KZ ワンマン公演 『すくわれろ』 at NOON 9.19 イベントレポート
「すくわれろ」。彼が自身のイベント名や曲名にそう名付け、そのマインドやアティチュードを表明するまでに約13年。人生として約30数年。14歳当時に引きこもった部屋や、ラップを始めた歩道橋からワンマンでNOONの約200人キャパ完売まで。暗い悲しみに帯びつつある現代で、強い光が今灯る。
大阪・梅田を中心に活動するラッパー・KZ。梅田サイファーの中心人物やバトルMCとしての活躍も目立つ一方で、ソロMCとして2018年にリリースされた1st「PULP」。以降は最新作4th「GA-EN」までに駆け抜けるように書き続け、3年で4枚のアルバムをリリース。ラッパーとして活動を10年を超えたある日を境に、自身の音楽性やソロMCとしてのキャリアを再構築しようとして今日に繋がる。KZ自身のキャリア初のワンマン公演「すくわれろ」。発表当初は、6.13に大阪、6.27に東京公演の予定だった。しかし流行病の影響もあり、あえなく延期に。日程を改めて9.05に東京、9.19に大阪公演が開催された。東京公演も無事に成功し、今回は大阪公演。場所はKZが天国も地獄も数々のハイライトを映してきた梅田・中崎にあるNOON。
優しい日本語と腐らずのサンプル、ユアーフレンド・KZ。キャリアの1つの到達点であり、ラッパー・KZの集大成であるワンマン公演の幕が上がる。
高架下にあるNOONらしく定期的に電車の走行音が鳴り響く中、19時に開演。
1曲目は『Breathless』。今回のワンマンの延期などの詳細を語り、力強い肯定をもたらすと語るKZ。1st「PULP」のラストトラックから始まり、続いて自身の視点から見える世界をリアルに綴った『Seize the day』。「すくわれろ」というスペシャルなライブが始まったことがヒシヒシと伝わる。1stのリリース以降に生まれた自身のネガティブな感情に向き合い、実直に歌った『Bad day』。KZというラッパーを理解する上で、外せない1曲である。
序盤から、高まるバイブスに早くもオーディエンスのボルテージも最高潮になる。
自身が所属している梅田サイファーでの再始動を歌った『決意』、
そして盟友であるpekoを迎えて黒衣の代表曲の1つをKZとふぁんくがRemixした『衝動 Remix』や、梅田サイファーの曲から『道の先にある高み』を披露した。自身や仲間、そしてオーディエンスを鼓舞するようにエモーショナルに歌い上げる。
MCでは、pekoが主催していた「アマチュアナイト」の事などNOONでの思い出を振り返った後に『SOLOIST _0907』を優しく披露した。NOONに刻まれる数々のハイライト。今日もKZにとってベストな1日の一つとなるだろう。
続いて現れたのは、Freak's’からKyons。
HRKTのTERUの曲をRemixした『廻る Remix feat.Kyons』を自身の出自や根幹を確かめるようにKZと共に歌った。
そして『昼間の月が薄れていく』を歌うKZ。自身の後に繋がる後輩含めた仲間のことを誰より思う姿がそこにはあった。
KZというラッパーは、自身だけではなく仲間がいて構築されるMCだと改めて考えさせられた。
「人生は短い、だからやるなら今しかない」。そう語るKZ。
Kenny Doesとのユニットである「KZ and doiken」のアルバムから『Hurry』を迸るように歌う。続いて、自身のアティチュードを全身で表現するように歌った『勝ち、続く。』。リリックにもあるように、呼吸するように作詞をしてきたKZ。今日に繋がる轍や過去も垣間見れるイベントだ。
一転、ステージを降りてKZとカメラはNOONのバーカン前へ。現れたのは、梅田サイファーで苦楽を共にしてきたテークエム。アルコールを片手にNOONとKZの思い出を語る彼と共にステージに上がり、1stの「PULP」から『T W of W S』、最新作4th「GA−EN」から『Talk to Her』を披露した。
今年、より輝きを増したテークエムがKZのワンマンで思うままに躍動した。
最高の盛り上がりを経て一度落ち着いた時間帯に入る。ここでのMCでは、4th『GA−EN』でも触れた自身の過去の詳細を語った。KZにとってのこの14歳辺りの期間は、現在音楽活動をする上で外せない部分であり、今日に繋がる必然性すらもたらしていると私は感じる。
そして、上記にある自身の過去や苦境に立たされたリスナーや社会に生きる人々を歌った『すくわれろ』、『Liful is…』で思いの丈を吐き出した。そこには運命や理不尽に縛られず、幸福の方に向かって抗うKZのHIPHOP観のような感情が溢れていた。
