用途に応じてお箸を使い分ける感覚って、いいですね。
ヤマチクのお箸の「使い手」さんの声をお届けするnoteマガジン「竹のお箸のある暮らし」。
ヤマチクは、熊本の山奥で「竹の、箸だけ」を58年間作り続ける小さなものづくり企業です。
今回お話を伺ったヤマチクユーザーさんは、葛布から帯を作る「雪草 / Sessou」こと渡邊志乃さんです。
葛布(くずふ)とは、植物の「葛」から繊維を取り、糸にし、織られた布のこと。日本における葛布の歴史は古く、古墳時代にまで遡るといいます。
そんな伝統ある葛布を使って、札幌に自生する葛から着物の帯地を織る渡邊さん。日頃からヤマチクの竹のお箸を愛用してくださっている理由を伺うと、
「ヤマチクの、“竹の、箸だけ。”というキャッチフレーズに釘付けになったのが、最初のきっかけでした。実は、「〜だけ」という部分、私も同じなんです。制作しているのは、“葛布の、帯だけ。”だから「それだけ」って、書いてあると惹かれるんですよね(笑)」
葛布を使った織物を始めた当初は手広く制作を手がけていたそうですが、今では「葛布が持つ独特の光沢を、もっとも活かせると感じたから」と、帯作り一本で制作を続けていると言います。
今回は、ヤマチクのお箸と出会ったきっかけ、お箸の使い心地や、ものを選ぶ基準、作り手としての環境への配慮など、日頃からヤマチクのお箸を使ってくださっている渡邊さんの背景にある物語をのぞいてみました。
用途に応じてお箸を使い分ける豊かさ
ヤマチクのお箸に出会う前は、自分に合うお箸がなかなか見つからなくて、色々なお箸を試して彷徨ってたんです。たくさん種類のあるお店に足を運んだりもしたのですが、女性用のお箸になるとやたらに可愛らしい見た目だったり、サイズが小さかったり。なんかこう、欲しい!と思えるものがなくて。
そんなときにネットで検索して見つけたのが、ヤマチクのお箸でした。細身のお箸が好みなので、目に入った『エレガント』に惹かれて購入しました。実際に使ってみると、すごくよかったです!
持ち手は丸く細く繊細なのですが、徐々に四角になってコロコロ転がらないよう加工されていて、でも先端はシュッと細い。掴みやすいですし、使いながらエレガントな気持ちになれる名前の通りのお箸だなと思います。すごく気に入っているんです!
お箸って毎日使うものだから、毎日うきうきした気持ちで食事をするのか、残念な気持ちになるのか、その積み重ねって大きいなと感じています。
あと調理でいうと、『パスタ箸』も愛用していますよ!適度なざらつきがあって麺も掴みやすいし、ゆったりと鍋の中でかき混ぜやすいです。手の感覚が、お箸にそのまま伝わっているような、手の力じゃなく、お箸の力で混ぜられている気がしますね。
あと『野・菜箸』もお気に入りです。だじゃれが大好きなので「や・さい箸」ってネーミングがいいなぁと(笑)。先が細いお箸なので、我が家では盛り分け用として使っています。
ヤマチクのお箸に出会うまでは、なるべく洗いものを出さないように一本で全部まかないたい!と思ってました。以前は、パスタの油炒めも、茹でも、同じ菜箸を使っていたんです。
でも、用途に応じてお箸を使い分ける感覚って、いいですね。
気持ちが豊かになるというか、うまく言えないんですけど、分けることの豊かさみたいなのがすごく素敵だなと。やっぱりその所作ごとに適したものの作りがあるのかな。今回はそれをすごく教わりました。
葛布の帯、だけ。を作るから「竹の、箸だけ。」の奥深さがわかる
実はヤマチクを選んだのには、他にも理由があるんです。
「竹の、箸だけ。」っていうキャッチフレーズ。
それにもう、釘付けになってしまったのが本音です(笑)。「それだけ」っていうのが好きなんですよ。
私自身、北海道・札幌市に自生する葛から、着物の帯地を織り販売しているのですが、
葛布にまつわる発信やオンライン教室などは行いますが、制作は「帯だけ」にしてます。
最初のうちはいろいろやってみようと試行錯誤したときもあったんですが、あれこれ手を出してエネルギーを使うくらいなら、帯を突き詰めようと思って。
もともと横に広く展開させていくのが苦手な性格なのもありますが、一つのことを狭く長く突き詰めることで広がる奥深さもありますよね。ひとえに着物や帯と言っても多岐にわたりますし、やればやるほど知らないことが出てくる。
なのでヤマチクECサイトで「竹の、箸だけ。」と見たときは興奮しました。きっと59年間、竹の、お箸だけ。を突き詰めてきたからこその奥深さがあるんじゃないかなと。
その潔さに惚れました。
作り手の意思が伝わると、いい買い物をしたな!と思える
身の回りのものを購入するときは、デザインや色が気に入るかどうかはもちろん、背景やコンセプト、どんなところを目指して作っているのか?といった作り手の意志は確認するようにしています。
私はスキーや山登りが好きなので、特にアウトドアウェア・スキーの道具を買うときは気にしますね。流行りに乗ったものづくりではなく、長く使えるデザインなのか。繊維製品に対する考え方はどうか、など。なるべく考え方に共感できるものを使いたいです。
あ、そうそう。アウトドア用品ではないのですが、最近いい買い物をして。『すすむ屋茶店』の急須は、買ってよかったなと感じています。
