本と公園②① 〜22歳の男〜
朝にちょっとした用事があったので、11時過ぎに公園に到着。
もっさりと葉が茂っていた木は痩せこけたように細い枝だけを残し、落ちた葉はカサカサと音を立てている。
冬らしい澄んだ空気で深呼吸をしてから設営に。
ぶんじ寮のご近所さんが通りかかった。自転車屋台をその方にレンタルするかもしれないのでその話を少しだけ。
立ち話をしていると、おじいさんが近寄ってきた。これは売ってるんですか?と聞かれたので、色々と説明していると、ご自宅に本がたくさんあるみたいで後日引き取りに行くことになった。
おじいさんは、脳梗塞で何度も倒れていて、今年は10回目の救急車に乗ったそう。「今年も死にかけた、あの世からお迎えが来た」と笑っていた。昔の有名な作家と親交があったようで、よく別荘に招待されて囲碁をしたという。それから大好きだというそばの話も。
「やべ、色々と喋りすぎました。女房に怒られるんですわ」となんだか嬉しそうに帰っていった。話のところどころに奥さんのことが出てくるあたり、大好きなんだろうな〜
それからいつも公園がお迎え場所になっているお子さんとそのお母さんがきた。お子さんからは「なんか声変わったね〜〜」と言われた。
今日も元気いっぱい。印象的だったのは、突然「本ってなんだろう〜?」「服ってなんだろう〜?」「紙ってなんだろう〜?」「携帯ってなんだろう〜?」「パソコンってなんだろう〜?」と身の回りの様々なものに疑問を持ち始めたこと。世の中は知っているようで知らないことばかり。まずは疑問を持つこと、興味を持つことが全ての始まりなんだろうな。
「何歳?」と聞かれ「22歳だよ」と答えると、僕の呼び方が「22歳の男」になった。「名前を教えてくれたら名前で呼んであげる!」と言われたが、なんとなくいい響きなので名前を言わなかった。
そう、5歳?の女の子にとって僕はただの22歳の男なのだ。それ以外の何者でもない。
気温も低くなってきたので散歩をする人は随分と減ったようだ。
こんなに気持ちいいのにな。まぁ家でぬくぬくしている方が良いか、、、
しばらく1人で仕事をしていたら、男性が歩いてきた。
第一声が「珍しいですね〜こんなところで古本なんて」だった。
国分寺には住んでいるが公園の方にはあまり来ないらしい。ここに来る前に近所の喫茶店にも行ってきたようで、今日はこっちに来てよかったですと言ってくれた。
鉄道が好きなようでそれに関する本を1冊買ってくれたし、話を聞いていくと僕の地元に何回も行ったことがあるらしい。
日本三代夜桜の高田の桜、長岡や直江津、柏崎の花火にもきたことがあって、今年の長岡花火にも。そしてさらに僕がお店を作った雁木通りにも。
新潟はいいところだね〜大好きだよ〜と言っていた。
そしてすぐに別のおじいさんが来た。「古本売ってるの?」と聞かれたので、「はい、そうなんです」と答える。
史跡を見に遠くからいらしたそうで、やっぱり歴史を感じられるところはいいねと言っていた。「今の人間、勘違いしているんだよ。技術が発展したからすごくなったと思っているけど、別に人間がすごくなっているわけじゃない。人間の原理はこの史跡があったころと何も変わらないよ。」と熱弁していた。自分の考えをぶらさないように生きていきたいから、あまり著者の考えがびっしり書かれている本はあまり読まないらしい。影響を受けやすいのかな。
「まぁたまにこっちの方に来るからまたタイミング見て寄るよ」と言って府中の大國魂神社に向かっていった。
ぶんじ食堂などで少し顔を合わせたことがある方が散歩してきた。なんだか見覚えがあって、「少し前に来たことがあります?」と聞くと「いやぶんじ食堂とかで会っていると思います」と言ったので思い出した。
政治に関心があって、最近は市民の声をどう政治に反映させるかをテーマに活動する団体のお手伝いもしているそう。
「じゃあまたどこかで」と言って散歩の続きに行った。
15時半を過ぎたころ、風が強くなってきた。いくらダウンを着ているとはいえ手は冷たい。タイピングもいつも通りできなくなってきたのでここで退散。防寒対策もっとしなきゃな。
片付けをしていると、結構前に来てくれた国立の方が自転車で来てくれた。国分寺での用事に向かう途中だったのかな。
自転車の屋台いいよねという話や、空き家にお店を作った話などをしてお別れ。長野県によく行っているらしいのでその辺の話も詳しく聞いてみたいな。
やっぱり気になる人は近づいてくるし、話しかけてくれるし、おもしろいし。今日もいろんな話が聞けておもしろかった。個人的に一番刺さったのは「22歳の男」という言葉。いろいろ活動していると肩書きがついてくることもあるけど、謙虚にシンプルに。そう、僕はただの22歳の男だ!
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