見出し画像

【指名ポイント振り返り編】Marines Monthly Draft Report #6.2

※このnoteは後編です!
前編(#5、#6.1)をお読みいただいた前提で書き進めておりますので、まだ#5(シーズン総括、ドラフト展望編)、#6.1(指名選手紹介編)をお読みでない方はご一読いただけますと幸いです。

ヘッダーは「千葉ロッテマリーンズ 広報室」Twitterより

ドラフト展望編

指名選手紹介編

指名ポイント振り返り:上位

ポイント① 数年後の先発投手陣の柱になり得る投手→◯

1位の菊地投手は総合的に能力が高く、早期から先発ローテーション入りを期待できる投手です。3位の田中投手もまずは身体との相談になると思いますが、早期から二軍船などで登板を重ね、同年代の選手が大学を経てプロ入りする頃までには一軍のローテーション争いに加わっているのではないかと見ています。

ポイント② 二遊間両方をハイレベルに守れる内野手→◯

2位の友杉選手は現在NTT東日本でコーチを務める井端弘和さん(元中日他)なども絶賛する高い守備力を備えた選手。抜群の脚力も相まって早い段階で現有戦力に刺激を与えられる存在として期待がかかります。今年のドラフト全体の流れを鑑みても、指名するのであれば2位までに指名しないといけなかったと思います。

ちなみに前号で上位候補として名前を挙げた田中幹也選手ですが、結果的に中日の6位指名となりました。昨年発症した潰瘍性大腸炎は大腸全摘手術により完治したとされているものの、1年間通じて長距離の遠征を伴いながら試合を行うプロ野球選手としてはリスクと判断され、上位での指名を回避されてしまったのではないかと推察します。実力は申し分ないですし、球団問わず応援したいと思っていたので、今後も応援させていただきたいと思います。

ポイント③ ショートで育成できる次世代のコアプレイヤー候補→◯

2位で友杉選手を指名した他、上位ではないものの5位で金田選手、育成3位で勝又選手、育成4位で黒川選手と3人の高校生ショートを指名。現場としても二遊間、とりわけショートは重点課題であると認識していたことがわかる指名となりました。
来季以降のファームの野手運用、特にショート運用は見どころのひとつとなるでしょう。

指名ポイント振り返り:中位

ポイント④ 1年目から二軍のローテーションを回しながら育成できる準即戦力投手→△

この部分の評価は3位の田中投手の起用法次第となりそうです。しかしながら昨年指名した田中楓基、永島田輝斗の高卒ルーキーコンビがフェニックスリーグで登板を重ねており、来季以降ファーム公式戦での登板数も増えることが予想されます。来季のファームは今季より育成に比重を置いた投手運用となるのではないでしょうか。

ポイント⑤ 二軍のサードで育成できる打撃型の選手→△
ポイント⑥ 二軍のセンターで育成できる身体能力に長けた選手→△

この2点については「サード」「センター」としての指名はありませんでしたが、高校生ショートの3選手のポジションを回すことで適性を見極めながら育成するのではないかと見ています。評価は△としましたが、内容的には◯でもおかしくない部分だと思っています。
吉井監督がフェニックスリーグで取り組んでいるポジションシャッフルなどの動向とともに、来季以降注視すべきポイントとなりそうです。

指名ポイント振り返り編:下位・育成

ポイント⑦ ブルペンを厚くする即戦力リリーフ投手→◯

4位の高野投手はマリーンズにいないタイプの左腕で、早期から一軍で重宝される可能性を秘めています。指名人数こそ1人となりましたが、今後トレード現役ドラフト等での獲得も想定されることから、ドラフトにおいては十分と判断して差し支えないかと思います。

ポイント⑧ 即戦力捕手→×

指名はなかったため評価は×としましたが、前号に書いたように優先度は高くなかったポイントです。松川、佐藤らの更なる成長はもちろんのこと、田村が残留したうえで体調万全で再びプレーすれば一軍の正捕手争いも活性化されます。
またフェニックスリーグではこれまで外野等での出場が多かった谷川唯人が捕手として出場機会を増やしており、ファームを含めた来季以降の運用を考慮しても問題は大きくないと見ています。

ポイント⑨ 高校生投手→◎

3位の田中投手の他に、育成で吉川投手、白濱投手と左右1人ずつ指名。3投手とも素材として非常に魅力的であり、ファンとして育成過程を追いかけるのが楽しみになりそうです。

全体振り返り

全体を通して今年のドラフトでカバーすべきポイントは抑えられた良い指名だったかと思います。
長距離砲が少ない」といった意見も散見されましたが、前号にも書いたようにファームで西川、山本ら若手選手が成績を伸ばしている背景を踏まえると、今年のドラフトでどうしても指名しなければならないポイントではなかったと球団側も判断したと読み取れます。実際に吉井監督もドラフト会議後に同様のコメントを出しています。

