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大雪日和 -冬から春の風景-

時季や時間で移り変わる大雪山系の景色。今回は、厳冬期の大雪山の様子と6月の風景を紹介します。


一年の約半分は氷雪に閉ざされる大雪山。
厳冬期は、近づく機会が極端に限られる。
最高峰の旭岳の標高は2,291mであるが、本州の3,000m級の山と同様の環境ともいわれている。ただ天候に配慮し、十分な装備で登れば、心を揺さぶられる光景に出会える場所である。

『大雪日和』では、これまで出会った大雪山の景色を中心に紹介する。
まずは、厳冬期の大雪山の様子と銀泉台や大雪高原温泉の山開きである6月の風景を紹介する。

■厳 冬

2020年1月。10時にすがたみ駅を出る。
瞬間的に青空が見えることはあるが粉雪が舞い、目の前にあるはずの旭岳の山容はまったく感じられない。
視界の狭い雪原は、どこまでも続くように感じる。
ただ、前日までの風は収まり、30mほどの視界はあるため、姿見の池まで進むことにする。
スノーシューを履いていても膝上まで潜り込む。
時折、雲間から青空が覗き陽射しがとどく。
ふわふわの雪原の陰影とちりばめられた氷のきらめきが美しい。
それも束の間。また境界のない雪原に。
姿見の池を過ぎても雪が深い。急登の斜面にはアイゼンが適しているが、もうしばらくスノーシューのまま進むことにする。依然として風は穏やか。

8合目を越えると視界が広がる。見上げた空は真っ青。
いままで雲の中を歩いていたのだ。シュカブラ(風雪紋)やエビの尻尾(岩石等に着氷・着雪している造形)に魅せられる。
空と雲の境界がほんのり橙色に染まっているのは、ゴーグルのせいかもしれない。

地獄谷に向かって伸びるエビの尻尾。左側の稜線が登山道。(2020年1月13日)

12時過ぎに登頂。
山頂標識には巨大な雪の塊が地獄谷に向かって成長していた。
ただ、“旭岳”の文字は確認できる。先行者が削り出したのだろう。

山頂からは表大雪が一望できた。
6月から10月に何度も歩いた峰々。
尾根筋は強風のせいか、それとも雪が少ないからか山肌が覗く。
快晴だが気温は氷点下19度。
1月の大雪山に生き物の気配は感じられない。

旭岳の頂上からの表大雪の冬景色(2020年1月13日)

■凍てつく岩塊

6月初旬、旭岳の頂を経由して白雲岳を目指す。
すがたみ駅を降り、曇り空の中を進むとすぐに雪原が広がる。
ところどころの木々は雪をはねのけて起き上がっているが、春というよりは冬が終わったという感じ。

姿見の池からの登山道に雪はなく、13時に登頂。
ただ、ガスに覆われ眺望はゼロ。
登ってきた登山道とは逆に頂から数m先の裏旭側の斜面は真っ白。
踏み入ると緩んだ雪に腰まで沈む。25kgの冬装備を背負ったまま体勢を戻すのに苦労する。
裏旭のキャンプ指定地では一張り分の地面が見え、後は雪の中。
ザックを腰ベルトで支えていても肩に食い込む。
「今日はここまでにしようか」と頭をよぎる。

御鉢平の稜線に出ると残雪とぬかるむ登山道が交互に続く。
時折現れる晴れ間に励まされながら歩を早める。
北海平の登山道は雪に隠れ、周りの景色と記憶を頼りに進む。
白雲平に上がる雪渓の急登では途中から靴の食い込みが悪くなりアイゼンを装着する。
白雲平の雪は溶けていたが幻の湖はなかった。
山頂に向けた最後の斜面は雪に覆われていた。

山頂は目の前だがまもなく日没。白雲小屋に泊まる予定だったがガスに覆われた中を進むことは危険と判断し、雪上にビバークすることにする(指定地以外の幕営は禁止されていることは知っていたがやむなし)。
10cmのペグは意味をなさず、2本のストックとピッケルと三脚で代用し、雪で周りを固める。
陽が落ちると氷雪が舞いはじめ、しだいに風が吹き雪に変わる。
気温は氷点下5度くらいだろうか。
シュラフだけでは寒く、ザックに潜り込む。目が覚めるたびにテントから出て雪かきとテントの張り具合をチェックする。

