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華金Vol.49

昨今の疫病で人知れず潰れていく職業がある。疫病感染の危惧は勿論だが政府からのイベント自粛要請も加わり、3月は大半の音楽や舞台のイベントが開催しにくい状況となった。自粛などの理解は十二分にできる。間接的にも人命が関わっているというこの状況で開催することはリスクを背負っている事だからである。ただ、その陰で声を上げることもままならないままに廃業のきっかけにもなりうる状況にもある。ライブハウス、クラブ、フリーのイベント関係者、チケット販売会社、イベント主催に関わっている中小企業は軒並み何もしていないのにマイナスの被害を受けている。”疫病のせいだ、誰のせいでもない、我慢して耐えよう’’、と言われればそれまでだが。それまでだが。
心斎橋。CLUB stomp。ご多分に漏れず、ここもその被害を受けているのかもしれない。その中で行われた”華金Vol.49”。自粛ムードなるものに日本全体が傾きつつある時に開催される、いつもの華金。

22時開演。オープニングDJはDJ peko。この華金というイベントの1つの特徴はDJタイムの個性と盛り上がりだろう。pekoのDJから始まる華金は、フロアに安心をもたらしてくれる。世間がどんな状況でもstompの中ではいつもの華金が開催されたことがわかる。オーディエンスと演者が日本語ラップが好きという共通点を持ちながら、いつもより空いているフロアを埋め合うかのように踊っていた。
1部トップバッターはK’z one。他を寄せ付けない攻撃的なspitに盛り上がるフロア。演者の中でも仲間のライブを特にフロアで見ていたことも印象的だった。
2番手はDraw4&DJ Tip。音楽に真摯に向き合っていることがわかる彼のライブはいつも輝いている。等身大であり、目の前の人に語りかけるような歌詞に、今ライブを見て感じている感情が当たり前じゃない環境であることをとても感じた。
3番手はコーラ。トラックメイクも手掛けるコーラのラップはリズミカルで、マジでハイなどに参加しているメンバーなどの知名度と比べると劣るかもしれないが、間違いなく梅田サイファーの一部分を担っている。個人的にはEP「Chair」に収録されている’’STEP’’が好きだ。
4番手はK-razy&DJ Ken。Freak'sの中心人物の一人でもあるK-razy。独特のリズム感とフロウを武器に、自らの最近の失敗したエピソードもMCで挟みながらライブを進めていく。この後にも出てくるメンバーの時も思ったが、Freak's'は平均身長が高い。
一部のトリはRiku。1stアルバム「FrontMan」をリリースしたばかりのRiku。音源での熱量そのままに無骨に淡々とラップをするライブ。ワードセンスや言い回し、何よりオーディエンスと対峙する姿勢や、今のシーンと自分をこのアルバム一枚で計っていくようなスタンスがラッパー然としていて魅力が溢れるライブだった。今回の華金の個人的なベストアクトでした。

