公共不動産の物件カテゴリーに着目してみたら|Additional#00
公共R不動産の新企画『公共R不動産研究所』で連載をはじめました。学校、公園、土地、文化・スポーツ施設、等々。多岐にわたるカテゴリーのある公共不動産の、それぞれの抱える課題を取り上げていく連載です。
公共不動産活用の情報プラットフォーム「公共不動産データベース」に携わる担当者の目線から、日頃感じていることをエッセイ的に綴ります。それが「『公共不動産データベース』担当の頭の中」です。
ここでは書き終えてから少し時間が経過した時点で、連載記事を振り返りつつ頭の整理をすることで、さらにまた連載へフィードバックしていこう。そんなことを目的として書き残しておこうと思っています。
#01 ポピュラーなカテゴリー「学校/廃校」の話
連載の初回は、「使われなくなった公共不動産」と聞いてイメージが浮かぶ、もっともポピュラーなものと言ってもいい「廃校」からはじめてみました。
乱暴な計算ではありますが、平均すると「1日に1校」のペースで日本国内に廃校が生まれているという数字は、なかなかインパクトがありました。
それと共に、廃校活用のものめずらしさがなくなってきた分、単なる物件と活用事業者のマッチングにとどまるものと、より高度に活用されるものとの温度差も、見えやすくなってきた気がします。
#01 研究員のアディショナルノート
公共R不動産研究所の主任研究員が集まって、記事を題材に話し合い、さらに論点や可能性について深掘りする。それが「研究員のアディショナルノート」です。この「廃校/学校」の記事でもこの方法を試みてみました。
教室が全国大体同じフォーマットでつくられていることに着目した研究員たち。その妄想はどんどん膨らんで行きました。「トライアルサウンディング・廃校セット」とか「トライアル廃校キャンペーン」とか、本当にやったらインパクトがありそうなものも。
そして、公共R不動産のメンバーでもある守屋さん(Micro development inc.兼務)の「街の中にモビリティをおいて小さな実証実験をしてみることで、そこでの人の動きなどをデータ化して、その後のまちづくりにフィードバックしていく」というアイデア。こちらは、公共R不動産/Make A/Micro development inc.の3社合同プロジェクトとして、キックオフしました。
#02 もっと不動産活用の実験をしよう!!「土地」
第2回は、使われなくなった公共不動産の中でもかなり悩ましい存在の「土地」を取り上げました。
あれこれ巡らしてみた結果、現時点で辿り着いたのは「もっと不動産活用の実験をしよう!」ということでした。
ちょうど「トライアルサウンディング」の寄稿文を書いていた時期と重なっていたこともあったと思います。また、国土交通省のランドバンクのモデル事業にエントリーしていた時、他のエントリー団体の取り組みを聞いていたことも背景にはありました。
記事を書くにあたって助言をしてくれたM氏、ありがとう!
#02 研究員のアディショナルノート
さて「土地」についても主任研究員で話し合ってみました。
「土地」という悩ましいカテゴリーを考えることで、むしろ議論は公共不動産全般に共通する本質的なところに向かった気もしています。やはり奇手はなくて「当たり前のことをちゃんとやる」という原点に戻った、というだけのことかもしれません。
公共不動産を単純に財産管理的にしか取り扱っていないと、なぜ公共R不動産が「ビジョンが大事!」「活用しよう!」とうるさいのかは伝わりにくいかもしれません。でも真摯に向かい合うほど、そうとしか思えないんですよね...
そして「公共不動産データベース」の今後の方向性を考える論点も出てきました。単に「土地の買い手を探す、借り手を探す」というより、こうした「都市政策とセットになった公共不動産活用プロジェクトを一緒にやる民間事業者公募」として考えるとよいと思っています。
#03 社会の多様性を現す最先端 社会教育施設編
第3回は「社会教育施設」。図書館、博物館、体育館、公民館……をひとくくりにして取り上げました。
恥ずかしながら、社会教育施設が住民自治を育むような学び合いに取り組む場であると知りませんでしたが、それを社会教育の視点からではなく公共不動産の視点から眺めてみた感じです。
記事を書くにあたって助言をしてくれたW氏、ありがとう!
現時点で辿り着いたのは「社会教育施設は、社会ニーズの多様性が現れ続け、今後もクリエイティブな施設が生まれ続ける最先端にある!」ということでした。
市民の民度がかなり反映される施設という見方もできるかも知れません。今後、行政・市民・企業の役割ももっとグラデーションの中で多様になると思います。ニーズの変化に応じて、仕組み側も色々変わる必要がありますね。
#03 研究員のアディショナルノート
「社会教育」「社会教育施設」という言葉になじみのないまま集められた研究員もかわいそうですが、もちろん今回も「アディショナルノート」やりました(笑)
図書館、博物館、体育館、公民館...と施設の系統は多様なのに、大きく括れば学校教育と家庭教育以外の教育を包含する社会教育施設。でもなんでそういう括りをするんだろう… いやこれは順序が逆なんだろうとは思いますが、正直なじみのない用語だけに議論のしにくさはありました。
せっかく社会教育施設というカテゴリーがあるなら、社会教育施設という括りだからこそできる価値を生み出せないかな。もっと社会教育施設って混ざってもいいよね。施設の複合化というレベルでは混ざったとは言えないな、組織も法制度も横断するくらいの「あり方の再編」ができないかな。
やっとそんな妄想の入り口まで辿り着いたところで、残念ながら今回は時間切れとなりました。
妄想は妄想としても、社会教育施設の多様なあり方を生むのは市民のチカラであるという原点を認識できたのは大きなことでした。しかし聞けば「使いにくい」ルールがさまざまあるようで。ルールが社会教育施設の目的を阻害しては本末転倒では?となると、レベルはともかく「あり方の再編」は必要ではないかと、事後あらためて思うところでした。
今後の予定
はじめはさらっと気楽に書き続けることを想定していましたが、いざ書き始めると「むしろここで頭の中の棚卸をしておいた方がいいんじゃないか?」と思いはじめ、書き進めるたびに長文になってきています。
少し負荷はかかりますが、まだ取り上げたい論点はあるのでもうしばらく続けていきたいと思います。
いま手元にはこんな断片があります。
・あえて「駐車場」に着目してみる – まちを諦めない駐車場
・民間セクターが実現する公共空間 − 「パブリック≠行政」
・市民やまちに開いた「行政施設」に生まれる風景は?
ゆっくり育てる気持ちで関わって頂けるとうれしいです。