朝焼けの景色を胸に秘め、日の出前に頂に向かう。
登頂直後に見えていた旭岳が徐々にガスの中に消えていく。
あっという間に青空の帯も見えなくなる。
見えるのは足下の凍てつく岩塊だけ。

それから1時間が過ぎたころ、視界が広がる。
上下に分かれた雲の間から大雪の山々が姿を見せる。

凍てつく白雲岳の頂上からの景色(2022年6月5日)

■大雪高原温泉ー緑岳

白雲岳を目指すには緑岳を経由するコースと高根ヶ原を経由する2つのコースがある。ただ、高原温泉線が開通したばかりの6月中旬は、ヒグマ情報センターが開館していないため緑岳を経由するコースになる。

緑岳登山口を出発してしばらくすると登山道の所々が雪が埋まっている。
夏は草が茂る登山道脇の斜面の雪は溶けているが、落ち葉の間から新芽が顔を出す程度。ただ、頭上を覆う木々の新緑がまぶしい。

一合目まで登ると背後の景色が開ける。忠別岳をはじめとする平らな稜線が続く景色が一望できる。雪渓と常緑樹の濃い緑と落葉樹の鮮やかな緑のコントラストが美しい。

1合目からの景色。たっぷり残った雪の斜面には新緑の森が広がる。(2020年6月19日)

さらに急登の樹林の中を進むと第一花園。といってもこの時期は雪原が広がるだけ。例年7月中旬にならないと地面は見えない。

陽射しを感じて視線を上げると雪原の先に新緑の森が広がる。
登山道は雪に埋まっており、このときだけは花園(雪)の上を歩くことができる分、目線が高い。夏とは違った景色が味わえる。

雪原の花園の先には広がる新緑の森に注ぐ光芒(2022年6月18日)

雪原の花園を越えるとハイマツの森が続く。木漏れ陽が漏れるハイマツの根元では、コミヤマカタバミやエゾイチゲが花開く。
視界が開けると緑岳中腹の森が広がる。その川筋の先には、高根ヶ原の稜線や忠別岳、さらにはトムラウシ山がつづく。
つづら折りのガレ場の急登を曲がるたびにこの景色が広がる。

緑岳の頂上直下のガレ場からの景色(2022年6月19日)

ガレ場では時折、エゾシマリスの駆け回り、ホシガラスが舞う。エゾナキウサギの鳴き声は、聞こえるが姿は見つけられない。ただ彼らの存在に癒やされる。
足下の小さな緑色の森をイワウメやミネズオウの花が彩る。ウラシマツツジは新葉とともに下向き加減の花を咲かせている。キバナシャクナゲも大きな花を開いている。
緑岳の頂上からは旭岳や白雲岳などの大雪の山々が一望できる。

緑岳の頂上からの旭岳と白雲岳(2021年6月26日)

■大雪高原温泉ー高根ヶ原

ヒグマ情報センターが開館した6月下旬から沼回りコースが利用できる。
すでに開館している大雪高原山荘の高根ヶ原側の客室からは、移り変わる山々の景色が一望できる。

尾根から降りてくる雲が月明かりに浮かび上がる(2018年6月25日)

日の出の時刻はずいぶん早い。
まだまだたっぷりと残る山肌の雪が朝陽に染まる。

忠別岳のモルゲンロート(2018年6月26日)

沼回りコース

ヒグマ情報センターを出発し、しばらく進んだ湿原には水芭蕉が咲いている。陽当たりのいい場所の水芭蕉の葉は別の植物のように巨大化し、その一部は押しつぶされている。
おそらくヒグマが座り込んで、食事をした後だろう。
沢にはエゾノリュウキンカの黄色い花が咲きはじめている。

登山道脇の湿原の水芭蕉(2020年6月21日)

えぞ沼は不思議な形で雪どけしていた。
八幡平で有名なドラゴンアイを思わせる。
新緑に囲まれた雪どけの沼は、大雪ブルーの空よりも深いブルーを湛えていた。

エゾ沼のドラゴンアイ(2019年6月23日)

三笠新道

大学沼に出ると目の前には、雪で白くコーティングされた絶壁がそそり立つ。アイゼンを装着し、絶壁と森の間の斜面を少しずつ標高を上げながら進む。雪渓の上にはたくさんの落石が転がっている。

夏場には涸れてしまう空沼は雪どけ水で満たされている。その先にはきれいな山容の緑岳が見える。このあたりから沼回りコースを外れ三笠新道に入る。

三笠新道はヒグマの活動が活発になる前のこの時期しか通ることができない。道といっても広大な雪の絶壁。春の陽射しのもとピッケルで安全を確保しながら慎重に登る。眼下には新緑の高原沼の大地が広がる。

