【序章・第1夜】SOAPを知らないでSOAPを書いている人たち
薬剤師の世界では、訳の分からん事態が横行している。それも結構前から。そして多くの薬剤師に自覚されないまま。
それが薬剤師の医療記録(薬歴)である。
看護記録、診察記録、リハ記録…多くの医療記録がPOS(ProblemOrientedSystem)の記載形式である、SOAPがスタンダードになっていると思う。この薬剤師の記録もしかり。だが、はっきり言う。9割以上の薬剤師はSOAPの本質を知らない。そんでもってSOAPの形を借りて、本質SOAPとは無関係な記録を書いている。下手するとPOSという言葉自体半分くらいの薬剤師は知らないかもしれない。
他の医療職のみなさんはどうなのだろう?
セラピストの皆さんは比較的SOAPが書きやすい職種なのでは…私はそう推測している。質の高いリハメニューを組み立てるということとSOAPの考え方がある程度合致するだろうから。
看護師の場合、フォーカスチャーティングと併用して記録を付けている方なら、相対化してSOAPの特徴が分かりやすいのかなあ…そう思っている。
ただ、あまりにも看護師の仕事は膨大である。もしかすると、SOAPにそぐわない看護行為への記録をSOAPで書いてしまい、混乱を招いている所はあるんじゃないかな…という感じはしている。
(勝手な想像ではあるが、看護記録の本を手に取ってみた印象として)
また、介護職にも近年はSOAPで記録をつけている事業所もあるようだ。「介護記録はほとんど日記」と言う声も聞かれる。SOAPの本質が介護記録に取り込まれると、介護の質、専門性というのもみえてくるのではと私は勝手に期待している。
記録形式には目的と思想がある
POSに限ったことではないのだが、ある記録形式を採用する時、
「なんでその記録形式を使うの?」
「その形式で記録をつけると、何に役立つの?」
「どんなメリットがあるの?」
…こうした目的意識を共有しておくことが大切だと思う。
こと、薬剤師の世界の話をすると、導入する最初の段階でボタンの掛け違いがあったように思えてならない。
薬剤師に限らず「なんでSOAPで記録を書くの?」と聞かれて説明ができる医療・介護職の方は少数なのではないだろうか?
このマガジンでは、まずはその目的を確認したうえで、具体例を通じてSOAPで「考える」ことの本質を伝えたいと思う
SOAPで「書く」ことの本質ではない。これは次回以降触れていこう。
POSの概念を日本に持ち込んだ日野原重明先生はこう語っている。
POS とは、患者のもっている医療上の問題に焦点を合わせ、その問題をもつ患者の最高のケ ア(best patient care)を目指して努力をする一連の作業システムである。
さあ、POSの本質を理解し、我々もBest Patient Careを目指そうではないか!