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山を好きになって、信州に生まれてよかったと思った【燕岳】
てらしなのと申します。
昨年の8月10日〜8月11日、
ついに念願の山に登ってきました。
念願叶ったおかげで気合が入りすぎて、
物凄く記事が長くなってしまいました笑
お時間ある時に読むことをオススメします笑
まずは私の身の上話を少し。
私は長野県に生まれ、高校生まではずっと信州で育ちました。
そして、信州で暮らしていた頃の私は、山に全く関心がありませんでした。
なぜなら、生まれた時から山に360度囲まれており、見慣れすぎてしまっていたから。
北アルプスや八ヶ岳など、登山好きや自然好きの方にとっては羨ましくてたまらないであろう景色。
それが私にとっては当たり前すぎて、単なる景色の一部。特別さなんて微塵もない。
しかも、私はアウトドア派ではなかったから、山に対してありがたみを感じることはほとんどなかったです。
都会や海のある場所が羨ましくて、山を好きという人の気持ちが本当に理解できなかった。
ましてや、わざわざ登って辛い思いをしに行く人の気持ちなんて、自分には一生分からないと思っていました。
その後、高校卒業と同時に関東に移住。そして、24歳になる頃、登山動画を観たことをきっかけに、なんと私は、少しずつ山に登るようになりました。
(詳しくは過去の記事をご覧ください)
次第に山の美しさに気づき始めた私は、自分の故郷が、とんでもない聖地ではないかと思うように。
日本が誇る名峰に囲まれた故郷。
単なる田舎、都会が無い、海も無い。
そんなマイナスな捉え方はどこかへ消えました。
山の姿を見るだけで目頭が熱くなった。
校歌に北アルプスの山々の名前が入っていることが嬉しくなった。
「長野県出身です」と自己紹介をする時に、
誇らしさを感じるようになった。
こんな自分になるとは、
登山を始めた頃でさえ
全く想像していませんでした。
山は、私の故郷への思いすらも変える力をもっていました。
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8月10日。私は、そんな故郷の山に登るべく、長野県の穂高駅前のバス乗り場に立っていた。そこから中房温泉(なかぶさおんせん)へ向かう。
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さすが夏山シーズン。早朝にも関わらず、すでにたくさんの人が並んでいた。私を穂高駅まで送迎するため、母は3時台に起きてくれた。その甲斐あって5時台にはバス乗り場に到着した。それでもなかなかの行列。
しかし、バス会社の人たちはすでに慣れっこのようで、そんなに慌てるまでもなく行列の人数を数え、追加のバスを手配していた。
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なんとかバスに乗ることができ、紫とオレンジが混じり合う空の下、私は登山口へと向かっていった。
この日私が登りに行ったのは北アルプスの燕岳(つばくろだけ)である。
北アルプスのエリアにはいくつか山脈があり、そのうちの常念山脈(じょうねんさんみゃく)にこの燕岳がある。松本平からよく見える常念岳と同じ山脈にあり、有明山の近くに見える位置関係。
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その右の大きな三角の山が有明山(別名:有明富士)。
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私は、登山を好きになってから
この山にずっと登りたかった。
一つは、父や母が中学生の頃に学校行事でこの山に登ったという話を昔聞いた記憶があったこと。父や母、そして行事で登った県民の人たちと、同じ山の空気を味わってみたかった。
更に、北アルプスの入門編として有名であり、この先も様々な北アルプスの山に登りたいと考えていた私は、自分が登山を続けていく上での一つの通過点としてこの山を捉えていた。
また、燕岳の近くにある燕山荘(えんざんそう)という山小屋が、泊ってよかった山小屋ランキング1位をとっていたことを知り、泊まってみたくなったというのもある。
ずっと登りたかった山。しかし、膝の故障やコロナ流行等で何年も見送り、ようやくこの日。私は中房温泉の登山口に立つことができた。
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装備やパッキング等の最終確認を行う。登山届はネットから提出済。たくさんの人がいる中、なんとかスペースを見つけて準備運動をする。