三笠新道から望む高原沼の大地(2018年6月26日)

高根ヶ原

三笠新道を上った先が高根ヶ原である。高根ヶ原の広尾根には雪はない。
荒涼とした礫地と冬枯れの中に新芽が混じる草地が広がる。
湿り気のある地面には、ホソバウルップソウの群落。
絶壁の先には、トムラウシ山やその前衛の山々が一望できる。

氷河を思わせる巨大な雪の塊の先には忠別岳、そしてトムラウシ山(2019年6月23日)

トムラウシ山の反対側の雪渓の先には緑岳や白雲岳が見える。
視線を左に移すと旭岳が見える。

登ってきた三笠新道の先には緑岳(2019年6月23日)
イワウメの絨毯の先には旭岳(2019年6月23日)

■銀線台ー赤岳

銀泉台線は、例年、高原温泉線の数日遅れの6月中旬から下旬に開通する。
おそらく、銀泉台線の雪がなくなってから開通しているのだろう。

深夜の登山口

三国峠が雨でも銀泉台は止んでいることはしばしば。その逆もあるが、よほど天気が悪くなければ夜のうちに銀泉台に向かう。翌朝が楽なことが理由の一つだが、晴れていれば満天の星空を見ることができる。

車から出ると風がなければ自分以外の音はない。ヘッドライトの他には星明かりや月明かりのみ。時折聞こえるのは、動物たちの歩く音。ヘッドライトを反射する目は結構怖い。いざとなれば車に入る。

開けた斜面側に行くとうっすらと街明かりが見える。
三国峠の街灯は、天気のいいときはほとんど見えないが、濃霧に覆われているときだけほんのり灯っていた。

霧に包まれた街灯と一瞬の晴れ間から覗いた天の川(2022年6月30日)

朝の景色もいい場所だが、この時期はガスに覆われていることが多い。

登山道

赤岳登山口を過ぎて少し登ると紅葉で有名な斜面が広がる。
第一花園の登山道は雪に覆われており、急斜面のトラバース(横断)は先行者のトレース(踏み固めた足跡)がないと怖い。
雪渓のトラバースはここだけだが、赤岳に登頂するまでにいくつかある直登の斜面のすべてが雪で覆われている。雪渓の直登は登りやすい反面、滑落しないように注意が必要だ。

紅葉で有名な銀線台の斜面。登山道と第一花園は雪渓の下。(2023年6月25日)

雪渓の縁では、ウラジロナナカマドやダテカンバなどが芽吹き、枝先には蕾が膨らんでいる。その根元では、エンレイソウやショウジョウバカマ、エゾイチゲなどが咲いている。
第一花園からは天気が良ければ阿寒国立公園の山々が見える。

雪渓の第一花園の上段は雪どけし、木々が芽吹く(2018年6月25日)

駒草平や奥ノ平などの開けたところに雪はなく、ミネズオウやイワウメ、ミヤマキンバイなどが咲いている。

赤岳山頂

最後の雪渓を登ると礫地の尾根に出る。なだらかな尾根を数分歩くと目の前は赤岳山頂。山頂からは広大な景色の中に白雲岳、旭岳、北海岳などの山々が一望できる。

赤岳山頂からの眺望(2018年6月25日)

■白雲避難小屋

白雲避難小屋(=白雲小屋)からの深夜と早朝の景色は最高である。
夕景もいいが、この時期は夕方近くに雲が増えて雨になることもあり、きれいな夕焼けはあまり見られないように思う。

星 景

月夜もいいが、やはり南の空から北の空に伸びる天の川は美しく神秘的である。しかもこの時期は雪渓が山の形を浮かび上がらせてくれる。
意外にも白雲小屋から美瑛町の街明かりがはっきり見える。
帯広方面の街灯はほんのり浮かび上がる。

天の川が昇る時刻はアプリ等でわかるが、雲がかかっていては見ることはできない。山の天気は時々刻々と変わるため、目を覚ますたびに空をみて、星が瞬いていたら外に出る。夕方、空が雲に覆われても、雨が降っていてもチャンスはある。

この日も目が覚めるたびに空を見る。何度目か覚えていないが、目が覚め、時計を見ると23時半。外を覗くと星が瞬いていた。
夕方までの雲に覆われていたことが嘘のような景色。
ベンチに横たわり空を見上げると夢見心地。
流れ星は一瞬で消える。何度も。

