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ことばと生き方──ことばに対するこだわり

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若い頃から「ことば」というものに興味があり、2001年から2018年まで“ことばのWeb”を主宰していた流れで書いた文章を集めています。
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2024年7月の記事一覧

トランプ前大統領に仮定法を見た

ニュース映像でトランプ前大統領が と言うのを聞いて、「あ、これは高校時代の英語の授業で習った仮定法過去完了ではないか!」と思ったのは多分僕だけではないでしょう。 なんか、嬉しくなりませんでした? 高校の授業で習った際には、とにかく日本人にとっては甚だ面妖な構造に驚いて、 とまで思ったほどでした。 でも、いろいろな形で英語と接する機会が増えてみると、実際仮定法というのは会話においてもかなり使われるのだということを知りました。 ただ、日常会話においては、大抵は条件節(

「月9」は「げつく」か「げっく」か?

今クールの CX(月)21:00 のドラマ『海のはじまり』、まだ3話が終わったばかりですが、⽣⽅美久さんの脚本がとにかく素晴らしく、キレッキレの台詞てんこ盛りで、思いっきり切なくて、考えさせられる作品になっていると思います。 ところで、皆さん、フジテレビの月曜夜9時のドラマ枠、通称「月9」を何と読んでいますか? 多分ほとんどの方が「げつく」と読んでますよね? 僕はそれが気持ち悪くて仕方がないのです。 所謂トレンディ・ドラマ路線であの時間帯のドラマがヒットを連発するようにな

『三体』における「テキーラ(殺すため)」の謎──速い英語に慣れる

前に「外国語のドラマや映画の字幕って時々間違っていたりしますよね」という話を書きました: その時には書きませんでしたが、しかし、字幕の翻訳って実際かなり難しいんだと思います。何故なら、基本的に登場人物がその台詞を喋っている間に読める分量の日本語に訳す必要があるわけですから。 前回書いた例で言うと、訳者としては「日本人にフラットホワイトなんて言っても多分何のことか分からないだろうな」と思っていても、ドラマの中で登場人物がコーヒーを注文する一瞬の台詞に長い説明文の字幕を出すわ

『九十歳。何がめでたい』という表記について考えた

先日、映画『九十歳。何がめでたい』を観ました。昨年 100歳を迎えた作家・佐藤愛子を昨年 90歳に達した草笛光子が好演しています。 とても良い映画でしたが、今回は映画の中身についてではなく、映画(かつ原作のエッセイ集)のタイトルについて思うところがあって書きました。 マル(。)は打たないそれまで僕は佐藤愛子の本を読んだこともなかったのですが、そのタイトルを見てさすがに佐藤愛子は昭和の大作家だなと思いました。 表題には句点(。)を打たないのです。 いやいや、「九十歳」の