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登山動画で何度も何度も見たから、「本物の中房温泉だ…」と登山口だけでもテンションが上がる私。
今度は私も撮影する。
アクションカムを取りつけ、いよいよ行動開始。
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中房温泉から燕岳山頂へ向かった時、まずは合戦尾根(かっせんおね)という急な登りをあがる。早朝の、身体が温まっていない初っ端からこの尾根を上がっていかなければならないのは、なかなかきつい。
何回も登山をして、自分の疲れにくいペースを把握している人でないと、かなりしんどい思いをしてしまうのではないかと思う。
しかも、最近の日本の夏は暑く、どんなに涼しいイメージのある長野県のアルプスであろうと、日によっては想像以上に気温が上がる。
汗を拭いながら、水分や塩分を余裕をもって持ち、自分に無理のないペースで上がっていくのが良いと思う。
登り始め、流れで集団の先頭になってしまった。後続の方々がそこまでペースが速くない方々だとしても、ずっと後ろに人がいるというのは正直落ち着かない。
だからスペースを見つけては積極的に道を譲った。
道を譲っても焦らなくて済むようにかなり早めに出発しているので、心にゆとりをもってストレスがかからずに登ることができた。
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登りながら思い出したのは、神奈川県の丹沢地域の登山道だった。雰囲気が少し似ているように感じられた。何度も何度も丹沢を登った記憶が、「大丈夫。あなたならこの山も登れるよ。」と私を後押してくれている気がした。
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どんなに急な登りだろうと、ただの苦行にはしたくないというのが私が大切にしていることだ。
登山には様々な楽しみ方があって、タイムを追求したり、きつければきついほど良い!!!と思う人もいる。私もたまーにドM心に火がついて、わざときついペースや道を選んだりすることもある。
でも、膝を痛めてスローペースに登山を行っていた頃に知った、周りのあらゆるものへアンテナを向け、木漏れ日や、匂いや、風や、音を感じながら登ることの楽しさ。
いつしか、そういう登山の在り方が、私にとってかけがえのない時間となっていった。
だから、合戦尾根でも誰に言われるでもなく、汗を垂らしながらも「この太陽の当たり方、まじで綺麗だな…」「あ、ここから見る岩の位置関係が格好いいな」「この植物の生え方面白いな」など、この日、この時間にしか出会えない一期一会をとても楽しんでいた。
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単独での登山なのに、周りとの対話をしているようで、全く寂しくなかった。
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小休憩を繰り返しながら、さすがに疲れてきたなと思った頃、こんな看板が目の前に現れた。
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この看板、
作った人の個性を感じられてとても好き。
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その直後に、漫画みたいなキノコ。
そして合戦小屋に到着。
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ここでは楽しみにしていたすいかを注文。
すいかはなんと地元で有名な長野県波田産のもの!!
実家にいた頃は、父がどこからか貰ってきたり買ってきていたりしていた思い出の味。
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ベンチに座って一口。
うま。うますぎた。想像以上だった。
登山で疲れた身体に、水分と糖分のかたまりのすいかは恐ろしいほどに相性が良かったのだ。
人生でこれほど、むさぼるという表現が相応しい食べ方をしたことはない。
登山とおにぎり、登山とカレー、登山とコーヒー、登山とビール…
山で食べると美味しいと言われる食べ物はたくさんあるが
私はこの時に食べたすいかが断トツで美味しかった。
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トイレを済ませて行動再開。
山の上まで来ると、今日の空模様は上空が徐々に雲に覆われ始めていた。
風もびゅーびゅーと吹いている。登山動画の記憶を掘り起こせば、そろそろ常念山脈の稜線が見渡せるはずだったが…??
