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著作権法をめぐるすっきりしない思い

この記事は「自分のブログに映画の場面写真を勝手に貼るのは著作権法違反だからやめましょう」という記事ではありません。「なんか、もっと明確な新しいルールを策定できないものか」という嘆きです。

映画の鑑賞記事の横にその映画の一場面の写真が添えてあるというのは我々がしょっちゅう目にする光景です。

でも、映画会社の許諾を得てやっているのでない限り(あるいは権利者が権利フリーを謳っているのでない限り)、それは明らかに著作権法違反です。違反だと知らずにやっている人もいるでしょうし、知りながらやっている人もいるのでしょうが…。

なのに、なんでここまでフツーに行われているのでしょう? なんでまかり通っているのでしょうか? 僕はそのことでずっと悩んでいます。そう、なーんか、すっきりしないんですよね。

僕はテレビ局に勤めていました。会社には自社の持つ著作権が侵害されていないかを調査して取り締まるようなセクションがありました。

そういう会社で、社員である僕が自分のブログに著作権のない写真を掲載して問題になるようなことがあってはシャレにならん(実際そういう事案を起こしてしまった社員もいましたし)と思い、僕は自分のブログ(note とは別のサイトです)に数多く書いている映画評には、場面写真などは一切載せずに来ました。

だから、僕のブログは、映画評を載せているものとしては日本一殺風景なブログなのではないかなと思っています(笑)

書評についても同じで、本の表紙の写真を載せても問題ないのかどうか自信がなかったので、Amazon のアフィリエイト(Amazon アソシエイト)という手法を採ることにしました。これなら合法的に Amazon のサイトにある写真からリンクを貼って自分のブログに本の写真を表示させることができるからです。

これは勝手にダウンロードして貼り付けているのとは明確に違う手法であり(画像はダウンロードもアップロードもしていません)、著作権は侵害していません。

著作権を侵害せずに表示できるのであれば、できるだけそういう方法を採りたいというのが僕の基本スタンスです。

例えばここ note に書く場合は、Amazon や映画.com などへのリンクを貼れば、四角形の中に自動的に本や映画の写真を表示してくれます。それなら問題はありません。でも、それはあくまでリンクです。僕は決してどこかにリンクしたい訳ではないのです。

そうではなくて、映画について書いている文章の横には単純にその写真を貼って見せたいのです。そう思うのが人情ではないでしょうか。

ネット上にある写真をダウンロードして自分のブログに貼り付けるなんてことは難しいことではありませんしね。

そんなわけで、世の中には無断で映画の一場面の写真を貼り付けた記事が、もう文字通り数え切れないくらいあります。そして、みんながやりだすと、「みんなやってるから」という理由でますますやる人が増えます。

そこら辺の一般人だけならともかく、かなり名のある人たちまでが平気でやっているケースも数多く見受けられ、ほんとうにびっくりしてしまいます。
それなのになんで訴えられたりしないのでしょう?

ひとつには数が多すぎていちいちチェックしていられないというケースと、それとは正反対に「特に害はないし、むしろ宣伝になる」という理由で意図的に放置しているケースがあります。

例えば YouTube上の違法動画であれば、YouTube の管理者側の機能で自動的に網にかけることができます。だからそれはどの放送局も当たり前にやっています。

ところが、個人が運営している小さなサイトに違法動画を掲載されたりすると、そもそも見つけることも難しいですが、それをいちいち取り締まるのもとても面倒なことです。

とは言え、僕が勤めていた局では(と言うか、どこでもそうだと思うのですが)そういうのも一つひとつ潰していました。とりわけ、その写真や映像を使って金儲けをしている場合は重大な権利侵害であり、会社は全力で削除を求め、応じない場合には法的手段に訴えることも珍しくありません。

そして、訴えられると、訴えられた側に勝ち目はないのです。

権利を持っているのはそれを制作した映画会社やテレビ局だけではありません。

当然、そこに映っている役者さんやタレントさんの著作隣接権があり、肖像権があります。

また、映像の一場面を切り取ったのではなくそのためにわざわざ撮影したポスターなどの場合は、撮影したカメラマンの許諾も得ておかないと勝手にコピーして公開するわけには行きません。

写真ではなく動画の場合は、出演者のみならず、台詞があるのであれば脚本家の、音楽がついているのであれば作曲家や演奏家の著作隣接権も侵害していることになります。

そんな関係者たちのうちの誰か一人に訴えられたらそれでおしまいなんです。

でも、それがまかり通っているということは、今のところ宣伝になるからという理由で放置されているケースが多いのだと思います。

だったらもう「ブログに貼る場合はOK」みたいなことにしてくれないかなと思うのです。

法律改正まで行くのが大変なのであれば、日本は判例主義なので、そういう判決を積み重ねてブログでの掲載を事実上認めてくれないかなと思うのです。

でも、これは一概には扱えないでしょうね。

何故なら(例えば往年のJ事務所みたいに)「うちのタレントの写真は何があってもネット上では使わせない」みたいなところもあるからです。法律は当然そういう人たちの権利も守らなければならないのです。それを考えると安易に条文の緩和はできないでしょう。

だったら今のままで良いじゃないかという人もいるでしょうが、考えてみてください、権利者の考え方が急に変わったら、明日からあなたのブログ上の写真は全部削除しなければならなくなるんですよ。ある日突然訴状が届いて賠償金を要求されるかもしれないんですよ。

そんなに急に権利者の考え方が変わったりするもんか、と思うかもしれませんが、例えば出演しているタレントさんや制作している会社などに何か重大な不祥事があったとか、出演者が完全引退したのでもう自分の映像は一切出さないでくれと言っているとか…(もちろん演者と制作会社がどんな契約書を交わしているかによりますが…)。

そんなことを考えると、今は事実上一時的に黙認されているとは言え、公には、法律的には認められていないことをやっているわけです。

それって、危なくないですか? そんな気持ちの悪い状態で放っておいて良いのでしょうか? なーんか、すっきりしないんですよね。

著作権について多少知識のある人は「引用だったら良いんじゃないの?」というかもしれませんが、著作権法上の引用と認められるためにはかなり厳しい要件があります。そこをきっちりと詰めていない限りは、訴えられたらあっさり負けます。

引用元がどこなのかということさえ書いていないようなケースは、もうそれだけで完全アウトです。

そんなことをつらつら考えていると、僕は自分のブログに映画の場面写真を貼ることをいまだに潔く思えないのです。

とは言え最近は、映画館の入口に貼ってある(つまり誰でも見られるところに掲示してある)ポスターなどを自分のカメラで撮影して、その写真を掲載することはやっています。

しかし、これもやりようによっては著作権法違反に問われる可能性もないとは言えません(だから、構図等にはそれなりの注意を払っていますし、仮に訴えられたら受けて立つ覚悟も自信もあります)。

でもなあ、ほんとうはもっと気兼ねなく場面写真を貼りたいのです。

なんとかならないでしょうか?

映画会社が自ら提供していて、すでにどこかのページに上がっている静止画については、いくつかの条件を付けた上で、著作権法の縛りを逃れるような規定はできないものでしょうか?

なんとかちゃんとした制度として、そういうことが認められるようにはできないものでしょうか。

あなたはこのままでも良いと思いますか? 僕はずっともやもやしています。

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山本英治 AKA ほなね爺
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