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映画版ルックバックを観て、この人は天才だなと感じた藤本タツキ先生に送る言葉
「キャラクターに命が吹き込まれる」みたいな表現がありますが、本当にその通り、藤野と京本が生きている世界をカメラで見ている感覚でした。それくらい作画や声優さんの芝居が自然で、素晴らしいものでした。
自分の作品に対してここまで真摯に作ってもらえる事が人生でもうないのではないかと思い泣いてしまいました。
1つ1つ拾って褒める事ができないくらい、58分の中に多くの驚きと発見があります。 たくさんの方が関わり本当に素晴らしい作品になったので、全員に感謝したいです。 ありがとうございました!」
映画ルックバック。公開記念の新PVがでたので転記。
何度見ても素晴らしい。
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いうまでもなく渾身の出来。日本の映画史のみならず、各国の言語に翻訳されて世界で上映されたら忽(たちま)ち 社会現象になるだろう。というか日本でもまだ社会現象にさえなっていないのが最近の不思議。直感に反してる。なんでやねん。
というわけで今回のnoteでは大きく分けて2つ論じたい。
①本作:ルックバックをなるべく深掘りして、少しでもこの作品に興味を持ち、劇場に足を運んで貰えるよう、本作の興行収入ランキング上位に押し上げる機能、そのための訴求効果を期待した文章を綴る
②藤本タツキがどこまで恐ろしく、底がないのか、そして人物に対するリスペクト、宗教を興してしまえるのではないかというそのカリスマ性について論じる
という二本立てでいきたい。
とここまで息巻いてきたが、サラリーマンの休憩時間から書き上げているので、本日中に書き終わるかどうかが不安である。(すでにもう3日以上かかっている。じかんかかりすぎ)
また、この文章を楽しんで頂く上で、一つだけ約束してほしい。
たとえ、この先の文章が崩壊していても、赦してほしい。
本作がいかに素晴らしいかを感情に突き動かされるように書き上げてみた。
「一個人の見解、顔の見えないインターネットの亡霊が発した戯言」
という視点を頭の片隅に置いておいて、せめて、ゆっくりと読んでほしい。
サクサク読み飛ばすような軽い記事にもしたくない。
ゆっくりかつ、冗長にならず、食傷気味にならないよう文体に気をつけて書いていきたいので、そこはご理解いただけると幸いである。(夏バテに拍車をかけないよう注意していきたい)
また、最初に断っておくが、本作の
「一本筋の通った美しく完璧な考察」は、
他のメディアや解説系YouTuberとそれを生業(なりわい)にしている人たちに譲る、という最初から白旗を上げてた状況で進めていくのでご容赦いただけると幸いである。(かなりよみやすく、わかりやすくを意識してます)
それでは。
①本作:ルックバックをなるべく深掘りして、少しでもこの作品に興味を持ち、劇場に足を運んで貰えるよう、本作の興行収入ランキング上位に押し上げる機能、そのための訴求効果を期待した文章を綴ること
まずはあらすじから
学年新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野。
クラスメートから絶賛され、自分の画力に絶対の自信を持つ藤野だったが、ある日の学年新聞に初めて掲載された不登校の同級生・京本の4コマ漫画を目にし、その画力の高さに驚愕する。
以来、脇目も振らず、ひたすら漫画を描き続けた藤野だったが、一向に縮まらない京本との画力差に打ちひしがれ、漫画を描くことを諦めてしまう。
しかし、小学校卒業の日、教師に頼まれて京本に卒業証書を届けに行った藤野は、そこで初めて対面した京本から「ずっとファンだった」と告げられる。
漫画を描くことを諦めるきっかけとなった京本と、今度は一緒に漫画を描き始めた藤野。
二人の少女をつないだのは、漫画へのひたむきな思いだった。
しかしある日、すべてを打ち砕く事件が起きる…。
<主な登場人物>
大きく2人しか出てこない。
他はモブキャラといってもいい。この2人の物語なのである。やっぱりダブルヒロインっていいよな
○藤野→主人公。女の子。人気者。漫画が好き。京本の才能を嫉妬。運動神経抜群。
○京本→主人公。女の子。不登校。漫画が好き。藤野の才能を尊敬。運動神経皆無。
<ものがたりの訴求ポイント>
各項目毎にわけて書いていこうと思う。
○ある少女の、挫折
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![](https://assets.st-note.com/img/1722172359360-rCbChsRMWk.jpg?width=1200)
京本は本当にうまかった。才能や努力というのは、希望だけではなく、同時に人に絶望も与えてしまうのだ。
○目に見えるものが全てじゃない
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死ぬほど描いてたんだな。っていうのがわかるこの廊下のシーンが好きだ。
このページに吹き出しも何もない。
この時の藤野の感情に様々な考察を与えてくれるのも、文字がないからである。
