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【詩】デフォルト

なにかを失った瞬間よりも「あっ、この失った感じがデフォになるんですねー」とお皿洗ってるときにあとから気づく感じ。砂場あそびでつくった水路が決壊して、わたしの中のぽかんと空いたところに不意打ちの泥水が飛び込む。わたしの不可侵を簡単に超えてくる。それが身体にこたえる。そういうときは大体ポンコツで、初期ステータスに戻ってる。こころはビニール袋だ。水を入れたらぴゅーぴゅーと、思ってもいなかったところが裂けたり破けていることにはっとする。ふだん全然散歩とかしないのに、降りたこともない駅で降りてみようと思い立って、案の定、五分で飽きて「三駅はさすがに歩けんわ」と初乗り運賃を無駄にしている。思いつきと反省。衝動と後悔。あーなんでそんなこと人に言うかね、を繰り返す日々。でも、そんなもんだろう。街は消耗する。生活はつづく。部屋の一角だけ掃除して綺麗にして そこ以外は視界にいれないようにして、QOLと自分を保つよ。窓を開ける。静かに雨が降っている。森が見える。雨は嫌いだけど、ひんやり静かで湿った空気と木々の匂いは好き。通り雨で濡れた道を、車が通りすぎる音も好き。雨の日には押しつけがましいところがない。なんとなくこのまま、ここにいてもいいんだ、どこかに行かなくてもいいんだと感じる。現在地を確認する。肩の力を抜く。じわりじわり行くのだ。九月なのにまだ蝉が鳴いてる。雨が止んだら、森の中に入ってみようか。






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