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疫病対策のために、5分の無音換気。終えて2部開幕はDJ Ken。またしてもFreak'sの面々がフロアに顔を出す中で日本語ラップで踊る。こういう幸せな瞬間を、今だからこそ一秒も逃したくないと思った。
続いて、pekoとKENTの2MC黒衣の登場。演者の中でも特にクレバーで視点が一歩引いているという印象の黒衣。KENTのフリーキーで熱量あるspit、pekoの口ずさみたくなる韻とメロディセンス、幅広い音楽性から生み出されるであろうトラックメイク。この2人のコンビワークによる相乗効果が見れるライブは必見で、pekoの想い溢れるMCからの新曲には特に胸を掴まれた。守るものが多い2人だからこそ、この日の''朝’’は説得力があって考えさせられるものがあった。
2番手はFreak's'からキョンス。日常から零れる葛藤や自分なりの価値観を歌う音楽は人間性が垣間見えるライブである。
3番手は沢山のグループをかけもち、ラッパー、トラックメイカーとして多くの顔を持つtella。この日の演者の中でも特にアーティスティックなラッパーで、自己と身の回りを丁寧に描写するリリックと、ヒップホップの枠に捉われないようなトラックとメロディだけでも感動し泣きそうになる。今年リリースした「藻愛」から’’もうよそうよ’’のMVも公開となったので是非見てほしい。新曲’’irarira''の音源も楽しみである。
4番手は華金の主催者でもあるKZ。怒号から始まるそのライブは、今の現状を憂い、それでも希望を見据えるKZらしいライブであった。KZとpekoの「アマチュアラジオ」でも’’他人が落ち込んでいるからと言って自分も落ち込む必要は無い’’と明確に前を向くKZに改めて今回開催してくれたことの感謝を言いたい。ありがとうございました。
2部のトリは、最新アルバム「HK Stupids」を引っ提げたHI-KING TAKASEのリリースライブ。バトルは何度か見たことはあるが恥ずかしながら初めてライブを見た。シンプルでとても楽しかった。ユーモアをアクセントにリズミカルで思わず身体を動かしたくなるラップ。高度な技術の上で成り立つラップショーに心も身体も踊った。本人曰く’’自分らしくない’’と言った故郷を歌った曲も、メロディにとても感動して最高のリリースライブだった。

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またしても5分の無音換気。KZがマイクを持ち、繋ぐ中でリリースライブを終えたRikuが泥酔していたのが面白かった。
3部はDJ 開斗。日本語ラップどころかJ-POPもかかる彼のDJ。今回はケツメイシのさくらが印象的で、どのような経緯でそれがかかったのは覚えていないがフロアで合唱が起こる。
次に現れたのは、ILL SWAG GAGA。深夜3時に見る、ガガ。ラップショーを見ているいうより毎回、''人間ガガ''を見せつけられるそのライブに惹きつけられる。今やこの界隈のクラシックとして鳴る’’I’m in luv...''。ガガとオーディエンスの''スウィング’’が重なり盛り上がる、笑いに包まれるライブとなった。
2番手は「ライフイズギャグ」のリリースライブ、ミステリオ。ヒップホップの現場では、スキルよりキャラが重視されるという様な話を何度か見かけたことがあるが、彼を見るとそれを思わずにはいられない。歌詞を飛ばしながら、仲間に冗談で揶揄されながら、’’ライブって難しい''と吐露しながらでも、前に進もうとアルバムを制作してリリースライブに辿り着いた彼を一人の人間としてはリスペクトします。Freak's'でのライブもあった。いつも彼らのソロを見る時、それぞれ内省的に感じる。良い悪い、スキルフルかどうかは置いといて、内を向いているように感じてしまう。ただ、Freak's'になった時、魅力が何倍も膨れ上がる。今の梅田サイファーとは違うギラギラしたような自尊心が見えて惹きつけられる。今回のライブでの事態も含めて、いつか完璧なライブが見てみたい。クルーとしてのまとまった音源が楽しみだ。

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3部ライブショーケースの大トリは「PLANET OF KBD」のリリースライブ、KBDだ。ライオンキングの出囃子から始まるKBDのライブはKBDにしかない魅力が溢れていた。本人もフロアに笑いが溢れることを望むように、聴いたことのない韻の連打と曲中の世界観はフロアを沸かせた。’’しぶとく続けている者にも、潔くリタイアした者にもリスペクトを送りたい’’と年長者らしいKBDの人間性に触れられるMCにもとても感動した。
最後の5分無音換気の後に、クローズDJはDJ Tip。若い感性がチョイスする曲の数々はいつも聴いていて飽きない印象で最高のクローズとなった。

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終演は5時30分。一本締めで締められ、無事にイベントは終わったと思われる。受付やバーカンにアルコール消毒を設置、DJタイムの際に5分の無音換気、オーディエンスは35人の人数制限と共にマスク着用必須。これらの環境配慮を用意して行われた今回の華金。大それたことはなく、ただただ音楽愛や人間愛がいつも以上に感じられる一夜でした。開催してくれたKZさん、演者の皆さん、stompのスタッフの方々、ありがとうございました。

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