税などそれ以外の税収や他収入も計10兆円弱はありますので、合計80兆円としましょう。
200兆円 - 75兆円社会保険料 - 80兆円弱の税収他 ≒ 約45兆円が不足します。
よって政府は国債発行という借金をします。昨今は期初予算で35兆円、補正予算時に約10兆円という感じでしょうか。
先ほど国は毎年約30兆円の国債費を支出していると書きましたが、その一方で45兆円程度の新規国債を発行している訳ですから、毎年国の借金は積みあがり、その規模は既に1,200兆円を優に超えています。
日本国の借金はGDP比250%以上となり、他先進国と比較しても突出した割合(アメリカは日本の半分、ドイツは1/4程度)です。
しかし国家財政破綻の心配はありません。
何故ならば、国債残高の半分程度は日本銀行が引き受けて、国家の財政破綻リスクは既に中央銀行の信用リスク、端的に言えば日銀のインフレ制御不能リスクに移転しているからです。
日銀の国債引受残高は既に600兆円程度まで膨れ上がり、日銀バランスシート資産の約8割にも及びます。そしてその見合いの負債は民間金融機関の当座預金となりますので、お金はジャブジャブな状態です。
これではいくらインフレが進行してもお金は市場に溢れていますし、日銀本体の財務内容を著しく悪化させる短期金利の本格的な上昇操作は困難となります。
それでも一切心配はないという主張が一部には存在します。
それは自国通貨で発行する国債は「打ち出の小槌」なので、政府と日銀がより一体となり、更に大きな財政出動、すなわち国債をもっと大量に発行してお金をバラまけばいつか景気は必ず良くなり、問題は解決するという考え方です。
財政規律派的意見を持つ私は賛同しませんが、別の意味で日本はまだ大丈夫と考えています。
その根拠は2,000兆円を超える家計金融資産の半分以上が、主に高齢者層に保有されているという日本円現預金であることです。
上述の通り、日銀が短期金利を上昇させることは難しい状況です。
よって良くも悪くもインフレは継続し、日本円の価値が下がり続ける可能性は高いでしょう。
それは日本円というローカル通貨に共に基づく、国の借金と家計保有の円建て現預金双方の価値目減りによる相殺を意味します。
インフレにより家計金融資産の現預金を食いつぶして、国は事実上過去の借金を減らすことが可能なのです。
消費税率を1%上げれば税収は年間約2兆円増えるという試算があります。
しかし政治家としては、消費税率を15%以上にして財政再建を目指し選挙で落選するよりも、円の価値を毀損させながらもバラマキを続けて歓心を買う一方で、とりあえずは過去の借金の実質目減りをインフレ促進で狙う方が賢い選択なのです。
以上、現在進行中の日本のお金周りに関しての私見でした。
追記:本論旨を新NISAスタートに関連付けて書いた過去記事がこちらです。
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