だから好きなんだよ。藤本タツキが。
○可能性は自分が予想していないところから生まれる
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卒業証書を渡すために京本に会う。自分はもう漫画を描くことをやめていた。
出会った京本は藤野を「先生」と読んでいた。
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ここから田んぼダンスに繋がる。(みるたびに泣いてしまうのでここには載せられない、というかあの場面は映画でも死ぬほどよかったのでマジで劇場にて楽しんでください)
○好きなことは隠せない
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![](https://assets.st-note.com/img/1722272090082-UhtmUEQjLc.jpg?width=1200)
京本から認められた藤野。
「自分が嫉妬していた相手が、作品を評価してくれていて、しかも待ってくれていた」
これ以上に創作のパワーがもらえることってありますか?もう泣けてくる。
アイアンマンで好きなセリフがあって、ここで引用させてください。
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藤野がやるべきことは漫画を描くことだったんだよ。
○論理(ロジック)より感情(エモーション)
藤野はなんでもできた。何にでもなれた。
でもその中でも、やっぱり「こうやればうまくいく」と誰かに言われたことを断って、漫画を描き続けた。感情の赴くままに。
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京本に「私についてくれば全部うまくいくんだよ?」という発言がある。それは自分がいままで周りの人に言われてきたことであり、それを伝えても京本の意思は変わらない。
「もっと絵が上手くなりたい」
そんな一文が全ての原動力になってしまう、その感情に突き動かされるのがこのルックバックの面白さである。
だから涙が出る。だから感動する。
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○コマ割りの凄さ
![](https://assets.st-note.com/img/1722172230610-uEyVmfAvR7.jpg?width=1200)
人物変わらないのに、背景の本の量であったり、アイテムであったりっていうところで時間の経過を表すというテクニック。なんかこの表現が全く新しく感じた。
○頑張る少女に心打たれる
思い立ったが吉日!の正確の藤野は京本の絵を見た瞬間日の放課後、
すぐに本屋さんにいって資料を買って漫画を書く。
書いて、描いて、描きまくる。
その真摯さ。悔しさをバネにして頑張るその「背中」に心打たれた。
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○背景詳細部分の緻密性に見る考察
本作は背景がやけに上手い。というかキャラが相変わらずの動きのある感じなので、
「藤野がキャラ、背景は京本が描いている」設定にしてるんじゃないのではないか。
→藤野と京本、合わせて藤本。
こういう名前の遊びゴゴロがいいよね。(なんかここの項だけやけに薄いな)
○主題歌大成功
haruka nakamuraを起用。もうこの時点で間違いないよね。
haruka nakamuraを知らない方はこちらから。
ノースフェイス スフィア(ビル一棟のパープルレーベルとか置いてあるお店)原宿店のためにサウンドトラック作るオシャレさ。ノースのこういうアプローチも素敵だなあ。
マジで良い。
この文章書いてる時に感極まりそうになってるけど、「今流行りの音楽」とかを使わなかったの関わった全ての方々が、作品へのリスペクトの表れだと思う。泣いちゃう。
②藤本タツキがどこまで恐ろしく、底がないのか、そして人物に対するリスペクト、宗教を興してしまえるのではないかというそのカリスマ性について論じる
○藤本タツキの幼少時代の凄さ
中学生の頃から脳内で雑誌を作り、面白くない作品は打ち切り定期的に入れ替えつつ、自ら考案した漫画を約7本同時に連載していた。連載が最終回を迎えたときは、感動で涙がこみあげたが、授業中なのでこらえたという[8]。新人漫画家時代にも依然として約5本の作品を脳内で連載しており、中には単行本15巻ほどの分量で完結した作品もあった[15]。 自分の作品は世間受けしないかもしれないと認識しつつ、そういった開き直ったスタンスが逆に一部で受けているのかもしれないとインタビューにおいて答えている。また、ひと通り王道な漫画は読んできた上で王道な漫画に飽きてきたような人が読んでくれている気がすると、2018年においても自らの作品を分析している[6]。
なんかルックバックそのままだよね。この人。
自分のことを書いているのではないかと思うぐらいリアリティのある話である。
○タツキ先生ありがとう
マジでこの作品を世に送り出してくれたタツキ先生に心から拍手を贈りたい。
現時点の存在する漫画家で、個人中には一番かもしれない。しかも1個しか歳変わらない。バグか?