「綺麗事かも知れへんけど、全員が幸せになってほしい」。ポジティブに満ちたMCを語り、自身の代表曲の1つでもある『norito』を歌った。忘れたくても忘れられない過去の自分や活動中に出会うネガティブを乗り越えて、改めてポジティブに辿り着くKZは本当に活き活きとしていた。
続いて、どこまでもリスナーの事を思うKZだからこそ書ける『Early bird Ticket』、イベントや音楽、それにまつわる人々の感情を讃える『Let go』を歌い、見事に本編を締めくくった。
アンコールを迎えて歌った1曲目は、『RUN and GUN』。4枚の中に数々のキラーチューンを生んだKZのワンマンは終盤まで萎む事は無い。
続いて、披露したのは1st「PULP」から『Same Shit Different Day』。 客演に迎えられているふぁんくは自身のヴァースから登場した。
今日のメンバーでKZとは一番長い関係のある盟友・ふぁんくが登場して、梅田サイファーの代表曲『マジでハイ』をpeko,テークエムと共に4人で披露した。アンコール中盤にも関わらず、最高の盛り上がりをまた見せる「すくわれろ」。
残ったpekoと昨年行われた「アマチュア8耐」(pekoが日本語ラップのみで8時間のDJ、KZがそのサイドMCをするイベント)で全国を回ったツアーを改めて振り返った。
そして特別に披露された『ダンスは続いていく 8耐Remix』。あのイベントの空間を共有したオーディエンスには、たまらないアンセムとして鳴り響く。流行病が浸透して半年になる現在だが、この曲でフロアで踊るという事象をすぐ思い出せる。
記念すべき初のワンマン公演のラストを飾る1曲は『俺らまた笑ってる』。ポジティブとピースに満ち溢れた空間をKZの満面の笑みが表していた。
「すくわれろ」。その仰々しいとも取れる言葉にふさわしい、リスナーやオーディエンスが観て聴いた瞬間から次の一歩が変わるような素晴らしいライブとなった。人生として30数年、ラッパーとして13年。14歳当時に引きこもった部屋や、ラップを始めた歩道橋からワンマンでNOONの約200人キャパ完売まで。その積み上げてきたキャリアに恥じないKZの集大成と次に向かうための大きなステップとして、大成功を収めた。
KZ ワンマン公演『すくわれろ』2020.09.19 セットリスト
1.Breathless / 1st『PULP』- KZ
2.Seize the day / 2nd『CASK』- KZ
3.Bad day / 2nd『CASK』- KZ
4.決意 / 埋田サイファー3rd『Never Get Old』- 梅田サイファー
5.衝動 Remix feat.KZ
6.道の先にある高み / 4th『トラボルタカスタム』- 梅田サイファー
7.SOLOIST _0907 feat.peko / 4th『GA−EN』- KZ
8.廻る Remix feat.Kyons / 4th『GA−EN』- KZ
9.昼間の月が薄れていく / 3rd 『NORITO』- KZ
10.切に生きる / 4th『GA−EN』- KZ
11.Hurry / 1st『(not only)Two Sides』- KZ and doiken
12.勝ち、続く。/ 3rd『NORITO』- KZ
13.T W of W S feat.テークエム / 1st『PULP』- KZ
14.Talk to Her feat.テークエム / 4th『GA−EN』- KZ
15.すくわれろ / 4th『GA−EN』- KZ
16.Liful is … / 4th『GA−EN』- KZ
17.norito / 3rd『NORITO』- KZ
18.Early bird Ticket / 4th『GA−EN』- KZ
19.Let go / 3rd『NORITO』- KZ
−Encore-
20.RUN and GUN / 4th『GA−EN』- KZ
21.Same Shit Different Day feat,ふぁんく / 1st『PULP』- KZ
22.マジでハイ(KZ,peko,ふぁんく,テークエム)/ 3rd『Nener Get Old』- 梅田サイファー
23.ダンスは続いていく 8耐Remix feat.peko / 4th『GA−EN』- KZ
24.俺らまた笑ってる / 4th『GA−EN』- KZ
文・編集 yamakawa kyotaro
写真 hiroto kawagoe
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