舞台刀剣乱舞「禺伝 矛盾源氏物語」感想
舞台刀剣乱舞のチケットが当たり、2月7日に禺伝を観劇した。
手に汗握る展開だったので、帰りは汗が滝のようにダラダラ流れた。
源氏物語知らないのに面白かった、美しかった。推しの活躍に興奮した。OP曲大好き。
以下、やや腐ったネタバレ込みの雑多な感想文が続きます
雑感
最初はこれまでと違う宝塚OGキャストの新作発表を見て、正直なところ「男性キャストで新作見たい」と思っていました。発表から開演の半年くらいが受け入れる猶予みたいなところがありました。しかし実際に見た内容的には男性キャストでやるとある意味生臭くなりそうな描写が含まれていたので、試みの目的が伝わった気がします。
源氏物語は愛の物語で、長編で紡がれる光る君と女君たちのドロドロの感情を「人間て無駄なことばっかしてんな」という目で眺めている人間みの薄い刀剣男士。「男士」だけどヒトのオスとは一線を画す雰囲気は、宝塚OGキャストだから出せるのかもしれないと思いました。
失礼な深読みかもしれませんが、禺伝の企画はプロデューサーさんから「末満クン宝塚好きだよねーとうらぶとコラボさせてみない?」みたいな無茶ぶりをされて脚本を書いたんじゃないかと思っています。
内容に無理があるという言う意味では決してなく、そんな無理難題を面白い作品に完成させた脚本に拍手。
おおまかなあらすじ(覚え間違いあったらすみません)
刀剣男士たちは疑史発生で行方不明となった紫式部を探すべく平安時代に向かったが、どういうわけか源氏物語の中に入り込んでしまう。
そこで彼らは、敵に襲われている小少将の君を助ける。彼女は実在人物で紫式部の友達のはずだが、敵の特殊能力で弘徽殿の女御のプロットを挿入されている。
刀剣男士たちは行間で正気に戻ることができる小少将の君の協力のもと、敵の目的と元の世界に帰る方法を突き止める。
敵将の正体は紫式部の熱烈なファンだった。紫式部の作品を愛し、彼女に対して倒錯的な感情を抱いたファンの男が時間遡行軍に利用されたことがわかる。
紫式部もまた、自分の物語へ閉じ込められ藤壺の宮として生きていた。
帰る方法は、源氏物語の中にある空白箇所「雲隠」を刀剣男士たちなりのやり方で埋めてやること。それは同時に、フィクション作品を産んだ紫式部を罪の意識から解放してあげることにも繋がる。
激闘の果て、光源氏に成り代わった男は、雲隠れの章で愛した女達に見守られながら歌仙兼定に引導を渡される。
どうにか帰陣できた刀剣男士たちは、朝陽を眺めながらとある本丸の山姥切国広について言及し終幕。
*
感想としては、ストーリー内容は義伝の方が好きだけどテンポの良さは禺伝が格段に上だと思いました。回想ベースの義伝の調査内容よりも、禺伝の調査内容の方が複雑で敵を倒せば良いってもんじゃないのに話はサクサク進んで小気味良い。
それでいて物語の中に入り込む敵の有り様を見ていると、格調高き源氏物語を媒体にしながら「二次創作のし過ぎで自分の妄想設定と公式がごっちゃになった審神者」への痛烈な皮肉が込めらているような気がします。ラスボスはそのくらいイタい奴だなと思って見てました。ブーメランですな!ははは。
異世界転生ものへの嫌味というか、それを当時の苦い文化価値観を含めハイソにしたような毒気が含まれた作風に見えました。
禺伝衝撃ポイント
付与された異なる逸話
色々あったけども冒頭の「前の主は誰だったか忘れた」大倶利伽羅と「ガラシャ様の刀」だと逸話が付与されている歌仙兼定が伏線の一つで、回収されることでテーマにつながったのが面白かったです。
有識者の考察によると、徳川将軍家に居続けた刀も妻が譲り受けた刀も三日月宗近の逸話を表してる説が。こわ!
