茎田 みきゆ

書くことが好きなのでヒマがあれば書いてます。 掌編小説を主に書いてます。 いつかは本を出したいななどと、大それた夢を見ています(^^; あくまで夢です😃

茎田 みきゆ

書くことが好きなのでヒマがあれば書いてます。 掌編小説を主に書いてます。 いつかは本を出したいななどと、大それた夢を見ています(^^; あくまで夢です😃

最近の記事

【掌編小説】君の歌が聞こえる

マルキューの大型ビジョンに映った君に、僕は釘付けになった。 長い髪をかきあげ、風を受けて歌う姿は、とても気持ち良さそうに、幸せそうに微笑んでいた。 中学校の屋上で放課後、君は、長い髪をなびかせてフェンスの向こうに立って歌っていた。 それは少し悲しそうで、苦しそうで、でも楽しそうな歌声だった。 僕は、君に話しかけたら、フワリと向こうに行ってしまいそうで、ただただ君の後ろに突っ立って聴いているだけだった。 だから「ヒマなの?」と話しかけられた時は、とても驚いた。 まさか話しか

    • 【掌編小説】今際のきわに

      病室の患者さんが、今まさに旅立とうとされていた。 看護師として、もう何度もこのような場面には立ち会ってきた。この方もその中の一人で、末期がんの緩和ケアを行ってきた人だった。余命3ヶ月と宣告されていたが、冬を二度越して、ずいぶん頑張られた方だ。   主治医が心音を確認し、家族の方を向いて頷く。駆けつけた娘さんが一番に駆け寄り、膝を折って話しかける。 「おとうさん私よ、わかる?」 息子さんがその後ろから声をかける。 「オヤジ、みんな来たよ。わかる?」 奥様は二人の子供が話し

      • 【掌編小説】見えてるの?

        聞いてくれよ。 この間さ、嫁も俺も休日出勤で、しかも嫁は外回りで俺は事務仕事だったから、必然的に俺が子供見なきゃなんなくて、仕方なくコッソリ会社に連れてきたのよ。 まぁ、子供は大人しくしててくれたんだけど、情報管理にうるさいお局先輩に見つかってさ。ほらあの人子供とは言え、社外の人間入れることに、すごいうるさいじゃん? 「あら?」って言うから小言言われる前に 「あっ! 先輩にも見えました?  実は、俺むかしっから霊感強くて、たまーに憑かれるんスよー」 って言ったら、にっこり笑

        • 【掌編小説】こっ、怖いんだよ

          俺は今、非常に危険な状態にいる。 両腕を伸ばして乗せることができる肘掛けの付いた椅子に座らされ、太いゴムで縛られているのだ。 これから俺が受ける拷問は、体にも心にもダメージが大きい。 しかしこれは仕方ない事だった。 「ちょっと待って! 心の準備をさせてくれ」 すー、はー、すー、はー。  深呼吸を何度か繰り返すが、心臓は正直だ。ドキドキが止まらない。これが可愛い女の子を目の前にしているなら、どんなに幸せだろう。 細く鋭い針先が指先まで迫ってきた時、その恐怖に我慢できずに、思わ

          【掌編小説】いつか、どこかで、また。

          広く何もない道を歩いていると、見覚えのある後ろ姿がみえた。 「この道はどこに繋がっているのでしょう?」 と、聞いてみた。 その人は振り向くこともせずに「さぁ?」とだけ言った。 (なんだよ、話しかけてるのに、振り向きもしないなんて、失礼な奴だな) 僕はそう思った。 声が若かったので、礼節を知らないなんて、親の教育がなってないなーーなどと思いながら、来た道を戻った。 しばらく歩いているとまた、人が立っていた。 「すみません、この一本道のほかに道は無いのでしょうか」と、その人に聞い

          【掌編小説】いつか、どこかで、また。

          【掌編小説】モブ男のつぶやき

          僕はいわゆる『モブ男(お)』だ。 モブ男とはつまり《群衆や大衆の中の一人 。大勢の中に紛れて目立たない人》だ。 何の取り柄もない。だから目立つこともない。下手したら存在すらも忘れられているような人間だ。   だから、例えば昨日、いつものようにひどく混んでいる電車の中で、何かモジモジしていた女子高生に違和感を感じて、満員の人の間を嫌な顔をされつつも移動し、チカンにあってたことをつきとめ、その不届き者の手を思い切りつねってやっても誰も気付かない。 例えば、僕は少しポッチャリ気味

          【掌編小説】モブ男のつぶやき

          【掌編小説】100回目のプロポーズ

          「目が覚めましたか」 一人暮らしの俺の家に知らない女がいた。昼寝をしていた隙に上がり込んだらしい。鍵をかけ忘れていたようだ。 それにしても見たところ17,8の年頃の女性が、知り合いでもない独身男の家にのこのこ上がってくるなど、もっての他じゃないか。 自分にこんな娘がいたら、張り倒してるところだ。 「こんなとこで寝てたら風邪引きますよ」 良く見るとなんだか知ってる気もする。笑顔の可愛い…ほら、名前なんだっけ? 昔、一目惚れしたあの娘の名前は…そうだ『キミ』ちゃんだ。 「どう

          【掌編小説】100回目のプロポーズ

          【掌編小説】 さよなら人類

           いまや地球は、すっかりカンガルーに支配されてしまっていた。筋トレもしていないのに、その屈強なカラダとジャンプ力で勢力を拡大したのである。     初めての犠牲者は飼育員だった。だか、飼育員もただのほほんと世話をしていたわげではない。  彼らの驚異的な破壊力のキックには気を付けてはいたのだ。   だがある時油断した。 うっかり気をぬいていて、後ろから強烈なキックをくらいダウンした。 すると彼らは飼育員の腰にぶら下がっていた鍵を奪い脱走した。    警察や地元の消防団が、彼らを

          【掌編小説】 さよなら人類

          掌編小説 「2020戦争」

          戦争が起きた。 どこの国がどこを目標に攻撃したのかはわからないーーが、瞬く間に戦火は広まった。  敵の攻撃から逃れるため、人々は息を潜めて暮らさざるをえなくなった。 日本はおろか、各国の防衛軍など全く役に立たない。  世界の首脳陣たちも戦争の経験などほとんどない者の方が多く、右往左往するばかりで鎮静化の方法がわからない。 それどころか責任の押し付け合いばかりしていた。    人々の暮らしも荒れはじめ、食糧や生活用品が不足し、買い占めや盗難、あるいは高額で売りつけるような輩が

          掌編小説 「2020戦争」