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【詩】冬の一角獣

駅へ向かう 冬の朝の空気
白い息を吐いて 森の音を聴く
まだ眠っている 小学校の背中が
上下に揺れている
いつか忘れものした 小さく遠い星を想う
あなたのことを 思い出す

夢のなか 白い紙のうえ
ぼくは ほんとうのことを 口に出す
凍ってしまう 世界を凍らせてしまう
雪が溶けるなんて迷信
集積して 芯が残っている
ただ あなたの声が 聴きたい

額の中央 ねじれた角
澄んだ夜にしか現れない いっかくじゅう
ぼくしか知らない ひみつの屋上
銀河の奥行き 途方もなさを 心頼りにして
冬の大三角に手を伸ばす
いつか あなたに教えたい場所があるんだ

震える静寂 振動する宇宙
角度を変えて 弓を引けば
そのときかぎりの 倍音が鳴る
青い炎が ぼくの身を焦がす
何度でも 生まれ変わる
冬の獣は 夢が醒めても 生きている
いつかではなく どこかではなく
いま 話したいことがある






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