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まぁ私の登山では、あたりが真っ白だったことなど全く珍しくない。だから、「やれやれ、またか。せっかく来たから、どうせならそのうち姿を見せてくれよ~」くらいで、それほど落ち込みもせずに登っていた。
もちろん景色が見渡せる方が良いには決まっているが、標高が上がるほど植生や岩なども変わってきており、それを感じ取りながら歩いていること自体がすでに充分面白いのだ。
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多分、ミヤマコウゾリナ
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それに、おそらく快晴だったら、樹林帯を抜けて遮るものがなくなってきたこの高度では、日差しをモロに浴びて大変なことになっていたかもしれない。
晴れてるから最高、曇っているから楽しくない…という図式が成り立つとは限らないのだ。
ただ、曇っている日の欠点(?)として、目印が見えづらいというものがある。本日泊まる燕山荘は結構見晴らしの良い位置にあり、晴れの日なら「あれが燕山荘だ!よーしあと少しだ!」と思うことができる。
しかし、この日は少し離れた位置からでは全く見ることができず、一体いつ着くのか景色だけでは全然わからなかった。地図を見て「多分…多分…もう少しのはずなんだよな…」と自分を励ましながら歩いた。
実は燕岳は花の百名山に選定されている。高度を上げるほどに綺麗な高山植物が姿を見せ始め、徐々に様々な花が咲き並ぶようになった。
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「あれもこれも可愛いな…」と、しょっちゅう足を止めながら写真を撮っていた時。
ふと、上を見上げると、
突然、本日の宿泊場所である燕山荘が現れた。
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私が写真撮影をしていたのは、燕山荘直下にあるお花畑だったのだ。
ちなみに、北アルプスの中でも私が登ったこの山域は、下のように主稜線と常念山脈の二つに分かれている。
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このうち、松本盆地からは常念山脈が見えるが、それに隠れて主稜線はほとんど見ることができない。
常念山脈の稜線まで上がってきて、ようやく目にすることができるのだ。
お花畑から階段を少し登ると常念山脈の稜線に立てる。
つまり、ついに、北アルプスの主稜線をこの目で見ることが………
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できませんでした~。
まぁ、この天気ならそりゃそうだ。
登山動画でも、この最後の階段を上がって主稜線が目の前に広がる瞬間がハイライトとして取り上げられていることも多く、結構楽しみにしてたのだが…。まあしょうがないね。帰るまでには見れたら嬉しいな。
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ここまで4時間半。コースタイムと比較しても私にしては上出来だろう。
とりあえず燕山荘にチェックインする。
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小屋の中は本当に綺麗に磨かれていて、伝統もしっかり感じられて、昔から社長や従業員によってずっと大切にされてきたんだろうということが感じ取れた。感動して、下山後に思わず、燕山荘の歴史を紹介する番組を見てしまうほど笑
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いわゆるホスピタリティを、こんな標高3000m近い場所で感じるなんて。館内を歩きながらしきりに「すげぇ~」と独り言ちてしまった。
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トイレも本当に綺麗。スリッパを綺麗に並べるためのこういう工夫なんて、下界で見たことがない。スタッフ一人ひとりの細かい知恵の出し合いが、この山小屋を支えていると感じた。
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感染対策のために3畳を2人で使用。しかも間に仕切りをすることができる。
思いがけない快適環境だった。感染を気にしなくて良い世の中になったらこうはいかないだろう。
外へ出ても今は真っ白なため、とりあえず昼食を早めにとることにした。
食堂へ移動。
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注文したのは…
ココアとビーフシチュー!!!食べたいものを頼んだ!
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とても美味しかった。居心地が良すぎてずっとくつろいでいられる。
「●●岳に登るぞ!」なんて息巻いて来なくても、ふらっと登ってきて、ここでぼーっと飲み物片手に本を読む…そんな休日もとても良い気がしてきた。
さて、そうは言ってもとりあえず今日中に一度燕岳に登頂しておきたかった私は、食休みが落ち着いた後に再び外へ出た。少し雲が晴れてきた。
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先ほど登ってきた合戦尾根と景色がまるで違う。間違いなく、ここまで来なければ味わうことができないものだ。
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曇っているのも、それはそれで雰囲気が出て格好良い。
砂で滑らないように踏ん張ったり、空へと伸びているような階段をひたすら上がったり、岩と岩の間から登りやすそうな道を探したり。これまでの道のりとは全く違う登山をして、疲れてもいるけれどとても楽しい。
そして、岩をうまいこと登ってついに…
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山頂到着!!!!!