※タツキ先生2024年7月時点で31歳です。バケモン。
呂布カルマのこの言葉が好きだ。
漫画家の奥さんに読んでほしすぎて起こして訴求するっていう。
「俺ここ本当数ヶ月、下手したら一年くらいの間に、色々見た漫画とか映画とか、ドラマとか、あとライブもそうだね、そういう表現の中で一番くらったかもなあ、ルックバック」
語彙がいいよな。
これが漫画での状態で今回は映像化されたので、
ぜひまた呂布カルマに語ってほしい。コメントが楽しみである。
○ルックバックがどこまで影響を与えたのか
相変わらず引用の嵐。
物語には作り手がいる。
その中で今回クリエイターに焦点を当てた作品として、ルックバックは物書きに始まって各作り手に共感と衝撃を与えたことだろう。作るのって時間かかるしね。(この記事もこう見えてすでに3時間以上はかかっている)
〇オピニオン紹介
著名人からの寄稿コメントでも引用。すごいよ本当に。
(YouTubeのショート動画から引用しました)
<奈良美智>美術家
「マンガ読んで涙出るくらい、感動したのに
アニメで声が個性を持ってリアルに響いた瞬間、
もう心が動いて 最後にはやっぱり 感動している自分がいました」
<山崎貴>映画監督
『何かを作り出そうとする人間なら、
きっと味わうであろう 様々な感情の竜巻も
どんなに「もしも」を考えても
取り返せない最悪な理不尽も
ちゃんとそこに息づいて、
何ならさらにパワーを得て 詰め込まれていました。
ちゃんとまごう事なき「ルックバック」でした。』
<小島秀夫>ゲームクリエイター
「震 え た !」
「この柔らかさ、この優しさ、この力強さ!
実写すらも超えた豊かな表現と感性 エンタメの今と未来に、震えた!
アニメっていいな。
早速、原作漫画をポチって、藤本タツキを ”look back”。」
<岩井澤健治>アニメーション監督
「純粋にただただ描くこと、その喜びや苦しみ不器用さも含めた
全ての感情が画面いっぱいに溢れていて、
いつの間にか忘れていた あの頃の感覚を思い出させてくれる
とても素晴らしい映画でした。」
<鈴木敏夫>スタジオジブリ
「作品は誰のために描くのか? 答えは映画の中にある。」
鈴木敏夫さんのコメントが最高。
○まとめ
ここまで滔々(とうとう)と書いてきたわけだけど、肝心のラストについての結末はわざと書いてません。
こればっかりは、どうしても映画もしくは原作で見てほしい。
ネタバレというよりは、物語を楽しみながら先の展開を予測していくことが大切ですからね。あくまで、あらすじでよいのです。
また、ルックバックについて「原作から見たほうがいいのか、映画から見たほうがいいのか」に関しての回答としては、
「見る順番に違いはない」と思う。好きなほうから見ればいい。
そしてその後、もう片方を見ればいい。
強いて言うなら「映画館で観れる間に映画を見ること」が重要かなと思う。
十中八九各種サブスクリプションサービスで配信されると思うが、こればっかりはダイナミックな映像作品を大スクリーンで、haruka nakamuraの音楽とともに、楽しむことを勧めたい。ホントに良かった。もう一回見に行きたい。というか行きます。普段人間として生活するうえで、堰き止めていた感情のダムが決壊する。
「58分に凝縮された 今年を象徴する 最高の作品」
この作品においては、自信をもってオススメできる。
書を捨てよ、街に出よう。
2024年7月30日