トムラウシ山から伸びた天の川と街明かり(2023年6月24日)

トムラウシ山から伸びた天の川が北の空につながる。
天の川の右には、アンドロメダ銀河がくっきり。
慣れてきた目に山肌の雪渓が描かれる。

トムラウシ山から伸びた天の川が北の空につながる(2023年6月25日)

朝 景

大雪山の朝は早い。午前3時には明るくなる。
星景を楽しんだ朝は起きるのが辛いが、日の出前の景色ははずせない。

午前3時半。空に雲はないが山々は雲海に包まれている。
雲海は西から東にゆっくり流れている。
高根ヶ原を超えた雲海が雪渓の谷にゆっくり流れ込むと雲海の層が少しずつ薄くなる。その雲からトムラウシ山が現れると同時に上空が薄紫に染まる。

雲海と染まる空(2020年6月21日)

白雲小屋から高根ヶ原側に下るとすぐの登山道は雪に埋まっている。
6月とはいえ、朝は氷点下になる。雪は堅く締まっているため緩やかな斜面でも足下に注意しながら歩を進める。

高根ヶ原に続く雪渓(2020年6月21日)

見通しがいいときはいいが、ガスに覆われているときは迷いやすい。そんなときはスマホのGPSが頼りだが、雪渓の境目を歩くと登山道は見つけられる。1ヶ月後にはこの雪は消え、花畑になる。

■白雲岳

白雲小屋から白雲岳の山頂までは約1時間。
宿泊拠点を確保し、雨さえ降ってなければ必要な荷物をアタックザックに詰めて白雲岳の頂上に向かう。ただ、頂までの登山道は魅力がいっぱい。

白雲分岐までの登山道脇には木々が芽吹き、ミネズオウやイワウメの花が満開を迎えている。白雲分岐から白雲平までのガレ場では、エゾナキウサギやエゾシマリスに会える。動物たちとの一期一会を優先し、登頂の時間は気にしない。

頂につづく最後の急斜面の岩場は雪に埋まっており登ることはできないため少し大回りして雪渓を登る。山頂標識の先の岩に立つとゼブラ模様の雪渓が目の前に広がる。一番高い山は旭岳、その右には熊ヶ岳や御鉢平を囲む大雪の山々が一望できる。

雪渓のゼブラ模様が氷河を思わせる(2021年6月26日)

視線を左に向けると高根ヶ原や忠別岳、その先にトムラウシ山や十勝連峰が連なる。

夕 景

15時を過ぎると山頂に登ってくる人はほとんどいない。
眼下の広大な大地をぼーっと眺めていると「オオカミが出てくるんじゃないか」と思うことがある。何度となく眺めているが、ヒグマが歩いているところすら見たことない。この時期は、エゾナキウサギの声が時折響く程度でエゾシマリスも姿を見せない。

日没の直前まで白雲岳の頂上で過ごす時間がお気に入りだ。ただ、この時期は夕方からガスが湧きはじめることが多い。それでも雨や雷がなければ、ガスが晴れる時を待つ。足下が見えるうちに白雲小屋に戻りたいため、リミットは日没時刻の30分前と決めている。ガスが晴れそうもないと感じたら早々に撤退する。

この日は17時半にガスが晴れたかと思うと雲間から漏れ出た陽光が麓に注ぐ光景に出会えた。遠くにそびえるのは富良野西岳だろうか。十勝岳の噴煙がなびいていた。

雲に隠れた太陽から漏れ出る陽光が麓に注ぐ(2023年6月23日)

旭岳に日の沈み、星が瞬くまで眺めていたいと思う気持ちをこらえ、頂を後にする。

朝 景

6月下旬の日の出時刻は3時半。白雲岳の頂上で日の出を迎えるには、2時半に白雲小屋を出発しないと間に合わない。
まだ月や星が輝いている時間である。

月明かりとヘッドライトを頼りに頂を目指す。白雲分岐に着くころには東の空が染まりはじめている。

白雲平の手前あたりでヘッドライトを消す。
前日に踏み固めた雪渓の道を慎重に登る。

登ってきた雪渓の先の空のオレンジが濃くなっている。
山脈の谷を埋める雲海が染まり出す。そして陽が昇る。

白雲岳頂上からの朝焼け(2023年6月25日)