ーー今シーズンは得点力が低かった

「今いる選手の中には成長の途中ですけど、若いパワーヒッターが何人かいる。それを考えると、今年(のドラフト会議での補強)はこれでいいと思います」

指名するのであれば、西川や山本らとポジションで差別化でき、かつ外国人選手の煽りも受けにくいサードの選手か、あるいは外野でも左打ちの選手ではないかと想定していました。しかしながら

・内田 湘大 (内野手 利根商高→広島2位)
・内藤 鵬 (内野手 日本航空石川高→オリックス2位)
・西村 瑠伊斗 (外野手 京都外大西高→ヤクルト2位)

など、有望な高校生スラッガーが立て続けに上位指名された背景を考慮すると、やはり指名がなくても致し方なかったのではないかと思います。

また、上に添付した記事の吉井監督のコメントにもあるように、高校生の指名が増えることでコーチ陣のモチベーションアップ、ひいては指導力向上にもつながるのではないかと期待されます。このあたりは、大学院でコーチングを専攻した「プロの指導者」としての吉井監督の考えが反映されているようにも思えます。

ーー高校生6人を指名。将来性を考えた

「もちろんです。若い子がしっかり出てこられるように競争して、あとは2軍のコーチもモチベーションが上がると思うので、頑張ってもらいたいです」

おわりに

今年のマリーンズのドラフト指名で特筆すべき点は、なんと言っても高校生指名の多さではないでしょうか。

現有戦力に見通しの立っていない球団は、ドラフトで即戦力を求めることに終始してしまい、将来に向けた投資≒高校生の指名まで手が回らなくなってしまいます。まさにかつてのマリーンズがそうだったと、マリーンズファンの皆様はお察しされているのではないでしょうか?
本当に弱いチームは育成に時間のかかる高校生を指名する力すらない」とも言えます。

※注記:高校生を指名することだけが将来を見据えた指名とは限りません。

井口前監督が指揮を執ってからはドラフト方針にも変化が見えはじめ、顕在化したウィークポイントを補う即戦力選手と並行して、スケールの大きい高校生選手の指名にも着手するようになりました。まだまだ発展途上であり最終評価は下せませんが、現時点で佐々木朗希、松川虎生、山口航輝、安田尚憲らが既に一軍に定着しているのは十分な成果と言えるのではないかと思っています。

監督が交代した今年のドラフトでもその方針をさらに加速させ、育成4人を含む高校生6人を指名しました。今季の一軍チーム成績こそ5位に沈んでしまったものの、チームの方針・ビジョンにブレがないこと、育成のサイクルが概ね順調に回っていること、そして何より井口前監督がチームに残した遺産は決して少なくないことが今年のドラフトで証明されたのではないかと自分は思います。

以上の点も踏まえ、マリーンズは全般的に補強すべきポイントを的確に抑えることができ、良い指名になったと評価できます。特に今年のドラフトにおいては、ここ数年のドラフトと比べると絶対的な選手が少なく、不作と言われた中で最適解に近い指名ができたと思えます。

しかしドラフトは指名して終了ではなく、むしろここからが第2章・育成編のスタートです。そういった意味では、育成や起用の過程まで追いかけるべきポイントは数多く残されております。
菊地投手、友杉選手は開幕から一軍に入ってくるのか、それぞれ3選手ずつ指名した高校生投手、高校生遊撃手は育成・起用の過程でどのように差別化を図るのかなど、むしろ指名後の楽しみは例年以上に多いのではないかと感じています。

また、ドラフトは補強手段のひとつに過ぎず、補強の動き全て、特に来季に向けたチーム運営を評価するにはFA選手や新外国人選手の獲得、トレードなども併せて見る必要があります。今年は初の現役ドラフトも控えており、例年以上に移籍市場が活発化することが予想されるため、こちらの経過も追いかけたいと思います。

Marines Monthly Draft Reportは今回で最終回となりますが、毎月チームの状態を追いかけながら、補強ポイントに合致しそうなドラフト候補の選手を紹介するのは自分にとっても勉強になることが多かったです。来年どうするかは何も決めておりませんが、何らかの形でマリーンズのチーム状況を追いつつ、並行してこれまでのようにドラフト候補の紹介ができればと考えております。とはいえnoteは更新頻度が決して高くはないので、是非Twitterをフォローしていただけますと幸いです(もちろんnoteもフォローしていただけますと幸いです!)。
ありがとうございました!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?