「引き目かぎ鼻」人のワナ
「引き目かぎ鼻」って、平安時代の人物の絵の特徴として、歴史の授業で出ませんでしたか?
私は「引き目かぎ鼻」って、浮世絵のようなうりざね顔か、おたふくさんのような下ぶくれの顔に、細い眼と平仮名の「し」のような鼻がつくもの、平安時代の人物画はみんなそうなのだと長年思い込んでいた。
だからなのか、平安時代の人物画は定型的で、顔表情が無くてつまらないなぁと勝手に誤解していた。
でも違うんです。
大和絵の模写を始めてみたら「引き目かぎ鼻」の人は意外に少ない。大和絵で有名な「信貴山縁起絵巻」のお坊さま、「粉河寺縁起絵巻」の男女の村人たち、「蒙古襲来絵詞」の武人も目鼻立ちのくっきりしたイケメンから大騒ぎするおどけたオッサンまで様々。
男も女も一般人はかなりリアルな目鼻だち、大声出したり、笑ったり、噂話をひそひそしたり、マンガのように表情豊かで楽しそう。
当時生きていた人々のくらしや感情を生き生きと伝えてくれる。
東京国立博物館で開催されている「鳥獣戯画」にも人がでてくるけど、ギャグ漫画みたいだよね。
信貴山縁起絵巻
鳥獣戯画
「引き目かぎ鼻」なのはお姫様と極一部の貴人がほとんど。それに細面ではない。
「扇面古写経」「住吉物語絵巻」も、この「平家納経」も丸顔もしくは下ぶくれのふくよかなお顔だ。細面はNG。
このふくよかなお顔に今流行り?の太眉に、引き目、かぎ鼻がとても似合う。可愛らしかったり、クールに見えることもあれば、艶然とした微笑みに見えることも。
ちょっとした筆の角度や入れ方でガラッと変わる。
これがねー、実際描くと難しい。品格のある顔にもヘンテコ顔にもなる。
一筋の線で表情が変わる。
ちなみにふくよかなお姫様の横顔は、大和絵ではなぜか、ものすごく扁平な細長い頭になる。
なんでなんだろう。本当にそういう頭の形だったとか?