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やっと……やっと来たよ………つばくろ…。
「君にずっと会いたかったんだよ」と思いながら、
三角点に触れた。
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ここに来れるまで長かったなぁ…。
でも、君にすんなり登れなかったからこそ、出会えた登山の楽しみ方があった。君に登れない代わりに、出会えた山があった。
いろんな思い出をもってここに来られたことを、私は誇りに思うよ。
ありがとう。
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少しずつ下りながらも、燕岳での時間を満喫する私。
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たまたま会った方に撮ってもらった。お気に入り。
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皆さんこんな風に歩いてたんだよって。
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白い砂、花崗岩による白い岩、ハイマツの緑…
その先までずっと続く常念山脈。
麓から見ただけでは分からない美しさ。
松本平にお住まいの皆さん、
山の上はこんな風になっているんだよ。
だから山好きは、皆さんの街に来るんだよ。
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たくさんコマクサが咲き並んでいて可愛い。
燕山荘まで戻り、更にその先へも進む。
今回は縦走はしないけれど、稜線歩きは絶対にしたかったので山行計画にも組み込んでいた。
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いやー、この稜線のライン格好良いなぁ。
こんな星に生きてるんですよ、私達は。
こんな場所があるんですよ、長野県には。
そして、本日の最終目的地である大下りの頭まで来た。
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ここは、燕岳と大天井岳(おてんしょうだけ)の間にある、文字通り大きく下る坂の手前。燕岳、大天井岳だけでなく、晴れていれば槍ヶ岳や主稜線が見渡せる絶好ポイント。
私が燕岳に行きたいと強く思うようになったきっかけの動画で、動画投稿者がここに座ってポカリスエットを飲んだ後、撤退を決意した場所だ(暑すぎたよう)。撤退にも関わらずあまりにも眺望が良かったために、登山動画界隈では結構有名なスポットとなった。
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見晴らしが良く、時間的にもちょうど良かったので今日はここまでとした。
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燕山荘へ戻る。
見晴らし台からボーッと松本平を眺める。
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いつもは盆地から有明山の向こうに燕岳を見ていたけれど今日は逆。
有明山越しに見える松本平。やっと来れたと再び感慨深くなる。
思えば、夕方まで山の上までボーッとしていられることなど今までなかった。どんなに居続けたくても、日帰り登山なら基本的に夕方には下山を終えてなくてはならない。
ずっとまったりしていられることの幸せを噛み締めた。
振り向くと燕山荘と、その奥のテント場、さらには燕岳が見える。
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綺麗だなぁ。
テント泊、どうせいつか始めるんだろうなぁ笑
さて、夕飯!
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チェックインした際に夕食は何時にきてくださいと書かれたチケットを渡されていた。
腹ペコで食堂へ行くと…
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豪華!まじか!
山の上でこんなものが食べられるのか!
写真で山小屋のご飯を見たことがないわけではなかった。
でも自分が実際に標高の高い場所まで登り、その人里離れた環境を存分に体感した後でこのご飯を目の前にすると本当にびっくりする。
ハンバーグもお魚も両方食べれるし、ご飯も味噌汁もおかわりできる。疲れた身体に染み渡るったらない。
ちなみに、感染対策で夕食の間は会話は禁止。
しかし、燕山荘は物足りなさなど感じさせてはくれなかった。
社長がマイクを持って登場し、「皆さんが喋れない代わりに僕が喋ります」と、登山をする上での注意点の説明や、四季折々の写真を交えての燕岳の魅力の紹介など、とても楽しい時間だった。
山が好きな人の話を聞くと、私も心から幸せを感じる。
「山で生きる」「山とともに生きる」そういう生き方を体現する人に出会った時、私は心があたたかく波打つのを感じる。
山で人とすれ違った時、「こんにちは」「お気をつけて」と挨拶を交わす。最初はそれが正直恥ずかしかったが、今は進んで挨拶をするようになった。
”山を歩く人が登山を楽しめますように””無事に帰れますように”
そういう思いが自然に込み上げてくるからこそ、すれ違う人に対して言葉が自然に出てくるのだ。
この食堂にいる人たちも、この山が好きな人たち。
そう思ったら、とても幸せな空間だった。
食事を終えて再び外へ出る。
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日が沈む前後の時間は、先程までとはまた違った景色になる。今日は雲が多いので夕陽に染まる…とまでは行かなかったが、雲の隙間に覗くオレンジや紫もまた美しい。
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横に伸びる夕焼けの筋、その前に聳える燕岳。
「かっこいい…」と独り言が溢れるのも許してほしい。
麓からだと細かくギザギザしてるだけのようにも見える山の上では、こんなことが起きている。
そして本格的な夜が訪れる。
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暗闇の中での木造の燕山荘とその灯りは温かみを感じさせる。
そして、夕方に足をぶらぶらさせていた見晴らし台へ行くと松本平もすっかり夜景に。たまたま花火が打ち上がっていたが、標高2700mから見るととても小さく見えてびっくりした。
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冷え込んでいたが、生まれ育った場所を眺めていたくて、誰もいなくなったあともしばらくその場に残っていた。
そして20時半に消灯。
「明日が楽しみ」と思いながら眠りにつく。
大人になってから、そんな日は何回あっただろう。
翌朝。8月11日。
国民の祝日、山の日だ。
早めに起床。
実は今日、身体がすこぶる絶好調だったら、大天井岳まで行ってみようと計画していた。だからこその超早起き。実は大天井岳も、その360度の景観、山頂標の渋さ、名前の響きから、私にとっては憧れの山だった。
