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【掌編小説】こっ、怖いんだよ
俺は今、非常に危険な状態にいる。 両腕を伸ばして乗せることができる肘掛けの付いた椅子に座らされ、太いゴムで縛られているのだ。 これから俺が受ける拷問は、体にも心にもダメージが大きい。 しかしこれは仕方ない事だった。
「ちょっと待って! 心の準備をさせてくれ」
すー、はー、すー、はー。
深呼吸を何度か繰り返すが、心臓は正直だ。ドキドキが止まらない。これが可愛い女の子を目の前にしているなら、どんなに幸せだろう。
細く鋭い針先が指先まで迫ってきた時、その恐怖に我慢できずに、思わず叫んでしまった。
「う、うわあーっ! ちょ、ちょっと待ってっ!」
大きなため息がした。 ちょっとバカにしたような、あきれ顔をされてるのも容易に想像できる。
「ちょ、ちょっと時間をくれないか? 少しでいい」
すると、貫禄のあるベテラン看護師が言った。
「 採血の患者さんはあなただけじゃないんですからね!」