「ねぇ、どうしてせんそうをしてはいけないの?」という質問への答えは…
まずは本の紹介
1932年 ある物理学者が心理学者に書簡を送ります。送る相手はジークムント・フロイト、送り主はアルベルト・アインシュタイン。20世紀を代表する知の巨人たちによる往復書簡になります。
また、本版は解剖学者の養老孟司氏と精神科医の斎藤環氏の解説つきです。
アインシュタインからの問いにフロイトは
アインシュタインは人間の本能的欲求が憎悪と破壊という心の病に冒されるのではという疑問に対し、フロイトは人間の攻撃性な性質を取り除けないとしながら、文化の発展を促すことで戦争の終焉へ向けて歩み出す…と返します。
文化の発展で本当に戦争はなくなるのか?
この書簡が交わされたのは1932年です。アインシュタインは国際連盟からの依頼で書いたものとされています。その後の世界はどうなったかと言えば、第二次世界大戦が起こり、戦後処理としての国際連合が発足しましたが、それでも戦争はなくなっていません。
ただ、文化についてはどうでしょうか。
どこまで受け入れられているかは置いておいて、インターネットにより、異文化に接する機会が急速に拡大していると思います。
加えてヒトゲノム解読をはじめとする生物としてのヒトの理解が進みつつあります。
1930年代にはなかった文化というか、新しい価値が生まれてきていることを踏まえると、新しい価値によって戦争を回避していくことはできないのかと考えたくなります。
戦争をなくす処方箋は?
おそらく生物としてのヒトを考えたときに、本能としての攻撃性を失わせるのはムリだと思います。ヒトも生物としての生存本能がありますから、むざむざと命を奪われるよう行動を取ることはないでしょう。
とするならば、戦争をしづらくする枠組みを考える方が無理が少ないのではと私は感じたところです。例えば対話による紛争解決でもよいですし、異文化交流でもよいですし、経済支援でもよいですし、逆説的ですが戦争に巻き込まれないようにするための手段をもつことだって取りうる選択肢だと思います。
ただ、20世紀の知の巨人でも解決できなかった問題を21世紀においても解決できないんだから、未解決問題にしておくのも手かなというのは凡人の為せる技かなと思いました。(了)