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私の読了記録 vol.2〜 ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来

 私自身が読んでみて「よかった」と思える本を紹介するシリーズ。第二回は「ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来」です。

 この本を読んで自分なりに総括したことは、頭が柔らかいエストニアと保守的思考の日本との格差です。統合型の巨大なデータベースでは運用がしづらいといってバラバラのデータベースをつなぐ「エックスロード」という分散化技術を採用したり、子どもが生まれてから10分で「国民ID番号」という日本のマイナンバーのようなIDが発行され、ブロックチェーン技術によって秒単位でデータの改ざんを検知したり、個人情報が誰にどのように利用されているのかが国民の意志で確認することができるといいます。さらに、個人情報の不正利用者には厳罰が用意されていて国家が高度なセキュリティを担保してくれています。このような電子化の背景には単なる技術的な優位性だけでなく国民意識の違いが大きい気がしています。

自分の情報は自分でコントロールする「データ個人主義」

 まず、この本を読んで私が一番共感した名言があります。

(日本のマイナンバー制度は)国民にとってのマイナンバーではなく、国家にとっての「ユアナンバー」

 この言葉に集約されるように、エストニアと日本での大きな差はデジタル技術ではなく、利用者主体か提供者主体かの違いにあると思います。これは私個人が常に自身で問答している課題でもあり、多くの企業も同じ局面にあるのではないでしょうか。新しいビジネス、業務の改善、コロナ対策などなど、どれをとっても企業、管理者、行政などが最初にプランを組み立て、サービスや対策を提供することになります。そのため、「利益を出さなければ」「管理しやすい業務にしなければ」「国民から支持を得られる政策にしなければ」と提供者主体の思考でものごとを考えがちですが、一方で利用する側の顧客、従業員、国民がどうその施策と対峙しているのかというと、提供者側の想像通りとは限りません。

国家ごとバックアップするという考え方

 次に考えさせられたのが、古いコンピュータから新しいコンピュータにデータを入れ替えることと同じように国家のデータのバックアップを取っておいて、国が攻め込まれたとしても価値観やアイデアを守り抜くという思想がエストニアにはあると言います。

 日本は島国のため外国から攻め込まれて土地を追われるという意識が薄いですが、ソビエト連邦から独立したエストニアは、ロシアから侵攻を受けるリスクが続いていることで領土に縛られない生活を選択する必要があるとのことでした。これも逼迫した状況に対応せざるを得ない状況が柔軟な考えを生んでいるんだと思います。

日本でも活用できそうなイーレジデンシーという仮想住民モデル

 2014年からエストニアがスタートしたイーレジデンシーという政府が外国人に対して仮想居住権を与えるという制度についての言及もありました。このイーレジデンシーを取得することでエストニアで起業してビジネスを開始したり、グローバルフリーランサーとして日本に居ながらエストニアで働いたりすることができるそうです。

 この発想はエストニアも日本と同じく少子高齢化が進んでいるということで、多くの若者は夢を求めて海外に出ていくといいます。そのため、政府としては産業を育成するために、不足しているIT人材を世界から集める狙いがあるそうです。

 本の中でも日本の地方都市の課題と似ているという指摘もありましたが、確かに過疎化という地域課題を考えると、このイーレジデンシーという制度は日本の地方都市でも取り入れられそうな気がしています。特に地方特有の「よそ者は来て欲しくないが、人口と税収は増やしたい」という課題には非常にマッチするしくみかと思いますし、いま流行りの関係人口に近い発想でありながら、確実に住民として人口も税収も増えます。そういう意味では自治体関係者の皆さまには特に参考としておすすめしたい一冊です。

スタートアップを輩出するためのエコシステム

 本の後半では教育に関する内容が盛り込まれていました。これもかなり勉強となり刺激を受けました。エストニアでは子どもの頃からIT教育が盛んであり、日本のGIGAスクール構想と同じくすべての学校にパソコンとインターネットを揃える「タイガーリープ」というプログラムがあるそうです。ただし、日本のGIGAスクール構想は2019年に施策がつくられたのに対し、タイガーリープは1996年に発表されたとあります。その差20年以上。これだけ見ても日本は最先端の国から遅れを取っていることがわかります。

 子どもの頃からのIT教育だけではありません。よく日本でGAFAのような巨大テック企業がなぜ生まれないのか?という議論があるときに、シリコンバレーには起業するための環境が整っていて「どれだけ起業して失敗したか」が称賛される文化があるといいますが、エストニアにもチャレンジを奨励し、起業家精神(アントレプレナーシップ)を育む環境が備わっているそうです。

総括

 冒頭で頭が柔らかいエストニアと保守的思考の日本との格差を感じたと言いましたが、マイナンバーの浸透が遅いのも、ICT教育に遅れを取っているのも、すべては日本人としてのマインドが保守的思考にあるからではないかと思います。保守的思考自体が悪いと言っているのではなく、保守的思考の良い部分を正しく伸ばし、悪い部分は改善していくという姿勢が大事なんだと思いました。技術や知識はあってもマインドを変えていかない限り発展はなく、せっかく良い能力を備えていても行動力が伴わなければ宝の持ち腐れで終わってしまうような気がしてなりません。この本を読んでますます日本を元気にしたいと感じました。

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