しかし、実際起きてみると、無茶ができるほど身体が軽いわけでもないし、ゆっくり自分のペースでこのあたりを見て回りたい気持ちが強かった。
そのため、大天井岳までは行かず、下山時間を逆算して引き返す時間を決めて、行けるところまで進むことにした。
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外へ出ると、朝日を待っている人たちがいた。
8月だがダウンを着ていないと寒い。
あたりは真っ白で、とても朝日が見えるようには思えなかった。正直ほぼ諦めていた。
しかし、濃い霧全体が青に変わり、そして霧の奥にピンク色の筋が見え始めると、なんとあんなに濃かった霧が一気に晴れ始めた。
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そして、しばらくすると一点から強い輝きが放たれ、見る見るうちに大きくなる。思わず歓声が漏れた。
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「朝日はきっと美しいだろうから見てみたい。」
そう思っていたのに、その場で体感したのは、美しさよりも、太陽のエネルギーのでかさだった。
すべてを晴らし、照らし、あたためる
莫大なエネルギー。それに包まれる私たち。
そして振り向くと、山肌にかかるほどの大きな虹。
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朝日と虹。「どっちを見れば良いの〜?」と笑いながらきょろきょろする人たち。私も、目の前で起きていることを受け止めきれず、泣いているのか笑っているのか自分でもよく分からないままにぐるぐる向きを変えていた。
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こんなことが地球では起きている。
それを知る山の日。
強烈な自然現象の余韻に浸りながら、ゆるゆると準備をする。
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一晩ありがとう。
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今度は友達と来たり、周りのお客さん達と自由に話したりして、この燕山荘での時間を楽しんでみたいなと思いながら撮影。
さて!今日も歩くぞ!!!
この山行で、私は雷鳥を見つけられなかったが、雷鳥っぽい岩には会えた。
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結構似てない???
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大下りの頭まで到着。時間的にはまだ進める。大下りというだけあって、なかなかの角度。油断すると滑りそう。雨の日にはあまり通りたくない。
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道を譲り、譲られながら、「よくここを下れるまで膝が回復したもんだ」と理学療法士さんに何十回目かの感謝をした。
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下ると、谷地形だからか、主稜線方面からの強い風がここに集まり、目の前にある雲の形が見る見るうちに変わる。
そして少し登ったところでそろそろタイムアップ。
もっと先に行きたいなと思った。
初の日帰りじゃない登山だったので慎重になってしまったが、二泊でも大丈夫だった気がする笑
大天井岳やその先に続く槍ヶ岳、常念岳。
それらへ続く道に踏み出したいぃ〜!!!と思った。
改めて思ったが、私は歩くという行為そのものが好きなのだ。そして、なるべく先へ行ってみたい、新しい場所を歩いてみたいという気持ちが強い。
息の上がりそうな目の前の登りを見て、自分が期待に胸膨らませているのを感じた。
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私が活き活きできることは
“これ”なんだと再確認する。
落ち着こう。また来よう。
今度は慎重さは保持しつつも、
自分の欲望にもっと忠実になろう。
引き返す前に一休み。
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この山行で、登山中のドライフルーツの美味しさに目覚めてしまった…。
行動再開。
一度引き返すと決めると、心にゆとりができ、アクションカムの撮影方法を変えてみたり、遊び心がわいてくる。
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そして、なんとこの山行終盤になって、ついに空が晴れてきた!!
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ようやく見れた青空の北アルプス!
そして主稜線!!!!
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「まじかぁ…まじかぁ…」と、ようやく見れた晴天のパノラマに惚れ惚れする。
この稜線、永遠に歩ける。
ここは散歩好きの極楽だよ。
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燕山荘前まで戻ってくる。
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看板と主稜線の共演もとても綺麗。
そして、どうせなら晴れ渡った燕岳にも登りたいよね!ということで再び山頂へ向かう。
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白い砂と青い空。
標高2700mなのにビーチのよう。
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綺麗。
美しい。
格好良い。
気持ち良い。
面白い。
わくわくする。
私は山を歩いている。
私は信州にいる。
生きている。
頂上からの景色を眺めながら、
これまでとこれからにも思いを馳せる。
山に会えて良かった。
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目の前の絶景に、スマホのカメラやアクションカムを使いまくる。
(バッテリーもSDカードも充分に持ってきました)
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そして燕山荘へ戻ってきて、「この際だから食べたかったものを全部食べよう!」と、まずはケーキセットを注文。
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雲海を眺めながらのケーキと紅茶。
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「こんなに幸せで良いのか??」と思う。
好きなものと好きなものはどんどん掛け合わせてしまえば良いんだね。
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そして、最後に食べたのはカツカレー!!!
