【感想】くもをさがす【西加奈子】
※このnoteは一部ネタバレを含みます。
※未読の方は下記リンクからご購入してからの閲覧をオススメいたします。
はじめに
西加奈子さんと言えば、2015年に「サラバ!」で直木賞を受賞し、著書に「さくら」「i」「夜が明ける」などがある作家だ。
この方の作品は、言葉で表すのが難しい人間の心を分かりやすく文章で表現されていて、とても読みやすいので私もいろいろと読ませていただいている。
また別で紹介しようと思うが、私のオススメする西加奈子セレクションのリンクも記載しておくので、そちらもぜひ一度読んでみてほしい。
概要
さて、本題に移っていくが、本書は著者である西加奈子さんががんを患い、治療し、生きていく、ノンフィクションの作品だ。
本書は時系列順に話が進んでいき、ところどころに当時起きた事件や、当時著者が読んでいた作品が紹介されている。
がんの治療の期間バンクーバーに住んでいたようで、バンクーバーと日本の文化の違いも感じることが出来る。
たまに関西弁のカナダ人が出てくるのが面白かった。
感想
本書を読み進める上で、何か感じたことがあればメモを取りながら読み進めており、本書の文章をいくつか抜粋して紹介させていただく。
1
「身体的な特徴で、自分のジェンダーや、自分が何者であるかを他者に決められる謂れはない。自分が自分のことを女性だと思ったら女性だし、男性だと思ったら男性だし、女性でも男性でもどちらでもないと思ったら、女性でも男性でもない。私は私だ。「見え」は関係がない。自分が、自分自身がどう思うかが大切なのだ。私は、私だ。私は女性で、そして最高だ。」
本書では何度も、LGBTQIA+や個人の自由について、著者の意見が述べられている。
最後の言葉が素晴らしいと感じたので、この部分を抜粋した。
私は著者の考えに賛同したい。
昨今話題となっているLGBTQIA+の考え方、周囲の目があり、まだまだ制約があると感じている。
しかし、人間一人ひとり違っていて、それぞれが個性だと思っているので、他人からの評価や見え方ではなく、自分自身がどう思っているかが大切なのではないか。そのような考えを尊重すべきでないか。
私はそのように感じた。
東京にはジェンダーレストイレが誕生し、取り組み自体は素晴らしいと思った。しかし、本来の使用用途ではない利用が目立っているニュースを見て、日本で受け入れられるのはまだ先になりそうだと感じた。
私自身は心も体も男で、性的思考は女性だが、LGBTQIA+も当たり前な差別や偏見などない平和な世の中になってほしいと願っている。
2
「滞在中、私はずっと、「何か」を提供され続けていた。東京が特別なことは分かっている。でも、こうも何かを提供され続けると、頭が混乱した。とにかく刺激に対して、休む暇がないのだった。そしてそれらが、狭さから来ていると、私は徐々に思うようになった。」
著者がバンクーバーから日本に一時帰国した際に感じたことである。
これについても本書で何度か似た内容が取り上げられていた。
私は今は福井県の田舎に住んでいるが、一時期首都圏に住んでいた時期があり、その時に似たような感情を抱いていたが、そのときはうまく言語化できなかった。
本書で何度も取り上げられていて、私の感じていた不快な思いはこれだ!と自分の中で一人納得した。
都会に住んでいると嫌でも目に入る広告。
電車に乗ると目につく脱毛や整形の広告。
街を歩くと目にするブランドや食品の数々。
興味のないコンテンツを一方的に提供され続けて、当時の私は何もしていないのに謎の疲労に見舞われていた。
今になって思えば、それらの自分にとって不要なコンテンツが街中にあふれていたからだと納得していて、それらに触れる生活から脱却できて私は幸せである。
現在は田舎生活で自家用車に乗り、テレビやSNSは必要最低限に抑えることにより、それらの私にとって不快な広告は目につかなくなった。
3
「SNSの発達のおかげだろう。世界中に散らばっていた美しい瞬間に、ワンクリックで立ち会えるようになった。私はその進化に、心から感謝している。そして同時に、こうも思うのだ。
こんなに美しい話を、気前よく私たちに分け与えてくれなくていいのに。
それはあなたの、あなただけの美しい瞬間ではないのか。」
昨今SNSを開けば、どこかの知らない人の美しい瞬間を共有できる。
俗にいうバズっている状態だ。
この考えは自分にはなかった。
自分も幸せエピソードがあればどこかの誰かに共有したくてSNSに投稿していただろう。
この考えは素敵だと感じたので、今日から日常生活で実践する。
さいごに
noteやYouTube、ブログなどで読者の皆さんが気になっている本について分かりやすくまとめている記事が多くあるだろう。
このnoteもその一つかと思う。
しかし、あえてnoteでは取り上げていない内容もあるので、気になった方、普段本を読まない方でも、一度手に取ってみてぜひこの本を読んでみてほしい。
もし既に読了済みの方は、本書の感想をコメントしてほしい。
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