村上春樹ーあたりを注意深く見回して
村上 春樹「職業としての小説家」より抜粋ー
僕が最初の小説『風の歌を聴け』を書こうとしたとき、「これはもう、何も書くことがないということを書くしかないんじゃないか」と痛感しました。というか、「何も書くことがない」ということを逆に武器にして、そういうところから小説を書き進めていくしかないだろうと。
(中略)
限られたマテリアルで物語を作らなくてはならなかったとしても、それでもまだそこには無限のーーあるいは無限に近いーー可能性が存在しているということです。「鍵盤が88しかな