カレーは飲み物!
カレーはお肉と野菜が入ったミックスジュース!
美味しいに決まってる。
載ってるチーズは燕(つばめ)の形👍
そして、食堂内の本棚には登山に関する本や漫画が並んでいた。
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何冊か目を通した後に、山岳救助の漫画『岳』を手に取る。山の良さと残酷さ、両方を知る人々の話。
それを読みながら、この2日間も思い返して、気づいたら泣いていた。
幸い、広い食堂のすみっこだったから、そんなに気づかれなかったはず。
自然の美しさ、力強さ、厳しさ、楽しさ
言葉を交わした人たちの笑顔、優しさ、強さ
それらを思うと涙が止まらなかった。
山での出会いに満たされた2日間は、
ずっとずっと幸せだった。
帰りのバスに間に合うため、いよいよ下山開始。
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晴れ渡った分、昨日は見えなかった景色が見え、花や木々の見え方も変わる。
(花の名前に詳しい方がいたら教えてください)
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真夏の大冒険。わくわくする。
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ジリジリと暑くなってくる。下から上がってくる人たちは汗だくだ。登りは大変かもしれない。でも今日なら、上に行けば美しい景色が待っていることを私は知っている。
だから、もう少し頑張れば最高の景色を見れるよ!という気持ちを込めて、「もう少し!」「お気をつけて!」「景色綺麗ですよ!」とすれ違う人たちに声をかけていた。
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さすがにきつくなってきた下山の後半。膝は無事だが足の裏が痛い…。筋力なのか歩き方の問題なのか分からないけれど、これは修行かインソールが必要な気がする。
計画より巻けてはいるので、休み休み下った。
そして最後の階段。
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ついに…
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登山口にタッチ!無事下山!
開いている場所を見つけて荷物を下ろした。
無事下山したことを親へ報告。
入念にストレッチをして、しばらくボーッとする。
思えば、山での過ごし方はシンプルだった。
動いて、食べて、寝る。
困ってる人を助ける。
逆に助けてもらったらありがとうを言う。
そんな過ごし方が自分にとてもしっくりきた。
「動きたい」「食べたい」「寝たい」
そしてあわよくば「笑わせたい」「力になりたい」
慌ただしい日々の中で見失いかけていた自分の気持ちに気づかせてくれた。きっと今後の人生で大事な指針となる。
行列の末、バスへ乗り込む。あんなに登山道ではスマホの電波が入っていたのに、山の車道に入ると一気に圏外になった。
なので聞くともなしに聞こえてくる周りの会話をBGMにまどろんでいた。
次第に寝入る人が増えてくる。登山歴が豊富そうな人たちも寝始める。みんな山を楽しんで、やりきっていたのだ。私のいつの間にか目を閉じていた。
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そして、穂高駅へ到着。外へ出るとすっかり慣れ親しんだ夏の信州の気候だった。
母の顔を見て安堵した。
迎えに来てくれてありがとう。
無事に帰ってこれたよ。
余韻に浸りながら、母と車で帰路につく。
陽の長い夏は、まだまだ暑く明るい。
「まさか自分の娘が、自ら進んで燕に行くとはね〜」と母は笑っていた。自分の変化に、私自身も驚いている。
燕岳で登山を終える気はない。
「今度は槍か常念かな」と笑って私は答えた。
西の方を見ると、先ほどまで歩いていた常念山脈が美しく聳えていた。
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信州に生まれると、アルプスの山々が近い。
本当に、山を好きになって、信州に生まれてよかったと思った。
帰宅後、父と母の学生時代の燕岳登山の時のアルバムを初めて見せてもらった。じっくりと学生時代の話を聞くことはあまりなかったからとても新鮮だった。
こんな時間を得られたのも、燕岳に登ったおかげ。
行ってよかった!
皆さんもぜひ、信州へ、山へ遊びにきてください。
お待ちしております。
読んでくださり、本当に、本当に、ありがとうございました。
【おまけ】
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【おまけ②】
↓私が山の魅力を知り始めた頃の話