太陽を背にすると旭岳やトムラウシ山、十勝連峰まで望める。
オレンジに染まった空が少しづつ薄らぎはじめる。
小屋を出た時に輝いていた月は光をなくし白く佇む。
旭岳やトムラウシ山の頂上から陽が注がれると同時に目の前に山が浮かび上がる。自身が立つ白雲岳の陰だ。
大雪山の三山が並ぶ。

白雲岳の頂上で迎える朝(2023年6月25日)

■尾根からの景色

緑岳ー小泉岳

小泉岳から緑岳にかけての緩やかに広がる広尾根は花畑。
白い大群落はイワウメ、黄色はミヤマキンバイ。
そのほかの花や新芽に彩られる。
花畑の先にそびえるのは白雲岳。そしてその先には旭岳。

白雲岳を眺めながら緑岳から小泉岳までの花道(2019年6月29日)

小泉岳

広尾根の中に突如として小泉岳の頂上標識がある。この小高い丘からは、トムラウシ山に白雲岳、旭岳から続く御鉢平の稜線の山々が一望できる。

ここから緑岳、あるいは赤岳までの登山道からの広大な景色は、歩いていて気持ちいい。7月になるとさらにいろんな花が咲き楽しませてくれる。

小泉岳山頂からの眺め(2023年6月23日)

板垣新道

緑岳の山頂から小泉岳側に20分ほど歩くと分岐がある。分岐を左に曲がると板垣新道に入る。ここを下り、登り返すと白雲小屋に着く。

この時期は大量の雪に谷部が埋まり、夏場よりも白雲小屋が近く感じられる。なだらかな雪原は歩きやすいがクレパス(雪の割れ目)には注意が必要だ。

板垣新道の谷を埋める雪(2022年6月18日)

白雲小屋ー白雲分岐

この時期、白雲小屋は雪渓に囲まれている。通常利用している水くみ場までの道も雪に隠れている。
雪渓を抜けて歩いてきた道を振り向くと雪渓の先に白雲小屋が佇む。
白雲分岐までは雪渓がミックスされた登山道がつづく。

白雲小屋を白雲分岐側に少し進んだ登山道からの眺め(2021年6月21日)

この時期は、水くみ場も雪に埋まっているが、あちらこちらで雪どけ水が流れており、水に困ることはない。その一方、緩んだ雪の落とし穴があるため踏み抜きには注意が必要だ。

北海平

白雲分岐から北海岳に広がる北海平。なだらかな登山道が続く。
フラワーロードといわれるがまだ芽吹きはじめといった感じ。
遮るものがない登山道は、気持ちのいい散歩道だ。

北海平から赤岳側の景色(2023年6月24日)

北海岳ー間宮岳

荒井岳や間宮岳を望む御鉢平の緩やかな稜線。
ほとんど草木はなく、石がころがり、うっすらだが表土の色が縞模様に描かれている。別の惑星のような雰囲気だ。稜線の両斜面には多くの雪が残る。

レインボーマウンテンを思わせる御鉢平の稜線(2023年6月24日)

御鉢平と黒岳

中岳の山頂あたりからは御鉢平が一望できる。
巨大な噴火口の跡には、いく筋もの川が描かれていた。
小さな川は蛇行しながら集まり、大きな流れとなり下っていく。
その先にそびえるのは黒岳。

いく筋もの川が蛇行する御鉢平(2023年6月24日)

≪編集後記≫

6月下旬の関東は梅雨真っ只中であり、山の計画は立てづらい時期です。
マイカーがあれば雨の合間を見て行くこともできますが、車を持っていない私にはできない所業です。

そんなこともありこの時期は梅雨がないといわれる北海道の山登りを計画します。ご覧のとおり、大雪山をメインに登りますが、すっきりした快晴に恵まれることもあれば、雨の日もあります。
今回の記事を書くにあたって2018年から2023年の6月の写真を見返しましたが、全体を通じて、”いい天気”は少なかったように思います。朝は天気が良くても午後からは雲が出てきて、夕方に雨が降るパターンが多いように思います。

6月下旬といっても頂上付近は氷点下になることがあります。また、登山道の多くは雪に覆われているためどうしても装備が増えてしまいます。そのせいか、登る人は少ないように思います。
7月の花盛りや9月の紅葉はもちろんおすすめですが、その前の過程を知ることでさらなる感動や新たな発見があると思っています。

次回の『大雪日和』では、7月上旬の景色を紹介したいと思っています。



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