ifの歴史はとうらぶの醍醐味。
「俺には俺の、お前にはお前の物語がある」がカッコよかった。
成り代わり源氏のスタンド攻撃
物語の中に入って俺TUEEE!している光る君の特殊能力は、源氏物語のプロットをねじ込む遠隔のヘブンズ・ドアのようなフィクションのThe Bookにも似たスタンド。
刀剣男士にスタンド使いなんかいないから岸辺露伴先生と戦ってくれ。
攻撃を食らった歌仙さんと大倶利伽羅は自らを光源氏だと催眠かけられたまま物語に参加してしまう。
(厳密には洗脳じゃないけどもうめんどくさいから洗脳呼ばわりで)
歌仙さん殴られる
大胆だなと思った展開は洗脳状態に陥った歌仙さんを大倶利伽羅がぶん殴るシーン。
やべえぞ歌仙さん贔屓のファンは歌仙さんに失礼なことする奴にめちゃくちゃ厳しいぞ(失禁)
私は伽羅推し村出身なので仲間ぶんなぐって目を覚まさせる大倶利伽羅という素晴らしいシチュエーションが見れて嬉しかったです。
邪魔する奴は女児だろうと殺害
ぶん殴られた歌仙さんを庇ったのは源氏物語の若紫ちゃん。
幼く無垢な彼女は勇気を出して大倶利伽羅に立ち向かうも、大倶利伽羅は問答無用で斬り殺す。
好き‼️‼️
いざとなったら非情な決断出せる大倶利伽羅は甘ちゃんじゃないから尊い。ありがとう、ありがとう。こんな伽羅ちゃん見たかった。
突然の組体操
戦闘シーンでおもむろに遡行軍が運動会でやった扇のポーズして姫も混乱。それにしてもアンサンブルさんたちのアクロバットがすごい。パワー型の大太刀が少ないだけでじゅうぶん強い。オールフィメールってなんだったっけ。
大倶利伽羅と歌仙さん童貞卒業
光る君の物語を歩まなければならない。それすなわち多くの女性と愛憎を織り成さなければならない。
そんな彼らのことを思い出しながら生田斗真主演の「源氏物語千年の謎」を見ると気まずくなること請け合い。
人によりけりだけど伽羅ちゃんや歌仙さんの強火担とか同担拒否独占厨と推しの異性愛絶許腐だったら局部に焼鏝当てられたような苦しみかもしれない。
猪野広樹くんとわだっくまじゃなかった理由がよくわかる。
光る君から光る君を押し付けられた大倶利伽羅と歌仙兼定「ノマドのアジトを見つけて潜入したのに返り討ちにあった対魔忍」感が半端ない。
各キャラクター感想
歌仙兼定
女児と褐色に惚れるシャアアズナブル。
剃刀のごとく鋭い目をした精悍な男前
雅毛がないのは実験本丸で正史とはことなる逸話があるため。
大倶利伽羅とは信頼しあっており、二人のコンビネーションで敵を倒す一幕も
今回色々な意味で経験値が上がった
豊前江や松井江はお茶の間の幼女の心奪っていったのに、光源氏歌仙さんは幼女に心奪われ(以下略
大倶利伽羅
日光の位置にいる噛ませ犬。
ロリコンの敵。
俺の推し世界一カッコ良い。暗殺二回くらい失敗してるのにかっこいい。
「俺が六条御息所をやる」
「あなたに十二単は似合わないわ」
そんなの必殺遠近法でどうにかなるわ(と、心に住む浜路お嬢様が)
殺陣がメチャクチャかっこいい。役者様ありがとうございます(手を擦り合わせ)だって利き手じゃない方であの技術やろ?宝塚は武士の集まりなのか。
たぶん歴代大倶利伽羅の中で一番「死ね」って言ってる。光源氏に体乗っ取られても血の気多倶利伽羅。
刀ステはどこまでアニメ化するかわからないけど古川さんの声で例えると乗っ取られてる時の声の調子がきっとシャディク。
義伝見てるせいか前の主が伊達政宗だと思い出したシーンが一番熱かった。
\大倶利伽羅!/\いちいち言うな!/
一文字則宗
ベルサイユの菊。
のどぼとけ以外本物
シェイクスピアも嗜む理知的な貴族なのに、コケるときは吉本新喜劇
今回の歴史上人物お看取り係。
山鳥毛
俺の最推しは世界一足が長い。
「嗅ぎ慣れた匂い、血の匂いだ」マフィアだからね
基本的に出しゃばらないところが解釈一致
お頭が女性のことをご婦人と呼ぶとときめく小鳥がいることわかった脚本
斜め後ろからの立ち姿の格好良さと言ったらない。
姫鶴一文字
ふつくしい
ターンしながらの殺陣は優雅なのに雄叫びは姫鶴の兄貴だった。
一番つかみにくいキャラ造形なのにあの斜に構えて気だるげな姫らしさをよく表現してくださった。
歌仙さんのことは母ちゃん歌ァちゃんと呼ぶ。
南泉一文字
良心。ツッコミのリターンエース。
夜這いかけてる光源氏のとんでも理論の一字一句にツッコミを入れるシーンが秀逸。明るく元気で可愛いのにあざとさに頼らない理想の南泉一文字。 戦闘中のやんのかステップと床ふみふみかわいい。
刀ミュ江水散花雪のにゃんくんが無邪気でやや頭御花畑思考だったぶん、禺伝の南泉君は頭の回転が速い頼もしい舎弟として好対照に活躍。
光源氏
だいたいこいつのせい。
「刀の木偶人形どもめ」とかお前はアミバ様か。
いろんな方々の禺伝感想で光源氏だけ男性キャストにすればよかったのではという意見を見たけど、あれを演じる男性キャストが加藤和樹とか八神蓮とか斎藤工だったら舞台なのにR18になってしまう。
光源氏だけど光源氏になりきっているストーカー(名もなき者)、過去回想を見れば本当は悲しいほどの切実さが時間遡行軍のエサになってしまった可哀そうな人。
最終形態が格好いいのに、最後の最後で伊藤誠状態に。
まとめ
これまでと比べ禺伝のよかった部分が意図して書いたギャグシーンが面白かったこと。実のところ虚伝義伝悲伝に出てくるおはぎの宴やラーメン屋台や歌いながらのマグロ解体とかしょうもなくて「はよ先に進め」て思ってた人も多いだろうし、綺伝から減ってよかった。そこを楽しみに見てる人には悪いけれど。
これを言っちゃあおしまいなんだけど、刀ステシリーズはどうも三日月宗近と山姥切国広の千日戦争でくたびれちゃうところがあるのでそこに頼らない方が面白いのかなと個人的には思います。なんかダメ出しみたいな表現になっちゃった。
以上、宝塚の知識もなく日本史も源氏物語もからっきしの審神者がキャラ萌えだけで刀ステ見た禺伝感想でした。