最高の日本茶体験を届けたい。と掲げている会社で、Webサイトのストーリーにも目を通したのですが、お茶に対する並並ならぬ思いが伝わってきましたし、美味しいお茶の淹れ方も丁寧に書いてあるんです。
実際に使ってみると本当に美味しくお茶が淹れられてびっくりしました。やっぱり良いものは全然ちがうなと。気持ちも、ちがうのかもしれませんね。
ヤマチクもやっぱりそこは共通していて、使い手が心底楽しんでお箸を使えるシチュエーションを真剣に考えて作ってくれている。それを感じるものづくりには、惹かれます。
まずは個人の範囲から、無理のない循環を作れたら
ものづくりは暮らしを豊かにしてくれるなと思う一方で、消費と生産のバランスは、一人の作り手としてももどかしさを感じています。
私は着物の帯を作っていますが、世の中にはすでにたくさんの洋服が溢れていて、毎年大量に破棄されていく。服のマッチングがうまくいけば、全世界の人が洋服を買わずに暮らせるんじゃないかってくらいですよね。
そんな状況でも、生活する上で新しいものを買う必要はどうしても出てくるし、好きな帯も作り続けたい。自分の中でも未だに矛盾を抱えていて、難しい問題だなと思うんです。
でも一つ大事にしているのは、まず私自身が無理のない持続可能な生産と消費の循環が生み出せているか?ということ。
葛布の帯の制作を本格的に始めた頃は、商業的な側面としてなるべく年間生産数を増やし収入も増やさねば!と強迫的に考えてたところがあったんです。
でもやっていくうちに、年間で採れる葛の繊維の量・布を織れる量は6本か7本とだいたい決まっていることに気づきました。そのとき葛が育つ自然のリズム、自分が織れるリズム、そういう与えられたものに合う量っていうのが、きっとあるんだろうなと思ったんです。
なのでそれ以上は、無理して織るのはやめました。そこから逸脱しないように作っていこうと。
嬉しいことにお客様の中には、10年、20年といった長い目で使うことを考えてくださる方が多いです。だからこそ、自分で生産したものは作って終わりではなく、廃棄するところまで責任を取りたい。
布が劣化した際には、持ち主様ご自身でパッチワークなどで補修して使っていただいたり、別のものに仕立て直して使っていただいてもいいですし、布として最後まで使い切ったあとは土に還る素材しか使ってないので、細かく切ってコンポストに混ぜても大丈夫なくらいです。
お客様には、もし扱いや処分に困ったら私のところで引き取ることもできますので、ご相談くださいとお伝えしています。
地球規模の環境問題を考えることも大切ですが、小さいですがまずは個人の範囲から無理のない循環を作れたらと思うんです。葛布の帯の存在を、生き方や暮らし方、ものの捉え方をちょっと変えるようなアイテムとしても、興味を持ってもらえたらすごく嬉しいです。
でもそのためには、やっぱりいいものじゃないとだめなんですよね。
長く使ってもらうためには、耐久性があり、柄も気に入ってもらえ、愛着持って使ってもらえる、いいものを作らなきゃなって。ぐるぐる巡って本質に戻って、今日もまた葛布の帯づくりに励んでいます。
聞き手・執筆/貝津美里
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食事用、調理用に、竹のお箸を愛用してくださっている「雪草 / Sessou」こと渡邊志乃さん。素敵なエピソードをありがとうございました!
▽渡邊志乃さん愛用・ご紹介してくださったmyヤマチク
●野・菜箸
トマトやキュウリ、ニンジン、ダイコン、ナス。
お野菜をイメージした菜箸。
その名も「野・菜箸」。(すみません、ダジャレです。)
あえて透け感を出して「土っぽさ」も表現しています。
持ち手も程よい太さで、軽くて扱いやすいです。
箸先も四角に仕上げているので、「すべり止め」がなくても、食べ物がすべりません。(ネーミングはすべってますが…。)
長さ:30cm
塗装:アクリル塗料
※食器洗浄機のご利用は避けてください。
大幅リニューアル!!!
「持ち手は太いほうが好きだけど、手が小さいからちょっと扱いにくい。」
そんなお客様のご要望から、このエレガント箸は生まれました。
持ち手の太さは残しつつ、指を添える部分を細くくびれさせることによって、女性の手にも馴染みやすいようにしました。
そんなエレガント箸が、生まれ変わりました!
使う心地をそのままに、現代の食卓にもピッタリな明るいカラーバリエーションをご用意しております。
ヤマチクにしか作れない持ち心地を、ぜひお試しください。
長さ:23cm
※食器洗浄機のご使用は避けてください
●パスタ箸
パスタを茹でたり、和えたりするためのお箸です。
一流シェフたちのご要望にお応えして開発しました。
とても軽いので、混ぜている時に手が疲れません。
箸先を丸くしているので、麺を傷つけません。
名店で使われている逸品を、ぜひご自宅でもお使いくださいませ。
※長さ:33cm
※無塗装仕上げ
▽ヤマチクのお箸って、どんなお箸なの?(ECサイトはこちら)
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